前回取り上げた「旅館喜仙」の隣に建つ渋い佇まいのお宿「愛泉一」。こちらのお湯がとっても良いという評判をネット上で目にしたので、自分の体で確かめるべく、立ち寄り入浴で訪ってみました。
半地下の駐車場へつながる坂道の側壁に河川の使用許認可済証を発見。目的は「泉源及び送湯管理設」と記されています。原鶴温泉では筑後川の河川敷に源泉が集まっているそうですが、ここのそのひとつなんですね。自家源泉なのかしら。
旅館というより湯治宿のような風情。玄関に上がって帳場に声をかけると、カウンターの向こうの居間では、お婆ちゃんと娘さんと思しき女性のお二人がちゃぶ台を囲んで昼餉の真っ最中でした。お食事中に訪問した無礼を詫びつつ入浴を乞うと、お婆ちゃんが笑顔で「沸かしとらんけんね、ゆーーーっくりと入ってください、ゆーっくりとね」と、ゆっくりという語句を強調しながら湯あみの方法を説明してくれました。
帳場の前に置かれたカゴにはギッシリと柚子が並べられており、そこに立てられている札には「ご自由にお持ちください」と書かれていました。玄関を境にしてここの館内だけは時間の流れ方が異なっているかのようです。
浴室は玄関の左前側。脱衣室は至って簡素な造りで、棚の他には洗面台など必要最小限のものしかありませんが、経験則から言えば質素な造りであればあるほど良いお湯であることが多いので、むしろこの質素さは私の期待を膨らませてくれます。そればかりでなく、脱衣所の戸を開けた時点で、浴室の方からボコボコという音が響いてくるので、この音に対してもワクワクしてしまいます。
室内には浴槽に関する説明が掲示されていました。「広い浴槽の方が洗い湯です 狭い浴槽の方があがり湯です」とのこと。これを頭に入れて、いざ浴室へ。
曇って見難い画像ですいません。古いタイル貼りの浴槽は二つに分かれており、上述の説明によれば、脱衣室側の狭い浴槽があがり湯、窓側(道路側)の広い浴槽が洗い湯となります。
脱衣所にまで届いていたボコボコ音の原因はこの湯口でした。あたかも間欠泉のように、勢いよく大量に源泉を漲らせていたのです。噴き出るお湯は40℃ほど。このお湯はまず狭いあがり湯浴槽へ注がれます。
湯口のお湯をすべて受ける上がり湯用の浴槽は2人サイズで38~9℃の湯加減。浴槽サイズに対して投入量が多いため、槽内に留まるお湯は無く、多くは隣の広い浴槽へ流れ込み、それでも余るお湯は床へ溢れ出してゆきます。
窓側(道路側)の広い入浴用浴槽には、上がり湯浴槽から流れ込んできたお湯が溜まる構造になっています。上流の上がり湯ですら38~9℃ですから、その川下に当たるこちらの槽は35~6℃というかなりぬるい湯温です。お婆ちゃんがゆっくり入れと強調していたのは、湯船がぬるいからなんですね。でもその温度が不感温度帯であるために、じっくりと全身入浴しているとやがて熱くも冷たくも感じなくなり、そして微睡みに包まれてゆきます。非常に心地よいぬる湯で、冬ですら気持ち良いのですから、夏に入ったらさぞかし爽快でしょうね。
お湯は無色澄明無味無臭で癖が無く、それでいてヌルヌル感を帯びるツルツルスベスベの浴感が楽しめるものでした。肌に優しく滑らかで、且つ体への負担もかなり軽い、極上のぬる湯。すっかりこのお湯に魅了されてしまった私は、ひたすら長湯してしまい、出るときは後ろ髪をひかれる思いでした。温泉ファンの皆さんが絶賛するのも至極当然ですね。
アルカリ性単純温泉 40.9℃ 溶存物質0.49g/kg 成分総計0.49g/kg
Na+:146.2mg,
HCO3-:202.3mg,
西鉄朝倉街道駅より西鉄バス「杷木」行(41番)か日田バス「日田」「高塚」行で原鶴温泉バス停下車、徒歩5分(約320m)
福岡県朝倉市杷木志波28-3 地図
0946-62-0267
10:00~21:00
250円
貴重品帳場預かり・石鹸やタオルなど販売あり
私の好み:★★★