静聴雨読

歴史文化を読み解く

炎天下の古書市・2

2012-09-02 07:35:16 | BIBLOSの本棚

 

(2)成績は?

8月31日にフェアが終了しました。毎日の店舗別売上集計に一喜一憂する日々でしたが、思わぬ結果が出ました。

「BIBLOSの本棚」は、前半は参加7店舗中の3位につけていました。後半は、何店舗かが前半と入れ替わりましたが、「BIBLOSの本棚」がトップになりました。そして、総合成績でも、競り合う他の2店を抑えて、トップで終わることができました。競馬に例えれば、最後の直線半ばで、先行する2頭を1完歩ずつ追い詰め、最後にハナ差か鼻毛差で差し切ったようなものです。まるで、ディープインパクトの末脚のようでした。

総合トップの原動力は、平均単価にありました。ミステリーを多く並べる他の2点は、売れる点数は多いが、平均単価は低くなります。400円-500円です。一方、「BIBLOSの本棚」は「セット物」が多いので、売れる点数が少なくても、売上は稼げます。平均単価は640円でした。

前半は趣味系・文学系を展示し、後半は学術系を展示する戦略は、まずまず功を奏したようです。関係者から「そんなに、ガラっと入れ替えて大丈夫か」という心配もいただきましたが、展示のメリハリを訴求できたようです。

以下、昨年夏のフェアとの比較をしてみましょう。

出品数:ダンボール8箱(昨年夏は13箱)

売れ筋:中公文庫が振るわず、新潮文庫が絶好調でした。

フェアの会期:16日(昨年夏は33日)

販売成績:今回の売上額は昨年夏に比べ70%でした。会期が昨年夏比で50%でしたので、まずまずの成績でしょう。

「本の聖地」で、この上もなく貴重な経験をさせていただきました。 

さて、来年は? (2012/9)


炎天下の古書市・1

2012-08-26 07:54:32 | BIBLOSの本棚

 

(1)恒例の絶版文庫フェア

 

三省堂書店神保町本店で、夏恒例の「絶版文庫フェア」が今年も開催されました。今年は、8月16日-31日の16日間で、昨年の約半分の期間です。場所は、昨年の1階壁の本棚に代わり、今年は玄関表のワゴン販売になりました。出品古書店がワゴン1台ずつを受け持ちます。

今年は、三省堂書店からの要望により、前半(8月16日-23日)と後半(8月24日-31日)で、展示品を入れ替えることになりました。それで、前半は趣味系・文学系を展示し、後半は学術系を展示することにしました。この試みがうまくはまるかどうかが第一の試金石でした。

次に、経験のないワゴン展示で、いかに商品をアピ-ルするかが難問です。ワゴンは、幅150cm   x 奥行き75cm です。これでは、文庫本が4列しか並べられません。「スーパー源氏」に頼んで、3段の木の棚を用意してもらいました。これで、3段の棚と3列の平台を確保しました。棚にどんな本を並べると良いか、とか、平台にどんな本を並べたら見場が良いか、などは、経験がないのでわからず、「出たとこ勝負」でした。  (2012/8)


「美本」の誘惑

2012-07-15 07:19:54 | BIBLOSの本棚

(1)本の状態が気になる

インターネット上で古本を購入するにあたって気をつけなければならないのは、古本の実物をチェックできないまま取引をすすめなければならない点です。

リアルな世界では、古本を探すために、古書店に出向いて、求めたい本の実物をためつすがめつチェックして、買う・買わないの決断を下すことができます。ところが、インターネット上の取引では、売り手の商品説明だけが頼りで、売り手の中にはいい加減な商品説明でお茶を濁している場合が少なくありません。

特に、売り手と買い手との間で行き違いになりがちなのが「本の状態」です。

最近、あるお客様から次のような質問を受けました:
1.帯付きですか?
2.何刷ですか?
3.天地小口に、シミ、汚れ、研磨はありませんか?
4.ページの開き癖・読み癖はありませんか?

