(1)アジの釣法
再開した海釣りの第二弾として、「アジのビシ釣り」を選んだ。
アジは東北地方以南に広く分布する魚で、魚屋で一年中その姿を見るポピュラーな魚だ。
遊漁船でも人気の対象魚で、多くの釣り宿が遊漁船を出している。
アジの釣法は大きく分けて3つある。
その1。サビキ釣り。コマセ(寄せ餌)の下に5-10本のサビキ針(魚皮のような薄くて柔らかい皮を付けた針)を付ける釣法。
その2。ビシ釣り。行灯ビシにコマセと2-3本の針を付け、針には身餌(イカの小さな身を紅に染めたものがよく使われる)を付ける釣法。
行灯ビシとは、漢字の「心」を想像していただくと分かりやすい。左の「はね」の部分にコマセ籠(兼錘)をぶらさげ、中央の弓形の心棒の先に針を付ける。それが、右の点々だ。
その3。ライトタックル(LT)釣り。最近流行っている釣法で、ビシ釣りと同じく行灯ビシを使うらしいが、錘はごく軽い。身餌は青イソメ。川釣りのように、軽いタックルを振ってアジを誘うようだ。私はこの釣法を経験していない。
さて、今回のビシ釣りだが、その中にまた二通りの釣法がある。「棹ビシ」と「手ビシ」がそれだ。
「棹ビシ」は棹とリールで糸を取り込み、「手ビシ」は手で糸を手繰って取り込む。私は「手ビシ派」なのだが、これが思わぬ障害になるとはつゆ知らなかった。
(2)苦戦の出だし
今回お世話になったのは、横須賀・新安浦港の義和丸。
東京湾のアジ釣りの釣り場は、水深30-100メートルだが、当然、東京湾口などの深いところは糸を手繰るのが大変だ。その点、義和丸は近場の水深の浅い所(30メートルほど)を漁場にしているので、「手ビシ派」にはピッタリだ。
釣り宿に着いて様子を伺うと、なんと、「手ビシ」を禁止しているという。「手ビシ」をする人が少なくなった上に、「棹ビシ」の人と混じると、「オマツリ」(釣り人同士の糸や仕掛けが絡まってしまうこと)が生じやすいので、「手ビシ」を禁止したのだという。これには驚いた。
この日は平日で釣り人が少ないため、特別に許しを得て、「手ビシ」で釣ることにした。
朝7時半に河岸払いして、15分で釣り場に到着。猿島の傍で、遠くに、この前、「メバルの夜釣り」で馴染みになった、「SUMITOMO YOKOSUKA」が見晴らせる地点だ。
行灯ビシが海底に着いたら、釣り糸のフケ(遊び)を取り、3メートル見当糸を上げ、コマセを撒くために数回糸を引き、さらに、糸を1mほど上げてアジの当たりを待つ。これがアジ釣りの基本動作だ。
最初の一投からアジの「クイッ、クイッ」という当たりがあり、20cmの中アジが上がった。幸先よかった。が、その後がいけなかった。当たりのない状態が五投・六投と続いた。その時、船長の檄が飛んだ。「じっとしていたら、アジは寄ってこないよ!」
(3)水深40メートルから25メートルまで
船長のことばは短かったが、これを翻訳すると次のようになる:
「(コマセを撒かずに)じっとしていたら、アジは寄ってこないよ!(新しい釣り場に着いたら、まず、アジを寄せることを考えないと。釣るのはその後だよ。)」
確かに言うことはわかる。でも、それならそれで、最初から指示してくれてもよさそうなものだが。
釣り場に着いて船長の発したことばは:「ボー(開始の合図のラッパの音)。底から3メートル。」これだけだった。
以後釣り場を何ヶ所か変えた。水深は、40メートルから始まって、35メートル、30メートル、25メートルと変わった。
最もよく釣れたのは、水深30メートルと25メートルの釣り場だった。3本針に3尾掛かる「パーフェクト」もあり、2尾掛けも数回あった。
11時にコマセが底をついたところで納竿となり、数えたところ24尾の釣果だった。以前の勘を取り戻すまでには至ってないが、まずまずの釣果だ。型は皆20cm-25cmの「中アジ」だった。上に掲げた写真がそれである。
(4)アジを食べる
アジはポピュラーな魚なので、調理法も様々だ。
生食では、「たたき」や「なめろう」が有名だ。プロの板前は、「中アジ」をみごとに捌いて、「たたき」や「なめろう」を作る。しかし、素人では、「中アジ」を捌いて、十分な身肉を取ることが難しい。
アジは煮るのに適していない。これは、アジが水気の多い魚だからだろう。
一方、アジは焼くとうまい。ぜいご(尾の部分から伸びているとげのあるうろこ)を除き、尾びれと背びれに塩を振り、4尾まとめて串に打ち、網で焼く。こうすると、皮が網に触れないので、皮が付いたまた姿良くアジが焼ける。見ていると、水分と油がポタポタと垂れ落ちる。アジの水気が適度に抜けるため、アジは焼くとうまいのだとわかる。
4尾をまたたく間に平らげ、次の4尾をまた焼いて食べた。
街の食堂でアジのフライの揚げたて定食を食べると、ことのほかうまいのも同じ理屈だろう。
アジの干物がうまいのもこれで納得だ。次回は「アジの一夜干し」に挑戦してみよう。
(5)データ
今回の釣行のデータを記録しておく。
ビシ錘: 120号
枝糸 : 2号。60cm間隔で枝糸を3本出す。
針 : ムツ針10号。
料金:5500円。
(2008/11)