静聴雨読

歴史文化を読み解く

「モッタイナイ」精神・2

2010-02-19 08:58:43 | ユートピア探し
ケニアのワンガリ・マータイ女史は環境保護活動家として有名です。2004年にはノーベル平和賞を受賞しました。そのマータイさんが日本語の「もったいない」に注目しました。「もったいない」と思う心こそ、環境保護の原点だというわけです。

マータイさんは、講演の際には、いつも、聴衆に向かって、「さあ、一緒に、『モッタイナイ』と唱和しましょう。」と呼びかけるそうですが、こうなると、やや新興宗教に似た雰囲気を醸し出しますが。

さて、マータイさんが「もったいない」に着目したのは、このことばが、Reduce(消費削減) 、Reusu(再使用)、 Recycle(資源循環)、 Repair(修繕)という4つの「R」を表わしているからだそうです。なるほど、その通りで、不必要に、物を作り過ぎない、サービスを提供し過ぎない、消費し過ぎない、直せるものは直して使う、使える物は再使用する、物を廃棄する場合にはリサイクルに回す、という考え方はまさに「もったいない」精神そのものです。

鳩山内閣の「新成長戦略」に実は「再生戦略」が隠されている、と以前指摘しましたが、その「再生戦略」の中核を成すのが、Reusu(再使用)、 Recycle(資源循環)、 Repair(修繕)という3つの「R」だとも述べました。低成長下にあっては、既にあるものを最大限有効に活用する「再生」が必須になります。これは、まさに、マータイさんの呼びかけにも呼応するものです。

ところで、麻生内閣が始めて、鳩山内閣も継承することにしたという「エコポイント」制度なるものがあります。省エネルギーの度合いの高い電気製品・自動車・家などを購入したり買い替えたりすると、特典がつくというものです。

だまされそうですが、この制度は「エコポイント」と名がつくものの、消費を刺激するだけの政策です。電気製品を例にとると、大きな薄型テレビや大きな冷蔵庫ほど「エコポイント」が高く、そちらに消費が向かうようなエレクトロニクス産業振興政策にほかなりません。また、住宅を例にとると、国全体で見ると、わが国の空き家率は16%もあります。それを有効活用することに手を付けず、「エコポイント」を付けて新規住宅の着工を促進するのは、住宅産業振興政策そのものです。

マータイさんが「エコポイント」制度を聞いたら、目を丸くすることでしょう。「Reduce(消費削減)はどこに行ったの?」

・・・以上は、2010年初頭の四つ目の「初夢」でした。 (終わる。2010/2)

「モッタイナイ」精神・1

2010-02-17 06:50:28 | ユートピア探し
先日のテレビの報道で、わが国の空き家が急激に増えていることが紹介されていました。

空き家率16%。6軒に1軒が空き家だそうです。
思い当たることがあります。
母は自宅から特別養護老人ホームに移りましたが、自宅は置いたままです。
住宅地には、相続の決まらない旧家が数多く残っています。
大企業は空室の多い独身寮をかかえています。
地方都市の「シャッター通り」には、閉じた商店がそのまま残っています。
統廃合した小学校の一部は廃屋のまま放置されています。

その一方で、職を失った「非正規労働者」は、住むところもなく、役所の斡旋する臨時宿舎に身を寄せています。

何とも、「住のアンバランス」が目立ちます。もったいないことです。

これらの空き家を再利用する道はないでしょうか? 空き家率を16%から10%に減らせば、400万戸の新規住宅ができることになります。もちろん、権利問題がたちはだかることは目に見えていますが、それはひとまず措いておいて、大規模な「住居のリサイクル」のシステムを考えてみるべきだと近頃感じています。  (2010/2)


「成長」から「再生」へ・4

2010-02-11 07:58:50 | ユートピア探し
「成長」から「再生」へ。鳩山内閣が策定した「新成長戦略」には、隠されたメッセージがあるのだと私は思います。

さて、「3R」ということばがあります。
Recycle(循環)、Reuse(再使用)、Reform(修繕)のことで、「再生」の中核となるキーワードです。いずれも、成長神話の全盛時代には見向きもされなかった概念です。しかし、環境・エネルギー・医療・介護・観光・地域活性化などを考えるにあたっては、「3R」が重要な役割を担うことになります。

森林の間伐の例をとれば、現在、森林は荒廃にさらされているそうです。間伐をしていないからです。間伐をしないと、森林全体のCo2吸収量は極端に減ってしまうそうです。適当に人手をかけて間伐し、そこから生じた間伐材を有効活用すれば、一石数鳥の効果が生み出せます。河川の堰はコンクリートで作るのが普通ですが、間伐材でも間に合うのではないか、という研究が進められているそうです。これなどは、環境対策(Co2の削減)、雇用の創出、脱コンクリートの一石三鳥が可能な例です。