「本の状態」を気にする買い手の不安がよく表われています。
この種の質問にはできるだけ丁寧に回答するようにしています。

このうち、「帯付き?」と「何刷?」と「シミ、汚れは?」には、普通に状態を回答すれば十分でしょう。

残る「研磨は?」「ページの開き癖・読み癖は?」はややマニアックな質問なので、回答には気を使います。

「研磨」とは、本の天地や小口の汚れを取り除くためにやすりをかけることをいいます。ブックオフの店内などでその光景をご覧になったことがあるかもしれません。
しかし、「研磨」をかけた本かどうかの判別は容易ではありません。また、古本ですから、「研磨」をかけた本の価値が減少するという考え方があるとすれば、その考え方も理解できません。「天地小口に汚れはありませんか?」という質問は理解できますが。

「ページの開き癖・読み癖」については、その程度が著しければ目立ちますが、普通はわからないのがほとんどです。しかし、古本ですから、「誰かが読んだであろう本」という前提で検討する必要があります。この質問者はわずかな読み跡も気にする性格かもしれません。

そのようなわけで、 マニアックな質問にはつい構えてしまいます。  

(2)「美本」の探求

古本の状態についてマニアックな関心を寄せる人たちがいますが、その究極のかたちが「美本」の探求となって現われます。 前回の質問者の質問がさらにエスカレートすると、「この古本は『美本』ですか?」となります。

さて、「美本」とは何か? この定義が人さまざまで、すれ違いを起こします。

函に、ヤケ、スレ、痛み、こわれ、シミ、などがないこと。
天地と小口にヤケ、シミ、水ぬれなどがないこと。
本体に書き込みがないこと。
本体にページの開き癖・読み癖がないこと。
読んだ形跡がまったくないこと。
帯が(もしあったのであれば)ついていて、破れ、ヤケ、シミ、などがないこと。
(全集などの場合)月報が(もしあったのであれば)ついていて、破れ、ヤケ、シミ、などがないこと。

ざっと挙げると、以上のような条件が考えられます。
もし、このような条件をクリアする古本があれば、それは「美本」と認定していいでしょう。
しかし、このような条件をすべてクリアする古本は滅多に現われるものではありません。なぜなら、古本とは、何年かの年を経た本ですから。5年か10年、あるいは40年の経年変化を被った古本が多少なりとも「経年」の雰囲気をたたえているのはしょうがないことです。

それで、古本の状態を表わすのに「経年並」ということばが使われます。5年なら5年、40年なら40年に見合う経年の跡が見られる状態をいいます。
これに対して、経年の割に状態の良い古本の場合、私はそれを「良好」と表現しています。決して「美本」とは表現しないように自己規制しています。それは、人により「美本」の定義に開きがあって、時に人に誤解させることがあるからです。 

人により「美本」の定義に開きがあり、それが買い手と売り手の「すれ違いの悲劇」を生み出します。

例えば、上記の「美本の条件」をすべて満たしたものを「美本」という人がいて、その人がインターネット上で「美本」を購入しようとした場合、成功するでしょうか? 失敗します。現物を確認しないで購入するからです。 

(3)「稀購書」の世界

では、「美本」の古本を求めること自体が、かぐや姫ばりの無理難題なのでしょうか? 必ずしもそうではありません。

古書の世界では、古本 used books のほかに、稀購書 rare books と呼ばれるジャンルがあります。文字通り、市場にあまり出現しないので、なかなか買う機会のない古本のことを指します。「美本」といわれる古本は、この「稀購書」の市場で取引されています。そこで探せばいいわけです。

ただし、「美本」を求めるには、条件があります。「美本」の収集は、いわば「旦那の道楽」ですから、お金がかかるのです。「美本」を安く求めようなどと考えてはいけません。

例えば、「古本」の市場で買えば1000円のものが、「稀購書」の市場で買えば10000円払う必要がある、といえばわかりやすいでしょうか? それほど「美本」の数は少ないのです。それでも、「美本」を追求するのであれば、出費を厭わない「覚悟」が必要です。インターネット上の取引に参加している購入者が、そのような覚悟を備えているかどうか疑問に思います。安易に「美本ですか?」と聞きすぎるようにも思います。

「美本」の誘惑は果てしがありません。その泥沼に果敢に踏み込むか、撤退するか、購入者は判断を迫られています。

私自身は、「美本」の争いには参加したくありません。「経年の割に状態の良い古本」(良好)を提供したいという思いは強くあり、そのような良好な状態の古本を入手したお客様の意外な満足感が伝わってきた時の秘かな喜びは何物にも代えがたいものがありますが。  (2007/9)


「本の聖地」での定着を目指して・3

2011-12-13 07:10:14 | BIBLOSの本棚

 

