静聴雨読

歴史文化を読み解く

「成長」から「再生」へ・1

2010-01-29 00:08:44 | ユートピア探し
昨年の衆議院議員選挙に際して民主党が発表したマニフェストには、成長戦略が欠けていると、ジャーナリズムが一斉に批判しました。それを受けて、民主党を中心とする政権は、菅直人副総理を中心にして、どろなわ式に、成長戦略を策定しました。昨年末のことです。

その骨子は次の6点だそうです:
1 グリーン・イノベーション
2 ライフ・イノベーション
3 アジア経済戦略
4 観光立国・地域活性化
5 科学・技術立国
6 雇用・人材戦略

個々の項目について論評することは控えますが、驚いたことに、この成長戦略に接してジャーナリズムの批判がピタっと止まりました。野党の自民党からも、表立った批判は聞かれません。わが国の人びとは、よほど、成長戦略に飢えているようです。

さて、2008年秋の「リーマン・ショック」に端を発する世界的な経済沈下で、どの国も著しい経済停滞に見舞われましたが、そこから、いち早く回復の兆しを見せたのが中国です。最近の中国の経済統計部門の発表によると、2009年の国民総生産(GDP)の伸びは8%を超えたそうです。これは、中国政府による大規模な景気刺激策が功を奏した結果といわれています。

経済成長の真っ只中にある中国は、特に内陸部の底上げのためには、当分の間、この程度の経済成長がどうしても必要なようです。わが国の1960年代から1970年代にかけての様相に類似しています。

ひるがえって、わが国は高度成長期を経過し、すでに「安定成長期」という名の低成長期に入っています。また、人口構造も劇的に変化し、少子高齢化の時代に突入しました。このような環境にあって、どのような成長戦略を描くか、が今問われているのだと思います。 (2010/1)


第三の極・3

2010-01-27 00:39:43 | ユートピア探し
民主党と自民党の二大政党に対抗する第三の極・「国民生活党」ができた暁には、国会はどうなるでしょうか?

以前、国会を改組して、外交・安全保障・行財政制度・司法制度などを審議する国家議会(定数200、解散あり、完全小選挙区制)と教育・福祉・産業・インフラ・環境などを審議する国民議会(定数200、解散なし、完全比例代表制)とに役割を分担させる提案をしました。

この中で、民主党と自民党の二大政党と第三の極・「国民生活党」の議席配分をシミュレートしてみます。

国家議会:定数200、民主党110、自民党90
国民議会:定数200、民主党70、自民党50、「国民生活党」80

国家議会は天下・国家を論ずる議会ですから、完全小選挙区制の下では、民主党と自民党の二大政党が圧倒的に強くなります。小沢一郎が二大政党制に賭けた夢はここに実現します。

一方、国民議会は国民生活をもっぱら論ずる議会ですから、完全比例代表制の下では、民主党と自民党の二大政党のほかに、「国民生活党」の活躍する余地が十分にあります。国家議会では民主党に投票する人が国民議会では「国民生活党」に投票するパターンが頻出するでしょう。その結果、国民議会で「国民生活党」が第一党になることも夢ではありません。

上記の議席シミュレーションを見てみましょう。
国家議会と国民議会とを合わせて、定数400、民主党180、自民党140、「国民生活党」80という議席配分になり、第一党の民主党でさえ過半数を確保できないことになります。すると、民主党は「国民生活党」と連立政権を組むことを模索するでしょう。その際の「国民生活党」は、過去に、自民党と連立を組んだ社会党・公明党や民主党と連立を組んだ社民党・国民新党よりもはるかに強力な発言権を連立政権内で確保できるでしょう。

ここに、真の意味での「第三の極」の存在意義が出てきます。「第三の極」は二大政党制に対する「けん制のくさび」だと言っていいでしょう。思い起こすと、衆議院で自民党が圧倒的多数を占め、参議院で自民党が少数派になった際、「このような『ねじれ現象』が生じては、国政の遂行に支障を来たす。」という議論がありましたが、二大政党と「第三の極」とが鼎立する国会では、「ねじれ現象」こそ常態なのだということがわかります。その中で、どのような政権の舵取りをするかが政権与党に問われることになります。

・・・以上は、2010年初頭の「初夢」でした。 (終わる。2010/1)


