「今度、ドイツに行ってきます。」
「この前、ポーランドに行ったばかりでしょ。」
「ポーランドは将棋の旅。今回のドイツは音楽を聴く旅です。ベルリン・ドイツ・オペラでワーグナーの楽劇を4本、バーデンバーデンでベルリン・フィルのイースター・フェスティバルを聴いてくるつもりです。」
「ずいぶん欲張りなプランね。」
「はい、今回は思い切り贅沢な旅程を組みました。」
「目玉は?」
「3年前のバイロイト音楽祭で、ワーグナーの『ニーベルングの指輪』四部作と『パルジファル』を聴きました。それで、残りの楽劇も聴きたいと思っていたのですが、ベルリン・ドイツ・オペラで『タンホイザー』『ローエングリン』『ニュルンベルクのマイスタージンガー』『トリスタンとイゾルデ』を4夜連続で上演するのを発見して、行こう!と決めました。」
「バーデンバーデンは? 南部の保養地でしょ?」
「ええ。ヘルベルト・フォン・カラヤンの時代には、ベルリン・フィルはザルツブルグでイースター・フェスティバルを開催していました。チケットは高額でプレミア・チケット化していて、誰でも手に入るものではありませんでした。現在は、音楽監督がサイモン・ラトルになり、バーデンバーデンでイースター・フェスティバルを開催するようになったようです。オペラ、オーケストラ・コンサート、室内楽コンサートなど、盛り沢山なプログラムが用意されています。こちらは、たまたま見つけ、日程も許すので、行ってみることにしました。オペラとオーケストラ・コンサート以外の室内楽などは安い価格で楽しむことができます。」
「でも、あなた、そんなにクラシック音楽が好きだった?」
「いいえ。LPレコードをよく聴いたのは20歳代、コンサートに通ったのが30歳代-40歳代でした。その後はLPもCDも聴かなくなり、コンサート通いもしなくなりました。」
「それがまたなぜ?」
「仕事を退役して、自由に旅行ができるようになったのが大きいですね。私の場合、ヨーロッパ旅行すなわち「音楽と絵画の鑑賞の旅」ですから。」
「そういえば、「プラハの春」というコラムがあったわね。あれも、音楽と絵に関する記事が多かったのを思い出したわ。」
「はい、それに建築を加えれば、私の見たいもの・聴きたいものがすべて表わせます。」
「それで、今回も、旅から帰って、コラムを発表するつもりなんでしょう。」
「はい、『ドイツ:早春の旅』といタイトルを考えました。」
「まったく、あなたときたら。旅をしてコラムを書くのだか、コラムを書くために旅をするのだか。」
「いいポイントをついていますね。私もどちらかわからなくなりました。」
「土産話を期待していますよ。」 (2012/11)