(9)3ヶ月経過して

 

三省堂古書館に古本を並べさせていただいて3ヶ月経ちました。月ごとの売上は予想以上に好調です。「三省堂」というブランドの強さを改めて認識しました。

 

私には順調に見えた売上ですが、三省堂古書館から見ると必ずしもそうでないようです。

 

11月から、三省堂古書館は各古書店に対して棚数に見合った「最低売上目標」(いわゆる「ノルマ」)を設定するという通知を出しました。それを見ると、「BIBLOSの本棚」の売上は「最低売上目標」ギリギリであることがわかりました。「BIBLOSの本棚」の売上はほかの古書店のそれに比べて、格別劣っているように思われません。上から3割くらいの位置にはいるはずです。それで、「最低売上目標」ギリギリですから、ほかの7割の古書店は「最低売上目標」をクリアするために更なる努力が必要なようです。ここから、三省堂古書館の経営の難しさが窺えます。

 

「最低売上目標」の設定は当然の処置だと思います。今まで設定していなかったのがむしろ「甘かった」といえます。

 

しかし、「最低売上目標」の設定に見合う古書店へのサービスが提供されているかどうかについては疑問があります。

 

ある日、三省堂古書館を訪れ、「BIBLOSの本棚」の棚を見ると、棚に空きがあるのです。店員に事情を聞くと、「『神保町古本まつり』がありまして、その関係で、多く売れてしまったのでしょう。」と涼しい顔をしています。ストック(予備)を調べてもらったところ、まったくないようです。

 

多く売れたことは喜ばしいことですが、それで棚に空きが出ても、古書店に連絡もしない、というのは考えられないことです。これでは、三省堂古書館に販売を委託しているメリットの何割かは飛んでしまいます。すべて、人手不足が原因だそうで、これでは、先が思い遣られます。  (2011/12

 

 


「本の聖地」での定着を目指して・2

2011-12-09 07:41:02 | BIBLOSの本棚

 

(5)見習い卒業

 

ちくま文庫(ちくま学芸文庫を含む)・講談社文庫(講談社学術文庫・講談社文芸文庫を含む)・新潮文庫から始まった三省堂古書館への出品は、朝日文庫・河出文庫・教養文庫・平凡社ライブラリーへと拡がりました。そして、成績もまずまずでした。最大の問題だった「持続的な売上」もクリアしました。

 

こうして実績を重ねた結果、めでたく「見習い」を卒業し、いよいよ、次のステップ、そう、「BIBLOSの本棚」の看板のついた棚を三省堂古書館に設けていただく段階に到達しました。与えられる棚は幅90cm の棚1列で、6段構成です。この棚に何を並べるか、を考えねばなりません。

 

(6)「かたまり」について

 

その前に、「かたまり」についてお話しします。

古書店の棚の前に立つお客様は、棚に収容されている本たちが雑然としているのを目にすると思います。「古書店」と「古本屋」の違いは実はないのですが、この雑然度において「古本屋」が優っているといえるかもしれません。なかなか1冊の本が輝きをもってお客様に訴求するにはいたりません。

 

この難問を解決するのが「かたまり」戦術です。つまり、似たような本を寄せ集めて「かたまり」を作り出し、その「かたまり」でお客様に訴求するわけです。同じ著者、同じジャンル、同じ叢書、同じ出版社・・・、何でもいいのです。「かたまり」を作って、「かたまり」を訴求する。これが、幅90cm の狭い棚では有効なのではないか、こう考えました。

 

(7)出品する本の選定

 

90cm の棚1本ですから、手を広げるわけにはいきません。既設の古書店さんの棚などを見ながら、新しい店として特色の出せる古書は何か? こう考えて、以下のようなジャンルの古書を出品することにしました。

 

 「ヨーロッパの歴史・思想・文学」(フランス・ドイツ・ロシア)

 「ヨーロッパの歴史・思想・文学」(イギリス・中欧・地中海)

 「ヨーロッパの歴史・思想・文学」(ヨーロッパ全般・世界史・旅行記)

 「詩とメルヒェン」

 「音楽」

 「山」

 「囲碁」

 「将棋」

 

前記の「かたまり」にして、46個、220冊。まず、これで出発することにしました。 

開店日は2011817日と決まりました。  

(8)開店告知

 

実際の開店は1週間ずれて、2011824日でした。

以下は開店の告知です。 (2011/8

 