第三の極・2

2010-01-25 09:06:51 | ユートピア探し
端的にいえば、「二大政党制」が必ずしも最良の政治制度であるとはいえないのです。「政治には金がかかる」と思い込んでいる政党が二つあって、時によって、政権交代しても、その金権体質は何も変わりありません。金権体質から自由になった第三の政党が望まれる所以です。

現在、民主党と自民党の二大政党の他に、多くの中小政党があります。
民主党と連立政権を組む社民党と国民新党。
自民党と歩調を合わせる改革クラブと平沼グループ。
民主党とも自民党とも距離を置く公明党・共産党・みんなの党、など。

これらの党が「第三の極」に成り得るでしょうか?各政党の「党是」を見てみます。
社民党:「平和と護憲」
国民新党:「弱者救済」
公明党:「平和と福祉」
共産党:「平和と民主主義」
改革クラブと平沼グループ:自民党補完勢力というだけで、はっきりした「党是」はわからない。

改革クラブと平沼グループを除けば、社民党・国民新党・公明党・共産党の「党是」は極めて似通っていることがわかります。一方で、一つ一つの政党が余りに小さすぎます。社民党・国民新党・公明党・共産党は共通の政治目標を掲げながら、なぜ、それぞれが弱小政党に甘んじているのでしょうか?

聞こえてくる答えは「それは、イデオロギーが違うからさ。」というものです。

確かに、例えば、公明党と共産党は信ずるイデオロギーという点では「火と油」です。この両党は、「年収300万円世帯」を主たる支持基盤とする点が共通しています。経済格差の是正、セーフティー・ネットの拡充、護憲・平和、など、実現したい政策目標の多くも一致します。しかし、それぞれの党だけでは、獲得できる国会議席は限られます。

この制約を打破するために、公明党と共産党が合併することを提案したいと思います。これは、半分冗談ですが、半分は本気です。「年収300万円世帯」の支持基盤の利害を代表する政党として、あり得る選択ではないでしょうか? 唯一の条件は、イデオロギー論争を封印することです。  

公明党と共産党が合併して、「公明・共産党」ができ、「年収300万円世帯」の支持基盤の利害を代表する政党となったとします。社民党と国民新党もこれに参加することができるかもしれません。「公明・共産・社民・国民新党」となれば、隠然たる勢力を国会に張ることができます。長すぎる党名は、短く「国民生活党」とでもすれば、党の目指すところを国民に訴えることができます。
(2010/1)


第三の極・1

2010-01-23 08:33:53 | ユートピア探し
昨年はわが国に「政権交代」が実現し、国民はちょっぴりわが国の将来に希望を持ちました。しかし、このところ、また、国民の間に閉塞感が生じつつあります。新しく政権党になった民主党の代表と幹事長に、昔ながらの「政治と金」疑惑が噴出して、一時の政権与党・自民党と同じではないか、という疑念が生じています。

実は、「政権交代」の前の三代の総理大臣(安倍晋三、福田赳夫、麻生太郎)と現在の民主党の代表(鳩山由紀夫)と幹事長(小沢一郎)には共通点があります。世襲政治家であること、と、「政治には金がかかる」と思い込んでいることです。これでは、抜本的な政治改革など期待できない、と多くの人が思っても不思議ではありません。

小沢一郎は、「政権交代可能な二大政党制」を自らの政治信条に掲げ、その目的のため、自民党を割って「反自民連立政権」を作りました。そして、衆議院に小選挙区制を導入する道筋をつけました。小沢の執念が実って、民主党に政権が変わりました。しかし、早くも、「政権交代しても変わらない二大政党制」の影が忍び寄ってきています。

小沢一郎が金科玉条のように標榜してきた「二大政党制」が最良の政治制度なのかどうか、検証する必要が出てきました。 (2010/1)


大内延介九段は煙草好き

2010-01-21 19:35:42 | 社会斜め読み
以下は、ある日、日本将棋連盟に宛てた問い合わせ状です。
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「囲碁・将棋チャンネル」の「速報!順位戦」を見ていましたら、対局室風景が映し出されました。
大きな部屋で、3~4局同時に進行しているようです。
その中で、大内九段が煙草をくゆらしている姿が映り、びっくりしました。
煙草を吸う本人は満足でしょうが、対局相手や周りの対局者は迷惑しているのではないでしょうか?
今時、公共の場である対局室で喫煙することの非常識さにあきれましたが、日本将棋連盟では規制していないのでしょうか?
お尋ねします。
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大内九段はヘビー・スモーカーとして知られていますが、まさか対局室でも吸っていたとは!

