静聴雨読

歴史文化を読み解く

ドイツ:絵と音楽の旅 17

2014-04-27 07:37:28 | 異文化紀行

 

(17)掘立小屋

ハンブルクでの最終日はリューベックに日帰り旅行をする予定だった。

リューベックはトーマス・マン所縁の街であり、トーマス・マン博物館がある。彼の『ブッデンブロ-ク家の人々』に彼のリューベック体験がつぶさに描かれている。大学の友達に是非行ってみるように、と言われていた。

ところが、拠所ない事情でリューベック行は断念することになった。

リューベック行の換わりにブレーメンへの日帰り旅行を追加したのだ。

ハンブルクからブレーメンまでは列車で1時間20分ほど。ハンブルクを出るとすぐ、写真のような掘立小屋が目に入る。これは何だろう? ドイツを列車で旅するごとに、私は疑問になる。日本での常識に従うと、「家庭菜園」だろうか? 都会の仕事に疲れた人たちが週末に息抜きに訪れる場所。でも、今まで、ここにいる人を車内から見たことがない。あるいは、週末に列車旅行をしたことがないからかもしれないが。

または、同じく、都会の仕事に疲れた人たちが週末に小屋の中で木工などの「日曜大工」に励んでいるのだろうか? これなら、大いにありうる話だ。

さらに飛躍すれば、ジプシーの住処か? 不謹慎な連想だが。

いずれ、私は、「ドイツにおける掘立小屋の研究」をまとめようと思う。

その目次は、

1.掘立小屋の役割

2.掘立小屋の主人の素性

3.掘立小屋の主人へのインタビュー

これは、社会学的にも民俗学的にも面白いテーマになると思う。

(2014-04-13)

 


ドイツ:絵と音楽の旅 16

2014-04-23 07:32:47 | 異文化紀行

 

(16)ハンブルクでのオペラ

ハンブルクで聴いたのは、次の4作。

 ビゼー『カルメン』(ハンブルク・シュターツオペラ)

 ベートーヴェン『フィデリオ』(同)

 プッチーニ『マノン・レスコー』(同)

 モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』(同)

うち、聴き応えのあったのはビゼー『カルメン』。もっとも、これは新発見ではなく、前からわかっていたこと。メリメの原作をベースにした台本が素晴らしい。また、要所要所に配したアリアが素晴らしい。これは文句のつけようがない。

(2014-04-11)


ドイツ:絵と音楽の旅 15

2014-04-21 07:28:53 | 異文化紀行

 

(15)ブラームスとテーレマン

ハンブルクはブラームスの生まれた街。ブラームス博物館にいってみた。長屋風の建物の1階と2階を使って展示されているが、面白みはない。係員は座っているだけ。

どうも、このところ、私とブラームスの相性はよくない。

バーデン・バーデンでブラームス博物館に行ったところ(2013年3月)、イースター前の聖金曜日で休館、そして今度も面白みのない博物館に当たった。

バーデン・バーデンで聴いたブラームス『ピアノ協奏曲第1番』(サイモン・ラトル指揮、ベルリン・フィルハーモニー、クリスティアン・ツィマーマンのピアノ)もベルリンで聴いたブラームス『ピアノ協奏曲第2番』(ズビン・メータ指揮、ベルリン・シュターツカペレ、ダニエル・バレンボイムのピアノ)も心を打たなかった。

ブラームス博物館と同じ長屋にあるテーレマン博物館に寄ってみた。ゲオルク・フリードリッヒ・テーレマン。バッハ・ヴィヴァルディと並ぶバロックの巨匠だ。テーレマンが生涯の後半40年ほどをここハンブルクで過ごしたことを不覚にも知らなかった。そういえば、『ハンブルクの汐の干満』という曲はテーレマンのものではなかったか? 若いころ、夜更かしして、ラジオから流れてくる皆川達雄の解説で、この曲を聴いた覚えがある。

この博物館の主人と話をした。

「テーレマンに『ハンブルクの汐の干満』という曲があったと思いますが?」

「ええ、Tide Level of Hamburg といいます。ハンブルグはいつも洪水に悩まされていました。それで、こんな名前を思いついたのでしょう。」

「今、その曲を聴くことができますか?」

「ええ、探してみましょう。申し訳ありません、近くにはないようです。」

この主人は、音楽家ではなく、ボランティアでこの博物館の番をしているとのこと。

(2014-04-09)


ドイツ:絵と音楽の旅 14

2014-04-19 07:24:02 | 異文化紀行

 

(14)ハンブルクへ

ベルリンからハンブルクへは、ノン・ストップのICEで2時間かからない。平坦な土地を淡々と進む。日本の新幹線と違うのはトンネルがまったくないことだ。

ハンブルクに着いてすぐ感じたのは空気が湿っていること。さすが、港町らしい。

運河近くのホテルに投宿した。ここからハンブルク・シュターツオペラまでは歩いて5分かからない。やや古めかしいホテルだ。夜になると、ホテルの並びのナイト・スポットに赤いネオンが輝く。何と、「 Girls! Girls! Girls! 」とある。何ともストレートな表現だ。