三省堂古書館出品のご挨拶

 

このたび、「スーパー源氏」ならびに三省堂書店のご好意により、「BIBLOSの本棚」は20118月から、正式に、「三省堂古書館」に古書を並べさせていただくことになりました。

 

三省堂古書館は「常設」の展示スペースです。

90cm x 6段の棚1本に、「ヨーロッパの歴史・思想・文学」・「詩とメルヒェ

ン」・「音楽」・「山」・「囲碁」・「将棋」のジャンルの本を並べます。

 

東京にお越しの節は、是非、三省堂古書館にお立ち寄りくださいませ。

(なお、三省堂古書館への委託販売ですので、私が現地にいるわけでは

ありません。あしからず。)

 

三省堂古書館:

場所:三省堂書店神保町本店4階左奥

営業時間:午前10 - 午後8時 (年中無休)

電話:03-3518-6841

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BIBLOSの本棚 : http://enjoy1.bb-east.ne.jp/~biblos/

 

 


「本の聖地」での定着を目指して・1

2011-12-07 07:39:28 | BIBLOSの本棚

 

(1)見習いの心境

 

昨年夏から、三省堂書店各店の棚を借りて「古書フェア」の催しへの参加を重ねてきましたが、このたび、「三省堂古書館」からオファーを受けました。身に余る光栄です。

「三省堂古書館」とは、三省堂書店の中で古書を専門に扱う店内店で、現在は、神保町本店の4階にあります。そこに、「スーパー源氏」加盟の約26店が棚を並べています。そこに本を並べないか、というお誘いです。

 

当面は、「BIBLOSの本棚」の看板を掲げることはできず、スポット的な催事棚に本を出品するという「見習い」のような待遇です。そこでの実績により、次のステップへの展望が開けるかどうか、分かれます。誇り高い私にとってはやや屈辱的な条件ですが、ここは我慢のしどころ、その条件を甘受して、出品を考えています。

 

三省堂古書館から求められたのは、「出版社別の文庫本の棚を充実させたいので協力してほしい」というもので、ちくま文庫(ちくま学芸文庫を含む)・講談社文庫(講談社学術文庫・講談社文芸文庫を含む)・新潮文庫を取り揃えて出品することにしました。おそらく、これらの文庫が「人気はあるけれども、品薄」なのでしょう。  (2011/5

 

(2)三省堂古書館の慣行

 

「三省堂古書館」は三省堂書店の店内店です。そこには、新刊書店のしきたりと古書店の風習とが混ざり込んでいます。古書店から見ると、煩わしい慣行もあります。

 

新たに、三省堂古書館に出品するにあたって、以下の作業が必要でした。

         本に透明なビニール・カバーをかぶせる(本を汚れから防ぐため。これは私も賛成です。)

         出品する本のデータ(書名・価格・古書店名など)をExcel で作成する(値札シールと値札スリップを印刷するため。)

         値札シールを印刷して書籍に貼る(何らかの値札は必要。)

         値札スリップを印刷して書籍に挟み込む(単行本なら理解できますが、文庫本の場合はやり過ぎ。)

以上です。それぞれ、事情や理由があるようですが、この準備作業にかかる手間がバカにならないと感じました。出品する書籍は1冊数百円の文庫本なのに。

 

とくに、(特殊な印刷システムが必要なため)値札シールの印刷を「スーパー源氏」に委託しなければならない点が致命的になる予感がしています。これが、きめ細かな納本、迅速な納本など、小回りの利く納本を決定的に妨げそうです。  (2011/5

 

(3)いよいよ陳列開始

 

ゴールデン・ウィーク中に出品の準備作業を終え、53日に納品しました。到着後すぐに陳列されたようです。

 

古本の常として、1冊だけの在庫ですから、店頭に並べられるとすぐに発見して買い求める目ざといお客様がいます。ですから、陳列してすぐに動く(つまり、売れる)ものがあるのは当然です。問題は売れ行きの持続期間です。それが長ければ、それは「よい商品群」といえます。さて、「BIBLOSの本棚」の出品したちくま文庫(ちくま学芸文庫を含む)・講談社文庫(講談社学術文庫・講談社文芸文庫を含む)・新潮文庫は「よい商品群」に当てはまったのでしょうか?