日本将棋連盟から回答がありました。
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対局室の喫煙につきましては、現在、規制されていません。 IT業務担当
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見事、肩透かしを食いました。
「規制うんぬん」の質問が余計でした。回答者はそこに引っかかって「規制されていません。」と、「現状説明」をされたのでした。質問の本質はそこにあるわけではなく、未だに喫煙規制をしていない日本将棋連盟の考え方を聞きたいということだったのです。

日本将棋連盟の回答であれば、「規制していません。」と能動形の表現をとるはずです。
質問は日本将棋連盟に届くことなく、「IT業務担当」止まりになりました。まるで、「IT業務担当」が「JT業務担当」のように思えました。

大内九段は山歩きが好きで、「高い所は空気がきれいでいい。」といいますが、ご本人は都会に帰ると煙草で空気を汚しているのですから、何をかいわんや、です。大内延介66歳、「好漢、自重せよ。」のことばを大内九段に贈りたいと思います。(2008/2)

歴代の名馬

2010-01-17 09:28:20 | スポーツあれこれ
わが国の競馬史上で、名馬を挙げるとすれば、どんな馬がいるだろうか?

おそらく、シンザン(父・ヒンドスタン)の名がまず出てくるだろう。
3歳時にクラシック三冠レースを制覇し、古馬になってからも、天皇賞・春と有馬記念を勝った名馬だ。

シンザンのレースをライブで見たことはないが、ビデオで見た有馬記念はすごいレースだった。
シンザンに敵愾心を持つミハルカス(父・ヒンドスタン)の加賀武見騎手が、4コーナーを回ると、シンザンの前にミハルカスを入れながら、外へ外へと舵を取った。シンザンの松本騎手は、やむを得ず、大外のコースを取って、ミハルカスを抜こうとした。その瞬間、両馬の姿が、テレビ画面から消えた。余りに外側のコースを取ったために、観衆の影に隠れてしまったのだ。数秒後、両馬が再びテレビに映った。すると、シンザンが前に出ていた。あっという間の逆転劇だった。これが「伝説のレース」といわれる所以だ。

ライブを見た馬の中から、3頭を挙げると、シンボリルドルフ、エルコンドルパサー、タケシバオーとなろうか。

シンボリルドルフ(父・パーソロン)は、16戦13勝、3歳クラシック三冠レースの他に、有馬記念2回、天皇賞・春、ジャパンカップを制した。いずれも、先行馬をきっちりと測ったように差すという安定した勝ちぶりだった。5歳時にアメリカに遠征して負けた後、故障を発症して引退した。

エルコンドルパサー(父・キングマンボ)は、外国からの持ち込み馬だったために、出走できるレースが限られていて、3歳時に日本ダービーなどに出られなかった。しかし、3歳時にジャパンカップを制し、4歳になると、フランスに渡り、G1レースとG2レースに勝ち、最後の凱旋門賞では惜しくも2着になった。日本競馬界の鎖国的政策をあざ笑う活躍ぶりであった。生涯成績、13戦8勝。種牡馬になって、現在でも産駒が活躍している。

タケシバオー(父・チャイナロック)は名うてのオール・ラウンド・プレーヤーで、前回紹介した。生涯成績、29戦16勝。 (2010/1)


オール・ラウンド・プレーヤー

2010-01-07 07:18:35 | スポーツあれこれ
現代競馬は専門分化が進み、血統などから距離適性や芝・ダート適性を調べあげて、出走するレースを選ぶのが普通になった。

距離については、短距離・マイル・中距離・長距離と分け、そのどの区分のレースに出走させるかを選ぶ。また、芝・ダートについては、血統から判断して、どちらかを選ぶ。たまに、芝競馬で結果の出なかった馬をダート競馬で走らせてみたら、思わぬ良績を生んだというケースもある。それは、血統に潜む芝・ダート適性を見抜けていなかっただけなのかもしれない。