また、大量に発生する「まだ使える電化製品」を修繕し、購買力のないアジアの人々に供与する事業は考えられないでしょうか? 退役した技術者や技能保持者のボランティア精神に依存すれば、このような物の移転・伝承はスムーズに実現できるように思います。環境対策(使い捨ての撲滅)、生きがいの創出、アジア諸国との共生、というやはり一石三鳥が期待できます。

物づくりの匠に「マイスター」の称号を与えることがあります。
同じように、再生の匠に「Rマイスター」を与えることが考えられないでしょうか?
「森林再生マイスター」「修繕マイスター」や「リサイクル企画マイスター」などの称号は、広く受け入れられるように思います。また、「Rマイスター」にふさわしい人材を、現役世代のみならず、退役世代やボランティア志望の人たちから発掘する助けにもなります。

このように、「再生戦略」はなかなか見捨てがたい魅力があるように思います。
成長を捨てて、再生に走るという考え方に賛同する人は現在ではごくごく少数派です。しかし、50年後、100年後には、このような考え方が多数派になっていることを疑いません。

・・・以上は、2010年初頭の二つ目の「初夢」でした。 (終わる。2010/2)

「成長」から「再生」へ・3

2010-02-09 07:16:07 | ユートピア探し
ここからは、少し夢想が入り込みます。

低成長期においては、華々しく画期的な成長戦略がそもそも無理なのかもしれません。これまでのように、繊維産業、重化学産業、自動車産業、電機産業、情報産業などが牽引する経済成長は、韓国・台湾・中国・インドなどが同様の成長パターンで成長を目指し始めた現在では、もはや期待できません。

その意味で、鳩山内閣の「新成長戦略」が、環境・エネルギー・医療・介護・観光・地域活性化などの分野に成長の可能性を見ていることは、納得できます。環境・エネルギー・医療などの分野は、世界的に見ても、わが国の技術が優位にあります。環境・エネルギーはCo2の削減などのエコロジーにも貢献します。医療・介護などの分野は、高福祉の目的に適いますし、さらに、アジア諸国との経済協力・共生にも役立ちます。観光・地域活性化などの分野は、埋もれた資源の活用という意味があります。いずれも、公共事業と市場原理主義という「二つの呪縛」から脱するという鳩山内閣の政治理念を体現しています。

しかし、これは、本当に「成長」戦略でしょうか? 環境・エネルギー・医療・介護・観光・地域活性化のキーワードから想起されるのは、「成長」戦略というよりも、むしろ、「再生」戦略なのではないか、というのが私の感想です。地球の再生(環境・エネルギー)、人間の尊厳の再生(医療・介護)、地域・国土の再生(観光・地域活性化)などは、わが国の喫緊の課題です。鳩山首相は施政方針演説で「いのちを守りたい。」とのべましたが、その意味は、あらゆる側面で、疲弊し痛んだものを回復させたい、ということでしょう。 (2010/2)


「成長」から「再生」へ・2

2010-02-07 08:07:40 | ユートピア探し
すでに低成長期に入り、少子高齢化の時代に突入したわが国は、中国の例に倣うわけにはいきません。「新成長戦略」に、わが国の実情に見合った戦略が求められます。

鳩山内閣が昨年12月30日に閣議決定した「新成長戦略」を見てみます。印刷したら、34ページもありました。

これまでの自民・公明連立政権が、公共事業と市場原理主義という「二つの呪縛」から逃れられなかった、とやんわり批判した上で、鳩山内閣は新たな需要創造に取り組むと高らかに宣言しています。その需要とは、環境・健康・観光などとともにアジアとの共生により生ずるものだと謳っています。

その骨子は次の3部分に分かれる6点だそうです:

Ⅰ 日本の強みを発揮する産業の強化
1 グリーン・イノベーション(環境・エネルギー分野)
2 ライフ・イノベーション(医療・介護分野)

Ⅱ 新たなフロンティアの開拓
3 アジア経済戦略(製品だけでなく、システムやノウハウの提供を含む)
4 観光立国・地域活性化(外国からの観光客の誘致拡大と地域の物産の振興)

Ⅲ 成長を支えるプラットフォーム
5 科学・技術立国
6 雇用・人材戦略

このような6本柱で、今後20年間にわたって着実な成長を目指すということです。これはこれで結構ですが、20年間の成長戦略というにはやや弱いと思います。それは・・・ (2010/2)

