静聴雨読

歴史文化を読み解く

ヨーロッパ:オペラと将棋の旅 5

2014-08-13 07:15:11 | 異文化紀行

 

(5)『さまよえるオランダ人』

ワーグナー『さまよえるオランダ人』は、全3幕を一挙に上演した。2時間10分。第1幕と第3幕は普通の舞台装置だったが、第2幕は、何と、現代のフィットネス・ジム。ダラント船長の娘ゼンタもトレーニング・ウェアで登場するのだが、恋人エリックからマントをかぶせられる場面では、何とも様にならない。第3幕で登場する時には、トレーニング・ウェアは脱いでいたが。

第2幕をフィットネス・ジムに設定した意味は? 効果は? という疑問が残る。

ほかには、序曲の長いことと「水夫の合唱」に力強さが欠けることが気になった。

ここで、ワーグナーの楽劇全10作を比較してみると、私の好みは『ニュルンベルクのマイスタージンガー』『トリスタンとイゾルデ』『タンホイザー』の順になる。

『マイスタージンガー』は小市民の哀しみを描き出して秀逸だ。第3幕でハンス・ザックスの家に泊まっていた騎士ワルターが、「昨晩、こんな歌を思いつきました」と歌い出す歌は見事で、ハンス・ザックスはその歌の中に、従来の規約にとらわれない新しい歌唱法を見出す。「いいねえ、そのまま、今日の歌試験で歌ってみたら」とワルターに勧める。ハンス・ザックスはワルターの歌の中に、改革派の市民像を見出しているのだ。

『トリスタンとイゾルデ』は第2幕から第3幕にかけてのトリスタンとイゾルデのアリアが見事だ。この楽劇では、合唱を排して、二人のアリアを徹底して聴かせることに集中している。

『タンホイザー』は官能と救済というワーグナー楽劇の主題を最もわかりやすく表現している。序曲が秀逸だ。

(2014-08-13)



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