さて、一昔前、といっても20年か30年前の競馬は、現代ほど専門分化していなかった。どんな競馬でもこなす怪物がいた。

タケシバオーという馬がいた。父はチャイナロックという有名な種牡馬だったが、タケシバオーにはセレブリティーなところはなく、むしろ、雑草のような印象を与える馬だった。

2歳から3歳にかけて、良く走り、3歳クラシック競争にも出たが、そこでは勝てなかった。それから、タケシバオーの長い長い停滞が始まる。出走するレースでいつも2着になるので、「シルバー・コレクター」がタケシバオーのあだ名になった。

その後、ある時点で勝つと、以後はどのレースでも勝ち続けるようになった。勝ったレースがバラエティに富んでいた。1200mの英国フェアに勝つかと思うと、3200mの天皇賞にも勝ってしまう。65kgを負ったハンディキャップ競争にも勝ってしまう。ダート競馬にも勝ち、重馬場のレースも物ともしなかった。

タケシバオーは、どのような条件のレースでも結果を出す不世出の「オール・ラウンド・プレーヤー」であった。以後は、彼のようなオール・ラウンド・プレーヤーは絶えていない。

タケシバオーは日本国内で暴れまわった後、5歳時と6歳時に、アメリカに遠征したが結果を残せず、帰国後、調教中に転倒して、引退した。いかにも雑草馬らしい引き際だった。「走り、走り続けよ」という大江健三郎の小説のタイトルを連想するようなタケシバオーの競争人生だった。 (2010/1)

血統から推理する・競馬

2010-01-03 07:37:30 | スポーツあれこれ
競馬を推理する基軸はいろいろあり、過去のデータから推理する方法、過去のレースの記憶から推理する方法のほかに、血統から推理する方法もある。

競馬は血統のスポーツといわれる。父親の特徴や祖父の特徴を子が引き継いでいるのがわかると、競馬は一層楽しくなる。

サクラバクシンオー(父・サクラユタカオー)という牡馬がいた。短距離に滅法強く、スプリンターズステークス(GⅠ、1200m)を連覇する活躍をした後、種牡馬になった。そのサクラバクシンオーの産駒が例外なく短距離で走るのだ。不思議というほかない。

競馬には、芝コースを使う芝競馬とダートコースを使うダート競馬がある。イギリス、フランスなどヨーロッパの主流は芝競馬で、アメリカの主流はダート競馬だ。そして、芝競馬に適した血統とダート競馬に適した血統とがある。

例えば、フォーティナイナー(父・ミスタープロスペクター)という種牡馬の産駒はダート競馬で走る。なおかつ、フォーティナイナーの産駒は短距離向きだということがわかっている。すると、ダートの短距離レースでは、フォーティナイナーの産駒を狙うのが馬券戦術として適している。

サクラバクシンオーの産駒はどうかといえば、芝競馬でもダート競馬でも走るようだ。

すると、ダートの短距離レースでは、フォーティナイナーの産駒とサクラバクシンオーの産駒とに注目すればいい。フォーティナイナーもサクラバクシンオーも極めて個性的で優秀な種牡馬になった。フォーティナイナーは亡くなったが、サクラバクシンオーは種牡馬を続けている。

さて、血統にはさらに別の愉しみもある。

メジロアサマ(父・パーソロン)という馬がいた。血統からマイラー(1600m程度の距離を守備範囲とする馬)と見られていて、実際の競争成績も1600m-2000mで実績を挙げていた。ところが、ある時、GⅠレースの中では最も距離の長い天皇賞(3200m)に出走して、勝ってしまった。これに対して、競馬サークルは大騒ぎした。「マイラーが長距離レースに勝つとは!」 おそらく、何代も何代も前の先祖に長距離の得意な馬がいて、その血統が隔世で現われたのだろう。そういうこともある。

ところが、そのメジロアサマの仔のメジロティターンも3200mの天皇賞に優勝し、さらに、メジロティターンの仔のメジロマックィーンまでもが3200mの天皇賞に優勝してしまった。何と、三代続けて3200mの天皇賞に優勝するという記録を達成してしまった。すると、メジロアサマ-メジロティターン-メジロマックィーンという血統は名うての長距離馬のそれだったというほかない。

メジロアサマの代で血統の何かが呼び覚まされた。しかし、それは素人にはわからない。血統の神秘さを物語る逸話だ。 (2010/1)