 

5月の売上実績が三省堂古書館から届きました。予想を上回る成績でした。ただ、この好調が長続きするかどうかは、今後の補充が順調にいくかどうかにかかっていることはいうまでもありません。  (2011/6

 

(4)新刊書店の慣行

 

多くの新刊書店がそうであるように、三省堂書店も在庫の圧縮に留意しているようです。なるべく在庫を持たないようにして、売れ筋のものについては、緊急に納品手配をかける。これが、新刊書店の場合常態のようです。一つの書目を何十冊・何百冊も扱う一方、売れるかどうかわからない書目も店頭在庫を切らさないための知恵が働いています。

 

一方、古書の場合、多くの場合、一つの書目で1冊限りです。ある書目が売り切れたら、別の書目で穴を埋める必要があります。さもないと、棚に穴が空きます。そのため、ある程度、手元に在庫を持たないと、古書店の棚管理は立ち行きません。

 

三省堂古書館は、在庫不足になると、古書店に対して、「緊急納品」手配をかけるようで、この手法は新刊書店の手法そのものです。それを受ける古書店の苦労は推し量れます。つまり、いつもスクランブル納品に備えていなければなりません。そのためには、上に書いた煩わしい作業が多すぎます。 このような厳しい納品体制を敷くことが「三省堂古書館」に古本を置かせていただくための必要条件のようです。 (2011/6

 


三たび「本の聖地」へ

2011-12-05 07:17:36 | BIBLOSの本棚

 

(1)絶版文庫フェア

 

三省堂書店神保町本店の夏の恒例のフェアが「絶版品切 文庫・新書フェア(古書フェア)」です。今年は、730日-831日に開催されることになり、出品の応募をしました。それにしても、タイトルは何とかならないものでしょうか? 「絶版」と「品切」はことばがダブっている気がします。また、「文庫」・「新書」と並べる必要もありません。最後の「(古書フェア)」には笑ってしまします。「絶版」と「品切」を扱うので、「古書フェア」であるのは明白です。それでも、「古書フェア」と謳わざるを得ないのが新刊書店のアキレス腱です。

 

私なら、シンプルに「絶版文庫フェア」とします。少し気取って、「夏の絶版文庫フェア」とか「絶版文庫甲子園」としてもいいかもしれません。

 

さて、昨年の夏にも同じフェアに参加させていただきましたので、要領はわかっています。今回は、昨年以上の実績を挙げるべく、準備を重ねました。それは、「いいコンテンツを、数多く」という目標に沿った準備です。

 

(2)今年の新基軸

 

会期の序盤・中盤には1日おきに会場に足を運び、棚の整理をするとともに、ストックの状況をチェックし、その情報を他の出品古書店に流しました。何しろ、棚の動きが激しいのです。行くたびに、空きのある棚が目に入ります。それだけ、よく売れていたようです。急いで補充の準備をし、それを三省堂書店に送り、空いた棚を埋めるというルーティンの連続で、会期の序盤・中盤が過ぎました。

 

会期の終盤に入り、補充の弾切れ状態に陥りました。それで、会期の終盤は会場に足を運ぶことを止めました。空いた棚を見るのが恐ろしかったからです。

 

以下、昨年夏のフェアとの比較をしてみましょう。

 

出品数:ダンボール13箱(昨年夏は9箱)

売れ筋:(1)中公文庫、(2)朝日文庫、(3)河出文庫、(4)外国文学(昨年夏も同じ)、 (5)歴史物(昨年夏も同じ)、(6)大型セット物(今夏の特徴)、(7)高額本。 結局、何もかも売れたという印象でした。

販売成績:今回の売上額は昨年夏に比べ200%を達成しました。空前絶後で、今後もこのような実績は二度と残せないでしょう。

返品率:5/13(昨年夏は4/9)。 

 

「本の聖地」で、この上もなく貴重な経験をさせていただきました。  (2011/9

 


再び「本の聖地」へ

2011-12-03 07:05:15 | BIBLOSの本棚

 

(1)創業130年記念

 

三省堂書店下北沢店の「古書フェア」に参加している間に、私の加盟している「スーパー源氏」から三省堂書店神保町本店への出品の打診をいただきました。2011215日(火)-331日(木)に、「創業130年記念春のセット本まつり」を開き、新刊書のセット本と古書のセット本を並べて展示するそうです。

 