翌日、昼間に、港町の倉庫街を散策した。倉庫といっても、大きな7階建ての建物で、今は事務所に使われているらしい。建物には番号がついていて、AからWまで数えられた。何とも巨大な倉庫群だ。

(2014-04-07)


ドイツ:絵と音楽の旅 13

2014-04-17 07:21:02 | 異文化紀行

 

(13)ベルリンでのオペラ

 ベルリンで聴いたのは、次の4作。

 ヤナーチェク『カーチャ・カバノヴァー』(シラー劇場、ベルリン・シュターツオペラ)

 リヒャルト・シュトラウス『サロメ』(シラー劇場、ベルリン・シュターツオペラ)

 ロッシーニ『セビリアの理髪師』(シラー劇場、ベルリン・シュターツオペラ)

 ヤナーチェク『イェヌーファ』(ベルリン・ドイツ・オペラ)

うち、『サロメ』が収穫。オスカー・ワイルドの戯曲を下敷きにした台本が優れているし、最終幕のサロメの歌う長大なアリアが、ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』の最終幕の『イゾルデの愛と死』を彷彿とさせるものだ。しかも、そのアリアは、有名な『七つのヴェールの踊り』を踊り終わった直後に歌われるのだ。これには驚いた。

ヤナーチェの2作は予想通り、従来のオペラの常識を覆す場面・構成で興味深かった。これから、詳しく調べてみよう。

(2014-04-05)

 


ドイツ:絵と音楽の旅 12

2014-04-15 07:32:29 | 異文化紀行

 

(12)メータとバレンボイム

コンサート終了後、ズビン・メータへの名誉指揮者推戴式(のようなもの)が行われた。メータとバレンボイム。この二人にクラウディオ・アバドを加えた三人は仲が良かったらしい。(そのアバドは2014年1月20日に亡くなった。)この三人が、1956年8月26日(58年前!)に競演したプログラムが残っている。会場は、シエナのテアトル・デイ・リノヴァッティ。

バッハ『組曲第3番』(アバド指揮)

チャイコフスキー『交響曲第5番』(メータ指揮)

ベートーヴェン『エグモント』序曲(バレンボイム指揮)

あ、そうか。メータとバレンボイムがメシアンを選んだのは、アバドの復活を祈願するためではなかったか? おそらく、そうだ。

(2014-04)

 


ことばのクリニック - 獺祭(だっさい)

2014-04-13 07:30:44 | ことばの探求

 

東京・羽田空港の国際線ターミナルの食堂街のあるお店に「獺祭(だっさい)」という日本酒がおいてあった。珍しい名前だ。蔵元は山口県岩国市の旭酒造株式会社。

ラベルに「純米大吟醸50」とある。これは何を意味するか?

ラベルには説明があり、「山田錦を50%まで磨いて醸した純米大吟醸」とある。山田錦は有名な酒米だ。それを、容積が50%に減じるまで磨いて、残った米から醸造した酒を「大吟醸」ということらしい。なるほど。道理で、市販の「大吟醸」と名の付く酒が高いわけだ。酒米の半分を無駄にするわけだから。

ところで、磨いて粉になった米粉はどうなるのだろう? これを処分するのはもったいない。精製して、「商用米粉」として市場に出しているのだろうか? 気になるところだ。

さて、ラベルの説明文の後半は、「きれいで新鮮な味と柔らかで繊細な香りが絶妙なバランスを保っています。」となっている。

何となく締まりのない文章だ。なぜだろう?

原因1 : 味と香りのバランスを強調したいのに、強調できていない。

原因2 : 「きれいで新鮮な」味と「柔らかで繊細な」香りとは、いずれもアタマの形容が重い。かつ、「きれいで」と「「やわらかで」の表象するものがボケている。

原因3 : 「・・・が絶妙なバランスを保っています。」もまた言葉の語呂の座りが悪い。

かくして、わが改良コピーは以下のようになる:

「新鮮な味と繊細な香りのバランスが絶妙です。」 

いや、まだおかしい。

「みずみずしい味と繊細な香りのバランスが絶妙です。」

こんなところだろうか。 (2014/4)


ドイツ:絵と音楽の旅 11

2014-04-11 07:44:43 | 異文化紀行

 

(11)フィルハーモニー

六日目の夜はフィルハーモニー(ポツダム広場)で、ベルリン・シュターツカペレのコンサートを聴いた。フィルハーモニーは初めてで、黄色い外装が予想外だった。中に入ると、自分の座席を探すのに手間取った。このホールは、中央の舞台を取り囲むように客席が配置されているので、自分の座席の相対位置を把握するのが難しいのだ。

この日のコンサートは、ズビン・メータを指揮者に迎え、ピアノにダニエル・バレンボイムを配置した超豪華なキャストだ。メータはずいぶん歳を重ねたものだと思った(72歳)。