「成長」から「再生」へ・1

2010-01-29 00:08:44 | ユートピア探し
昨年の衆議院議員選挙に際して民主党が発表したマニフェストには、成長戦略が欠けていると、ジャーナリズムが一斉に批判しました。それを受けて、民主党を中心とする政権は、菅直人副総理を中心にして、どろなわ式に、成長戦略を策定しました。昨年末のことです。

その骨子は次の6点だそうです:
1 グリーン・イノベーション
2 ライフ・イノベーション
3 アジア経済戦略
4 観光立国・地域活性化
5 科学・技術立国
6 雇用・人材戦略

個々の項目について論評することは控えますが、驚いたことに、この成長戦略に接してジャーナリズムの批判がピタっと止まりました。野党の自民党からも、表立った批判は聞かれません。わが国の人びとは、よほど、成長戦略に飢えているようです。

さて、2008年秋の「リーマン・ショック」に端を発する世界的な経済沈下で、どの国も著しい経済停滞に見舞われましたが、そこから、いち早く回復の兆しを見せたのが中国です。最近の中国の経済統計部門の発表によると、2009年の国民総生産(GDP)の伸びは8%を超えたそうです。これは、中国政府による大規模な景気刺激策が功を奏した結果といわれています。

経済成長の真っ只中にある中国は、特に内陸部の底上げのためには、当分の間、この程度の経済成長がどうしても必要なようです。わが国の1960年代から1970年代にかけての様相に類似しています。

ひるがえって、わが国は高度成長期を経過し、すでに「安定成長期」という名の低成長期に入っています。また、人口構造も劇的に変化し、少子高齢化の時代に突入しました。このような環境にあって、どのような成長戦略を描くか、が今問われているのだと思います。 (2010/1)


第三の極・3

2010-01-27 00:39:43 | ユートピア探し
民主党と自民党の二大政党に対抗する第三の極・「国民生活党」ができた暁には、国会はどうなるでしょうか?

以前、国会を改組して、外交・安全保障・行財政制度・司法制度などを審議する国家議会(定数200、解散あり、完全小選挙区制)と教育・福祉・産業・インフラ・環境などを審議する国民議会(定数200、解散なし、完全比例代表制)とに役割を分担させる提案をしました。

この中で、民主党と自民党の二大政党と第三の極・「国民生活党」の議席配分をシミュレートしてみます。

国家議会:定数200、民主党110、自民党90
国民議会:定数200、民主党70、自民党50、「国民生活党」80

国家議会は天下・国家を論ずる議会ですから、完全小選挙区制の下では、民主党と自民党の二大政党が圧倒的に強くなります。小沢一郎が二大政党制に賭けた夢はここに実現します。

一方、国民議会は国民生活をもっぱら論ずる議会ですから、完全比例代表制の下では、民主党と自民党の二大政党のほかに、「国民生活党」の活躍する余地が十分にあります。国家議会では民主党に投票する人が国民議会では「国民生活党」に投票するパターンが頻出するでしょう。その結果、国民議会で「国民生活党」が第一党になることも夢ではありません。

上記の議席シミュレーションを見てみましょう。
国家議会と国民議会とを合わせて、定数400、民主党180、自民党140、「国民生活党」80という議席配分になり、第一党の民主党でさえ過半数を確保できないことになります。すると、民主党は「国民生活党」と連立政権を組むことを模索するでしょう。その際の「国民生活党」は、過去に、自民党と連立を組んだ社会党・公明党や民主党と連立を組んだ社民党・国民新党よりもはるかに強力な発言権を連立政権内で確保できるでしょう。

ここに、真の意味での「第三の極」の存在意義が出てきます。「第三の極」は二大政党制に対する「けん制のくさび」だと言っていいでしょう。思い起こすと、衆議院で自民党が圧倒的多数を占め、参議院で自民党が少数派になった際、「このような『ねじれ現象』が生じては、国政の遂行に支障を来たす。」という議論がありましたが、二大政党と「第三の極」とが鼎立する国会では、「ねじれ現象」こそ常態なのだということがわかります。その中で、どのような政権の舵取りをするかが政権与党に問われることになります。

・・・以上は、2010年初頭の「初夢」でした。 (終わる。2010/1)


第三の極・2

2010-01-25 09:06:51 | ユートピア探し
端的にいえば、「二大政党制」が必ずしも最良の政治制度であるとはいえないのです。「政治には金がかかる」と思い込んでいる政党が二つあって、時によって、政権交代しても、その金権体質は何も変わりありません。金権体質から自由になった第三の政党が望まれる所以です。