急なお話で、準備が間に合うか不安がありましたが、昨年夏に同じ店で同じようなフェアに参加させていただいた経験がありましたので、お受けすることにしました。三省堂書店からは「三省堂古書館」(三省堂書店の中で古書を専門に扱う店内店)がサポートしてくれるということでした。三省堂古書館からのご注文は、「セット物の文庫本」を用意してほしい、というものでした。

 

昨年夏の経験から、文庫本はよく動く(つまり、よく売れる)という確信がありました。また、セット物は準備が楽で、その上「かたまり」としてお客様に訴求することができる、という見込みも立ちました。

 

打診を受けてから2日後には発送準備が整いました。我ながら驚くほどの速さでした。

本の陳列は三省堂古書館がやっていただけるとのことで、215日の開会を待ちました。

なかなか現地に出向けませんでしたが、三省堂古書館から「順調にすべり出しました。」という連絡をいただき、追加の納品を求められました。

 

(2)突然のスローダウン

 

「順調にすべり出した」途端、311日の東日本大震災の発生です。

 

一週間後に、お店を訪れました。

三省堂古書館の主人の話では、震災後、客足は激減、売上げも激減、だということです。

確かに、街を歩いている人が、普段の1/4ほどしかいないのです。

 

自然に状況が改善するのを待つよりないと意見が一致しましたが、いつごろ状況が改善するのかはわかりません。個人的推測では4月一杯は無理で、5月に入ってからではないかと思っています。そう、この「まつり」には間に合わないだろう、ということです。

 

331日までの会期が420日まで延長になり、終わりました。

以下、昨年夏のフェアとの比較をしてみましょう。

 

出品数:ダンボール7箱(昨年夏は9箱)

判型:文庫と単行本のセット物(昨年夏は文庫・新書のみ)

売れ筋:(1)ちくま学芸文庫、(2)朝日文庫、(3)外国文学(昨年夏も同じ) (4)歴史物(昨年夏も同じ)

販売成績:今回の売上額は昨年夏のそれを若干上回りました。大震災によるマイナス効果が大きかったものの、会期延長の恩恵が与ったようです。

返品率:4/7(昨年夏は4/9)。 

 

以上、今回の経験を踏まえ、次回の出品に備えるつもりです。              (2011/5

 

 


「本の聖地」の老舗書店にて

2011-12-01 07:02:11 | BIBLOSの本棚

 

(1)暑い中

 

近年は気候の変動が著しくて、冬が暖冬だったり、夏が冷夏だったり熱暑だったりと、異常気象には事欠きません。

 

今年は、全国的に梅雨に雨が多かったようです。そして、梅雨明けとともに猛暑が襲ってきました。この暑さは近年でもまれな暑さではないでしょうか?

 

暑い中、今ある作業をしています。

 

私は、インターネット古書店「BIBLOSの本棚」 http://enjoy1.bb-east.ne.jp/~biblos/ を運営していますが、リアルな古書店を1ヶ月だけ開店することになりました。その準備です。出品する書籍を選り分け、値札を付け、梱包するのです。体を少し動かすだけで汗が噴き出します。こんなに汗をかいたのは久しぶりのことです。

 

私の加盟している「スーパー源氏」から声をかけていただき、「本の聖地」である東京・神田神保町の三省堂書店神保町本店で開催される「絶版・品切文庫・新書フェア」に出品することになりました。5店の古書店の共同出店です。

 

開催期間は、87日(土)-910日(金)の1ヶ月間。

期間は長く見えますが、古書店のすることは至って少なく、事前に出品する書籍を宅急便で送り、

開店前日に棚に並べる。これだけです。始まってしまえば、あとは、三省堂がすべてやってくれます。棚の空きの補充も三省堂がやってくれます。

 

開店が楽しみです。

ただ一つの心配は、売れすぎて、補充書籍が足りなくなったらどうしよう、ということ。でも、そんなこと、あり得ないか。  (2010/7

 

(2)ひと夏限りの

 

東京・神田神保町の三省堂東京本店で87日から910日まで開催されていた「絶版・品切 文庫・新書フェア」が終了しました。「BIBLOSの本棚」として初めて経験するリアル古書店への出品でしたが、様々な経験を積むことができました。

 

出品数:

 

前回、「売れすぎて、補充書籍が足りなくなったらどうしよう」と冗談をいいましたが、実際にその事態が起こりました。事前にダンボール7箱分を三省堂に送ったのですが、その後、三省堂からの要請があって、2箱分補充しました。

