負の社会的遺産の排除のためには、大きく分けて、喫煙によって汚された施設の大クリーニングと喫煙に起因する疾病に対処する医療施設の建設・維持が必要でしょう。
汚れた施設の大クリーニングには、シラク氏が市長の時代に、パリで行われた建築物の大クリーニングの例を参考にするといいと思います。クリーニングに要する工数・期間・費用などがわかります。
喫煙に起因する疾病に対処する医療施設の建設・維持にはどれほどの工数・期間・費用などが必要かは予測できません。例えば、各県に、循環器・呼吸器専門病院を一ヶ所ないし数ケ所建設し、医師を雇い、病院を運営するのですから、並大抵のことではありません。
とくに、その財源の確保が課題です。誰が財源を負担するか?
タバコ製造・販売会社と喫煙者に負担を求めるのが適当でしょう。過去の喫煙者を特定することは不可能でしょうから、これからの喫煙者に負担を求める。すると、タバコ税の増税が必要になります。増税の幅は予測もできません。
タバコ製造・販売会社は負担の増大に悲鳴をあげて廃業するところがでるかもしれません。また、タバコ税の増税によりタバコ価格が高騰して、タバコを止める人が激増するかもしれません。それはそれで結構なことです。廃業も自由ですし、タバコを止めるのも自由ですから。
アメリカでは、各州とタバコ製造・販売会社との間で和解が成立して、これから将来にわたって長期的に、驚くべき金額をタバコ製造・販売会社が拠出して、喫煙に起因する疾病に対処する医療費に充てるということがすでに決まっています。(伊佐山芳郎「現代たばこ戦争」、1999年、岩波新書)
「タバコ製造・販売会社」の一員に日本たばこ産業(JT)も入っていることは、ご存知でしょうか?
さて、日本で、ここで述べたようなユートピアが実現するのはいつのことでしょうか? 予測の難しい問題です。 (2007年1月)