現在、民主党と自民党の二大政党の他に、多くの中小政党があります。
民主党と連立政権を組む社民党と国民新党。
自民党と歩調を合わせる改革クラブと平沼グループ。
民主党とも自民党とも距離を置く公明党・共産党・みんなの党、など。

これらの党が「第三の極」に成り得るでしょうか?各政党の「党是」を見てみます。
社民党:「平和と護憲」
国民新党:「弱者救済」
公明党:「平和と福祉」
共産党:「平和と民主主義」
改革クラブと平沼グループ:自民党補完勢力というだけで、はっきりした「党是」はわからない。

改革クラブと平沼グループを除けば、社民党・国民新党・公明党・共産党の「党是」は極めて似通っていることがわかります。一方で、一つ一つの政党が余りに小さすぎます。社民党・国民新党・公明党・共産党は共通の政治目標を掲げながら、なぜ、それぞれが弱小政党に甘んじているのでしょうか?

聞こえてくる答えは「それは、イデオロギーが違うからさ。」というものです。

確かに、例えば、公明党と共産党は信ずるイデオロギーという点では「火と油」です。この両党は、「年収300万円世帯」を主たる支持基盤とする点が共通しています。経済格差の是正、セーフティー・ネットの拡充、護憲・平和、など、実現したい政策目標の多くも一致します。しかし、それぞれの党だけでは、獲得できる国会議席は限られます。

この制約を打破するために、公明党と共産党が合併することを提案したいと思います。これは、半分冗談ですが、半分は本気です。「年収300万円世帯」の支持基盤の利害を代表する政党として、あり得る選択ではないでしょうか? 唯一の条件は、イデオロギー論争を封印することです。  

公明党と共産党が合併して、「公明・共産党」ができ、「年収300万円世帯」の支持基盤の利害を代表する政党となったとします。社民党と国民新党もこれに参加することができるかもしれません。「公明・共産・社民・国民新党」となれば、隠然たる勢力を国会に張ることができます。長すぎる党名は、短く「国民生活党」とでもすれば、党の目指すところを国民に訴えることができます。
(2010/1)


第三の極・1

2010-01-23 08:33:53 | ユートピア探し
昨年はわが国に「政権交代」が実現し、国民はちょっぴりわが国の将来に希望を持ちました。しかし、このところ、また、国民の間に閉塞感が生じつつあります。新しく政権党になった民主党の代表と幹事長に、昔ながらの「政治と金」疑惑が噴出して、一時の政権与党・自民党と同じではないか、という疑念が生じています。

実は、「政権交代」の前の三代の総理大臣(安倍晋三、福田赳夫、麻生太郎)と現在の民主党の代表(鳩山由紀夫)と幹事長(小沢一郎)には共通点があります。世襲政治家であること、と、「政治には金がかかる」と思い込んでいることです。これでは、抜本的な政治改革など期待できない、と多くの人が思っても不思議ではありません。

小沢一郎は、「政権交代可能な二大政党制」を自らの政治信条に掲げ、その目的のため、自民党を割って「反自民連立政権」を作りました。そして、衆議院に小選挙区制を導入する道筋をつけました。小沢の執念が実って、民主党に政権が変わりました。しかし、早くも、「政権交代しても変わらない二大政党制」の影が忍び寄ってきています。

小沢一郎が金科玉条のように標榜してきた「二大政党制」が最良の政治制度なのかどうか、検証する必要が出てきました。 (2010/1)


歴史的和解(200年後のユートピア)

2006-03-21 08:54:26 | ユートピア探し
歴史的和解(200年後のユートピア) 

ここ数年の年賀状はユートピア探しがテーマです。以下の文章は2005年の年賀状に記したものです。 
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永らく世界の懸案であったキリスト教社会とイスラム社会との間の対立・紛争が、2200年代に入り、ようやく解消の兆しを見せ始めた。強大国アメリカ合衆国の一国主義に翳りが見えるようになったのがその一因で、そのまた元を質すと、石油資源の枯渇化と代替エネルギーの実用化が影響しているらしい。
アメリカがイスラム社会に対して不寛容であったのは、中東の石油資源確保のためであると噂されていたが、水素を原料とする代替エネルギーが比較的容易にだれでも開発できれば、もはや石油・中東・イスラム社会を囲い込む必要はない。なんと判りやすい計算だろう!
キリスト教社会とイスラム社会との間の和解に積極的役割を担ったのは、中世紀以来の深刻な「文明の衝突」を経験した、ポルトガル・スペイン・ハンガリー・トルコなどである。歴史は繰り返した。
今や、コルドバのメスキータやイスタンブールのトプカピ宮殿が世界の人々の訪れる「聖地」である。
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                                                (2006年3月)