 

売れ筋:

 

これが、最も関心のあることでした。(1)絶版の海外文学、(2)絶版のSF、(3)歴史物。これが、ベストスリー。「BIBLOSの本棚」が得意とする「詩とメルヒェン」があまり出ないのが意外でした。

 

販売成績:

 

期間全体の販売実績はまだ手元に届いていませんが、中間集計では、参加5店の中で、「BIBLOSの本棚」は、販売点数で3位、販売額でも3位につけています。新米古書店としては望外の成績です。とくに、出品点数が出店5店の中で最少でしたから、健闘した部類です。

 

返品率:

 

会期が終わり三省堂からダンボール4箱分が返ってきました。返品率4/9。平均に比べての評価はできませんが、新米古書店の成績としては、まずまずでしょう。いや上出来といえるかもしれません。

今回の参加の目的の一つが、在庫の圧縮でした。この目的は十分に達成しました。

 

手応え:

 

大きな老舗書店の棚を一部借りて古書店を開くというこの上もない贅沢を味わせていただきました。

 

ただ、何かが足りない。

それは、お客様とのやりとりがないことです。

販売実務はすべて書店がやってくれます。こちらは、「これだけ売れました。」「補充をお願いします。」という書店からの連絡を受けるだけです。これ以上楽なことはないともいえますが、一方、お客様とのやりとりのないことがフラストレーションを引き起こします。

 

インターネット古書店では、受注確認通知を差し上げる、書籍を発送する、お客様からの受け取り通知をいただく、など、すべてのお客様とのやりとりが楽しくてしょうがないのですが、今回それらはすべてカット。そこがもの足りなさを感じた所以です。

 

来年は?:

 

さて、次回、同じような催しがあった場合、参加を希望するか? 悩むかもしれません。

今回が、ひと夏限りのリアル古書店だったかもしれません。  (2010/9

 

 


リアル古書店のご案内(告知)

2011-07-01 18:18:31 | BIBLOSの本棚

 

このたび、「スーパー源氏」ならびに三省堂書店のご好意により、「BIBLOSの本棚」は期間限定で「そごう大宮店」に古書を並べさせていただくことになりました。

 

会期:201171日-31

時間:午前10時-午後8

場所:そごう大宮店(JR大宮西口駅前)10

出展古書:歴史文化系・芸術芸能系の全集もの

 

首都圏にお越しの節は、是非、そごう大宮店にお立ち寄りくださいませ。

 

なお、三省堂古書館にも継続して出品しております。

三省堂古書館:

場所:三省堂書店神保町本店4階左奥

営業時間:午前10 - 午後8時 (年中無休)

電話:03-3518-6841                         (2011/7)

 

 


二度目のリアル古書店・5

2011-03-26 07:36:13 | BIBLOSの本棚
(5)古書とお客様

古書店としては、古書の用意の仕方に反省すべき点を見つけました。それは、小さな単位の「かたまり」を作るべきだ、ということです。同じジャンル、同じ判型、同じ叢書、などを集めて陳列する、という工夫をすべきなのです。それが、お客様に訴求するのに役立つのです。

新刊書店での古書フェアでは、陳列するスペースは限られています。今回は幅90cm の棚1列ですから、その中でいかにお客様の目を引くか、が勝負です。その点、修業が足りない、と思わざるを得ませんでした。 

ある日、書棚の整理をお手伝いしていたら、年配のご婦人から声をかけられました。

「この本、定価が460円だったものに800円の値札がついているけれど、本当かしら?」
「はい、その本は絶版になっていますが、今でも根強い人気があります。その値札で間違いないと思います。」
「そう。ずーっと探していたのだけれど、なかなか見つからなかったのよ。」
そういって、ご婦人は会計に向かいました。

絶版、人気作家、新刊書店、年配のご婦人・・・。

そうか、古書とお客様との出会いは、ここらあたりに秘訣があるのではないか。このようなお客様を見出していくべきなのか。大いに参考になる体験でした。 (2011/3)

二度目のリアル古書店・4

2011-03-24 07:34:01 | BIBLOSの本棚

(4)反省すべき点

思うような実績を残せず、折角機会を与えていただいた「スーパー源氏」と三省堂書店に対して申し訳ない気持を抱きました。

今回、何が悪かったのか?
事前の企画とマーケティングが不足していた、という点に尽きます。反省の意を込めて、思いつく点を列挙してみます;

