静聴雨読

歴史文化を読み解く

アウシュビッツについて・2

2012-11-17 07:00:23 | 異文化紀行

 

(2)心理分析

「アウシュビッツについては、おびただしい記録が発表されています。」

「『夜と霧』という本を読んだことがあるわ。」

「オーストリアの精神分析学者フランクルが自らの強制収容所体験を綴ったものですね。」

「あの中で、アウシュビッツに連れてこられた人たちが、初めの反発・憤りから次第に収容所に馴化させられていく過程がヴィヴィッドに描かれていて、痛々しく感じたわ。」

「そう、精神分析学者らしい記述です。」

 

「同じような記述をどこかで読んだ覚えがあるわ。そう、E・キューブラー・ロスの『死ぬ瞬間』。その中で、彼女は、死を前にした人間の態度を分析して、7つほどの段階を踏むと言っていたわ。」

「今手元にその本がないので、正確ではありませんが、自分が死ぬことへの怒りや反発が初期にあり、やがて、死の受容にまで遷移する過程は、フランクルの描写したアウシュビッツの囚人のそれに照応していますね。」  (2012/11)

 


アウシュビッツについて・1

2012-11-14 07:33:08 | 異文化紀行

 

(1)ユダヤ人をめぐって

 「ポーランドに行って、アウシュビッツに行かなかったの?」

「行きました。」

「あなたのブログを読んでも、ワルシャワとクラクフのことばかりで、アウシュビッツに触れた記事は見当たらなかったわね。」

「はい、少し訳がありまして。」

「もったいぶらないで、その訳を教えて。」

 

「『ポーランドつれづれ』に書いたのですが、ポーランドで出会ったユダヤ人やユダヤ人社会が『ユダヤ人はケチで強欲だ』という俗説を思い出させてしまって、ユダヤ人について書くのが億劫になったのです。」

「でも、そのこととアウシュビッツとはまったく違う次元の話じゃないの。」

「確かに。」

「アウシュビッツはホロコースト(大量殺戮)を被ったユダヤ人を記憶するモニュメントでしょ。」

「はい。」

 

「とにかく、聞かせて。」

「アウシュビッツはクラクフから車で1時間強のところにあります。ツアーのコーチが出ています。それを利用したのですが、アウシュビッツに近づくにつれて、気持が重くなっていきました。道行く犬連れの男性を見るとゲシュタポの警備兵とバーナード犬に見え、石炭を積んだ貨物車を見ると収容所に運ばれて来たユダヤ人の群れを想起するというように、早くも現実と過去の出来事が重なり合うような妄想に捕われてしまいました。大変重苦しい1時間でした。」

「あなたの夢想癖が現われてきたのね。」  (2012/11)

 


音楽紀行

2012-11-09 07:25:12 | 音楽の慰め

 

「今度、ドイツに行ってきます。」

「この前、ポーランドに行ったばかりでしょ。」

「ポーランドは将棋の旅。今回のドイツは音楽を聴く旅です。ベルリン・ドイツ・オペラでワーグナーの楽劇を4本、バーデンバーデンでベルリン・フィルのイースター・フェスティバルを聴いてくるつもりです。」

「ずいぶん欲張りなプランね。」

「はい、今回は思い切り贅沢な旅程を組みました。」

 

「目玉は?」

「3年前のバイロイト音楽祭で、ワーグナーの『ニーベルングの指輪』四部作と『パルジファル』を聴きました。それで、残りの楽劇も聴きたいと思っていたのですが、ベルリン・ドイツ・オペラで『タンホイザー』『ローエングリン』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』『トリスタンとイゾルデ』を4夜連続で上演するのを発見して、行こう!と決めました。」

 

「バーデンバーデンは? 南部の保養地でしょ?」

「ええ。ヘルベルト・フォン・カラヤンの時代には、ベルリン・フィルはザルツブルグでイースター・フェスティバルを開催していました。チケットは高額でプレミア・チケット化していて、誰でも手に入るものではありませんでした。現在は、音楽監督がサイモン・ラトルになり、バーデンバーデンでイースター・フェスティバルを開催するようになったようです。オペラ、オーケストラ・コンサート、室内楽コンサートなど、盛り沢山なプログラムが用意されています。こちらは、たまたま見つけ、日程も許すので、行ってみることにしました。オペラとオーケストラ・コンサート以外の室内楽などは安い価格で楽しむことができます。」

 

「でも、あなた、そんなにクラシック音楽が好きだった?」

「いいえ。LPレコードをよく聴いたのは20歳代、コンサートに通ったのが30歳代-40歳代でした。その後はLPもCDも聴かなくなり、コンサート通いもしなくなりました。」

