静聴雨読

歴史文化を読み解く

二度目のリアル古書店・5

2011-03-26 07:36:13 | BIBLOSの本棚
(5)古書とお客様

古書店としては、古書の用意の仕方に反省すべき点を見つけました。それは、小さな単位の「かたまり」を作るべきだ、ということです。同じジャンル、同じ判型、同じ叢書、などを集めて陳列する、という工夫をすべきなのです。それが、お客様に訴求するのに役立つのです。

新刊書店での古書フェアでは、陳列するスペースは限られています。今回は幅90cm の棚1列ですから、その中でいかにお客様の目を引くか、が勝負です。その点、修業が足りない、と思わざるを得ませんでした。 

ある日、書棚の整理をお手伝いしていたら、年配のご婦人から声をかけられました。

「この本、定価が460円だったものに800円の値札がついているけれど、本当かしら?」
「はい、その本は絶版になっていますが、今でも根強い人気があります。その値札で間違いないと思います。」
「そう。ずーっと探していたのだけれど、なかなか見つからなかったのよ。」
そういって、ご婦人は会計に向かいました。

絶版、人気作家、新刊書店、年配のご婦人・・・。

そうか、古書とお客様との出会いは、ここらあたりに秘訣があるのではないか。このようなお客様を見出していくべきなのか。大いに参考になる体験でした。 (2011/3)

二度目のリアル古書店・4

2011-03-24 07:34:01 | BIBLOSの本棚

(4)反省すべき点

思うような実績を残せず、折角機会を与えていただいた「スーパー源氏」と三省堂書店に対して申し訳ない気持を抱きました。

今回、何が悪かったのか?
事前の企画とマーケティングが不足していた、という点に尽きます。反省の意を込めて、思いつく点を列挙してみます;

1 客筋をつかめていなかった。文化人・富裕層を主な客筋と想定しましたが、むしろ、もっと広い客筋が現実だったようです。

2 お店の特徴を十分につかんでいなかった。私鉄沿線の新刊書店なので、主婦・子ども向けのピンクっぽい店構えは承知していましたが、それに見合うような古書はまったく用意できませんでした。

3 過去この店で実施された「古書フェア」での売れ筋などを参考にする努力を怠った。

4 「BIBLOSの本棚」は芸術芸能系の古書を用意しましたが、隣りのお店は歴史文化系と文庫本を出品していました。二店のシナジー(相乗)効果はまったく発揮できませんでした。

新刊書店で古書フェアを開催するには、場所を提供する書店(三省堂書店)と古書を出品する古書店(BIBLOSの本棚)と企画を担当する「スーパー源氏」が三位一体で事前の企画とマーケティングを行うべきでした。それには時間が足りませんでした。 
(2011/3)

個人誌を作りました

2011-03-23 07:37:17 | Weblog

個人誌を作りました。

タイトル: 歴史文化を読み解く 第15集
[Ozekia のブログから 2007/5 – 2011/3]

目  次:
Ⅰ 青春の映画    フランソワ・トリュフォー   1
Ⅱ Webブログ    震災記             7
Ⅲ 私の本棚     岩波新書・黄版の魅力  17
(表紙写真)「マーガレット」

編集の途中で東日本大震災が勃発したため、一部コラムを差し替えて、「震災記」を載せました。       (2011/3)

二度目のリアル古書店・3

2011-03-22 07:32:09 | BIBLOSの本棚
(3)ほろ苦い実績

会期半ばになって、軌道修正に踏み切りました。
まず、新たに、比較的軽めのコンテンツで、安めのものを追加投入しました。
次に、高額商品の値札の付け替えも試みました。

その後の推移を見守りましたが、思うような改善を見出せないまま、会期が終了しました。

以下、昨年夏のフェアとの比較をしてみましょう。

出品数:ダンボール14箱(昨年夏は9箱)

判型:単行本のみ(昨年夏は文庫・新書のみ)

売れ筋:(1)詩とメルヒェン、(2)映画、(3)演劇、(4)音楽。昨年夏振るわなかった「詩とメルヒェン」が健闘しました。

販売成績:今回売上額は昨年夏並みでした。会期が2ヶ月(昨年夏は1ヶ月)だったことを考えると、物足りない成績です。

返品率:10/14(昨年夏は4/9)。この数字を見ても今回の苦戦が跡付けられます。
(2011/3) 


脂恐怖症

2011-03-03 07:12:44 | Weblog

私は、小学校の給食でいい思いをしたことがない世代に属する。昼食時は本当に憂鬱な時間だった。食べて旨いと思う食事に当たったことがほとんどない。コッペパン、脱脂粉乳、クジラの竜田揚げ、とんかつ、などなど。ほとんどが喉を通らなかった。

コッペパンは味がなく、脱脂粉乳は鼻をつき、クジラの竜田揚げの油がやはり鼻をつき、とんかつという名の「豚の脂かつ」に舌が怯えた。この小学校の給食で「脂恐怖症」が形成されたことは間違いない。

その後、長い間、とんかつを食べる習慣はなかった。脂身の少ないヒレ肉を使った「ヒレかつ」を知るまでは。今でも、たまに、すなわち、年に1-2回は「ヒレかつ」を食べることはあるが、「とんかつ」、すなわち、「ロースかつ」は決して食べない。

焼肉でも同様で、豚の三枚肉を焼くもの(サムギョプサルだったか、正しい名前は忘れた)には手を出さない。あれのどこが旨いのだろう。

このように、「脂恐怖症」から脱出できないでいるのだが、いつの間にか、そういう私の体に脂がまとわりつき、医師から「高脂血症」というありがたくない診断を下される始末だ。大学卒業時に53kgのガリガリの体だったものが、今では、68kg。その原因は、まぐろのトロや天ぷら・揚げ物などの過食にあることは明らかだ。

食材の脂の恐怖から、今では、体脂肪の恐怖へと変わってきた。いつまでも、「脂恐怖症」から脱出できる見込みは立たない。 (2011/3)

二度目のリアル古書店・2

2011-03-01 07:12:44 | BIBLOSの本棚
(2)想像と現実

開催の直前に実地検分をさせていただきました。
下北沢駅北口前にあるお店の立地は満点です。建物は少々、というか、かなり、古びています。店内を一瞥したところでは、何となくピンクっぽい雰囲気がただよい、女性や子ども向けの店作りがなされているようです。首都圏の文教堂・啓文堂などのチェーン店と似た雰囲気です。

私のイメージしていた、「文化人の街=下北沢」とは店内に漂う空気がやや異なります。「これは、参加して失敗したかな。」という思いが胸をよぎりました。でも、「BIBLOSの本棚」にはピンクっぽい本などない。そこで腹を括って、予定通り、やや硬めの古書を出品することにしました。ジャンルは、「詩とメルヒェン・美術・音楽・演劇・映画・芸能・将棋・囲碁・遊び」とし、下北沢に数多くいる(はずの)文化人に的を絞りました。店長の話では、文化人とともに、富裕層の客筋も見込めるとのことでした。

今回は、昨年夏のフェアと違い、単行本だけの出品です。併せて、高額商品も取り混ぜました。

会期が始まり、予定通り、1週間に1回のペースで書店を訪れ、棚の整理をさせていただきながら、売れ具合や売れ筋ジャンルを確認しました。満遍なく売れているが、売れている量は少ないようです。中でも、高額商品は苦戦していました。隣りの店では、絵本がよく出ていました。

お目当ての文化人や富裕層にはなかなか行き当たらないもどかしさがありました。  (2011/3)