1 客筋をつかめていなかった。文化人・富裕層を主な客筋と想定しましたが、むしろ、もっと広い客筋が現実だったようです。

2 お店の特徴を十分につかんでいなかった。私鉄沿線の新刊書店なので、主婦・子ども向けのピンクっぽい店構えは承知していましたが、それに見合うような古書はまったく用意できませんでした。

3 過去この店で実施された「古書フェア」での売れ筋などを参考にする努力を怠った。

4 「BIBLOSの本棚」は芸術芸能系の古書を用意しましたが、隣りのお店は歴史文化系と文庫本を出品していました。二店のシナジー(相乗)効果はまったく発揮できませんでした。

新刊書店で古書フェアを開催するには、場所を提供する書店(三省堂書店)と古書を出品する古書店(BIBLOSの本棚)と企画を担当する「スーパー源氏」が三位一体で事前の企画とマーケティングを行うべきでした。それには時間が足りませんでした。 
(2011/3)

二度目のリアル古書店・3

2011-03-22 07:32:09 | BIBLOSの本棚
(3)ほろ苦い実績

会期半ばになって、軌道修正に踏み切りました。
まず、新たに、比較的軽めのコンテンツで、安めのものを追加投入しました。
次に、高額商品の値札の付け替えも試みました。

その後の推移を見守りましたが、思うような改善を見出せないまま、会期が終了しました。

以下、昨年夏のフェアとの比較をしてみましょう。

出品数:ダンボール14箱(昨年夏は9箱)

判型:単行本のみ(昨年夏は文庫・新書のみ)

売れ筋:(1)詩とメルヒェン、(2)映画、(3)演劇、(4)音楽。昨年夏振るわなかった「詩とメルヒェン」が健闘しました。

販売成績:今回売上額は昨年夏並みでした。会期が2ヶ月(昨年夏は1ヶ月)だったことを考えると、物足りない成績です。

返品率:10/14(昨年夏は4/9)。この数字を見ても今回の苦戦が跡付けられます。
(2011/3) 


二度目のリアル古書店・2

2011-03-01 07:12:44 | BIBLOSの本棚
(2)想像と現実

開催の直前に実地検分をさせていただきました。
下北沢駅北口前にあるお店の立地は満点です。建物は少々、というか、かなり、古びています。店内を一瞥したところでは、何となくピンクっぽい雰囲気がただよい、女性や子ども向けの店作りがなされているようです。首都圏の文教堂・啓文堂などのチェーン店と似た雰囲気です。

私のイメージしていた、「文化人の街=下北沢」とは店内に漂う空気がやや異なります。「これは、参加して失敗したかな。」という思いが胸をよぎりました。でも、「BIBLOSの本棚」にはピンクっぽい本などない。そこで腹を括って、予定通り、やや硬めの古書を出品することにしました。ジャンルは、「詩とメルヒェン・美術・音楽・演劇・映画・芸能・将棋・囲碁・遊び」とし、下北沢に数多くいる(はずの)文化人に的を絞りました。店長の話では、文化人とともに、富裕層の客筋も見込めるとのことでした。

今回は、昨年夏のフェアと違い、単行本だけの出品です。併せて、高額商品も取り混ぜました。

会期が始まり、予定通り、1週間に1回のペースで書店を訪れ、棚の整理をさせていただきながら、売れ具合や売れ筋ジャンルを確認しました。満遍なく売れているが、売れている量は少ないようです。中でも、高額商品は苦戦していました。隣りの店では、絵本がよく出ていました。

お目当ての文化人や富裕層にはなかなか行き当たらないもどかしさがありました。  (2011/3)


リアル古書店のご案内(告知)

2011-02-15 07:13:40 | BIBLOSの本棚

このたび、「スーパー源氏」ならびに三省堂書店のご好意により、「BIBLOSの本棚」はリアル古書店を期間限定で開設いたします。

 期 間:2011年2月15日(火)-3月31日(木)
 場 所:三省堂書店神保町本店1階
 時 間:10時-20時

出品する古書は、セット物の文庫です。

東京にお越しの節は、よろしかったら、神保町まで足をお運びください。

2月いっぱいは、開催中の三省堂書店下北沢店との並行開催となります。
(2011/2)