「それがまたなぜ?」

「仕事を退役して、自由に旅行ができるようになったのが大きいですね。私の場合、ヨーロッパ旅行すなわち「音楽と絵画の鑑賞の旅」ですから。」

「そういえば、「プラハの春」というコラムがあったわね。あれも、音楽と絵に関する記事が多かったのを思い出したわ。」

「はい、それに建築を加えれば、私の見たいもの・聴きたいものがすべて表わせます。」

 

「それで、今回も、旅から帰って、コラムを発表するつもりなんでしょう。」

「はい、『ドイツ:早春の旅』といタイトルを考えました。」

「まったく、あなたときたら。旅をしてコラムを書くのだか、コラムを書くために旅をするのだか。」

「いいポイントをついていますね。私もどちらかわからなくなりました。」

「土産話を期待していますよ。」 (2012/11)


ブックレット

2012-11-06 07:46:31 | Weblog

 

「いつもブックレットを送っていただき、ありがとう。でも、これは手間がかかるのじゃないの?」

「いいえ、元のブログがありますから、ブックレットに仕立てるのに余り手間がかからないのですよ。文章はほとんど手直ししていません。」

「それにしても、立派な装丁で、金と手間がかかっているように見えるけれども。」

「いえいえ、手元のプリンターでできる範囲で仕上げています。また、製本のホッチキス止めの都合で、16-20ページに抑えています。」

 

「もし、君がブックレットを作るのを「義務」だと感じ、義務を遂行するのに大変な手間をかけているのだったら、一層、ブックレットを作るの止めてしまったら? そう思うなあ。君の書くエッセイを読みたい時には、ブログ「晴釣雨読」にアクセスすればいいわけだし、まとまった文章を読みたい時には、君が定期的に発行するという私家版文集をひも解けばいいのじゃないかなあ。」

「まず、第一に、私にとって、ブックレットを作るのは「義務」ではなく、「趣味」の一つです。編集・印刷・製本のすべての過程が楽しくてしょうがないのです。第二に、私より上の世代では、PCに馴染まない人もいて、そのような人に読んでもらいたいのです。そのような人は、逆に、私家版文集の分厚さに怖気をふるう人も少なくありません。この程度の厚さなら、気軽に手にとってもらえるのではないかと考えました。また、年賀状の代役にも使っています。」

 

「ところで、ずいぶん文字が大きいと思うのだが。」

「MS明朝の12Pです。単行本の9Pに比べて確かに大きいです。これも、私より上の世代に読んでいただきたいために、文字を大きくしました。」

 

「読みやすくするなら、写真をふんだんに挟んだらいいのに。」

「文章一本で読者を惹きつけたい、というのが私の願いです。やがて、筆力が衰え始めたら、写真に頼るようになるかもしれませんが。」 (2012/11)


LPレコード

2012-11-03 07:24:56 | 音楽の慰め

 

「先輩、折角名古屋までいらしたのなら、わが家に立ち寄ってください。LPレコードを聴いていただきたいです。」

「わかりました。」

「昔から買い溜めたクラシック音楽のLPレコードがあるんですが、レイカのレコードクリーナーとライラのスタイラスクリーナーを使って清掃したら、見違えるほどきれいな音が甦ったのですよ。」

「それは楽しみです。」

 

「何を聴かせましょうか?」

「オーディオの試聴には、室内楽とヴォーカルを聴くのがいいと思います。私の家では、シューベルト『アルペジョーネ・ソナタ』とマーラー『子どもの不思議な角笛』で試聴しています。」

「同じものはないので、モーツァルト『フルート四重奏曲』をまず聴きましょうか?」

「いいですね。」

 

「ずいぶん、まろやかな音が出ますね。」

「このタンノイのスピーカーは最近入れました。これは、気に入りました。」

「アンプのラックス507sは、見たところ、前面パネルのデザインは私のラックスのアンプと似ています。」

「これもずいぶん高かったのですが、思い切って買いました。」

「いいアンプは20年持ちますよ。」

 

「ヴォーカルを何か聴かせてください。」

「ディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウの『冬の旅』があります。モノーラルですが。」

「いいですね。」

「ピアノはジェラルド・ムーア。」

「いいですね。まったく、無理なく、フィッシャー・ディースカウについていきますね。ただ、モノーラルらしく、音のヴォリューム感が今一つと感じます。」

 

「次回には、私のお皿を持参しましょう。それで、オーディオ・システムの実力を測定してみたらいかがでしょう。」

「怖いようでもあり、楽しみでもありますね。」

「私のオーディオ・システムは現在休止中ですが、再稼動したら、是非うちにも聴きにいらしてください。」  (2012/10)