演目は、メシアン『死者の復活を待ち望む』とブラームス『ピアノ協奏曲第2番』。

メシアンは文句なく面白かったが、ブラームスはバレンボイムの熱演にもかかわらず、あまり感心しなかった。昨年、『ピアノ協奏曲第1番』(サイモン・ラトル指揮、ベルリン・フィルハーモニー、ピアノ:クリスティアン・ツィマーマン)も聴いたが、これも今一つの印象だった。どうも、ブラームスのピアノ協奏曲と私との相性はよくないようだ。

(2014-04)


ドイツ:絵と音楽の旅 10

2014-04-09 07:35:54 | 異文化紀行

 

(10)ベルリン国際映画祭

私がベルリンに滞在している間に、ベルリン国際映画祭が始まった。若き映画青年(だった者)としては見逃せないイベントではあるが、今では映画への興味は失せている。

六日目にその主会場であるポツダム広場劇場に足を向けてみた。会場の入口に向かって、お馴染みの赤カーペットが敷かれている。そこを静々と歩く映画スターたちを眺める趣向らしい。

この映画祭では、「12 Years a slave 」の前評判が高かったが、後日発表されたところによると、「ブラック・コール、シン・アイス」という中国映画が金熊賞(作品賞)に選ばれたとのこと、また、黒木華(はる)が銀熊賞(女優賞)に選出されたのにも驚いた。番狂わせ続きのベルリン国際映画祭だった。

(2014-04)


ドイツ:絵と音楽の旅 9

2014-04-07 07:24:20 | 異文化紀行

 

(9)森鴎外

Sバーンをベルリン中央駅からフリートリヒ・シュトラーセ駅に向かう途中に、「鴎外」と壁に記した建物が目に入る。気になって、五日目にここを訪ねてみた。初老の日本人の女性が迎えてくれた。

鴎外は若いころ医学生として4年間ドイツに留学して、ベルリンにも住んだことがある。この「鴎外記念館」は、鴎外の下宿があった地域に開設されたものだという。『舞姫』『うたかたの日』『ウィタ・セクスアリス』などの作品に、鴎外のドイツ体験が記されているはずだが、私はまだこれらの作品を読んだ覚えがない。帰ったら、読んでみよう。

鴎外は遺言で、「石見人として死せんと欲す」と記し、宮内省や陸軍省からの顕彰を拒絶した。これが、われわれ一般人には最もわかりやすい鴎外の姿だ。

(2014-04)


ドイツ:絵と音楽の旅 8

2014-04-05 07:22:50 | 異文化紀行

 

(8)文化フォーラム

三日目は絵を見ることにした。ポツダム広場にある文化フォーラムに入っている「絵画館」。ヨーロッパの多くの大都市の美術館がそうであるように、ここでも、中世から18世紀にかけての絵が展示されている。その数は膨大だ。部屋ごとに、国と時代を分けているので、わかりやすい。私の好きな、陽気な肖像画家フランツ・ハルスも数点展示されている。ミュンヘンのアルト・ピナコテークで脇に追いやられて不遇をかこっていたハルスが、ここでは、正当に展示されていて、安心した。

各国の画家を見て回って、中世の宗教画の部屋に戻るとほっとした気分になるのはどうしてだろう? 各国の画家のような個性を感じさせる絵はなく、一様に神・キリスト・マリアを描いている絵に、ヨーロッパ共通の精神が体現されているように思うのだ。

(2014-03)


ドイツ:絵と音楽の旅 7

2014-04-03 07:15:34 | 異文化紀行

 

(7)動物園と水族館

今回は、オペラを聴くのに構えることが少なかった。また、昨年とは違い、暖かい気候に迎えられたので、自由な時間が多く取れた。その時間は観光に充てた。

二日目は、ヤナーチェク『カーチャ・カバノヴァー』のリブレットを読んだあと、ホテルを出た。

ツォー駅で、後日のハンブルク行きの列車の切符を買い・座席を予約した。ファースト・クラスで片道€98.50。高いのか、安いのか。

その足で、動物園に行った。冬の動物園は閑散としていた。ライオンの親子が凄みを効かせていた。ライオンの檻と観客とは壕で隔てられているが、オープン・エアに変わりない。パンダやゴリラは姿を見せなかった。

動物園に隣接して水族館があり、ここは家族連れでにぎわっていた。

大きなエボダイが愛嬌ある顔つきで、右から左に群れをなして横切っていく。

(2014-03)

 


ドイツ:絵と音楽の旅 6

2014-04-01 07:06:44 | 異文化紀行

 

(6)今回のオペラ

今回、ベルリン・ハンブルク・ブレーメンで、8本のオペラと1回のコンサートを聴く予定だった。(後に、オペラが1作増えて9本になった。)

 

ヤナーチェク『カーチャ・カバノヴァー』『イェヌーファ』

モーツァルト『ドン・ジョヴァンニ』

リヒャルト・シュトラウス『サロメ』

ロッシーニ『セビリアの理髪師』

プッチーニ『マノン・レスコー』『ラ・ボエーム』

ビゼー『カルメン』

ベートーヴェン『フィデリオ』

 

うち、ヤナーチェクが最大の目的で、リブレットを読むなどの準備をした。ほかは、あまり構えることなく、聴いてみようと思った。

(2014-03)