温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

原鶴温泉 愛泉一

2012年03月21日 | 福岡県
 
前回取り上げた「旅館喜仙」の隣に建つ渋い佇まいのお宿「愛泉一」。こちらのお湯がとっても良いという評判をネット上で目にしたので、自分の体で確かめるべく、立ち寄り入浴で訪ってみました。



半地下の駐車場へつながる坂道の側壁に河川の使用許認可済証を発見。目的は「泉源及び送湯管理設」と記されています。原鶴温泉では筑後川の河川敷に源泉が集まっているそうですが、ここのそのひとつなんですね。自家源泉なのかしら。



旅館というより湯治宿のような風情。玄関に上がって帳場に声をかけると、カウンターの向こうの居間では、お婆ちゃんと娘さんと思しき女性のお二人がちゃぶ台を囲んで昼餉の真っ最中でした。お食事中に訪問した無礼を詫びつつ入浴を乞うと、お婆ちゃんが笑顔で「沸かしとらんけんね、ゆーーーっくりと入ってください、ゆーっくりとね」と、ゆっくりという語句を強調しながら湯あみの方法を説明してくれました。
帳場の前に置かれたカゴにはギッシリと柚子が並べられており、そこに立てられている札には「ご自由にお持ちください」と書かれていました。玄関を境にしてここの館内だけは時間の流れ方が異なっているかのようです。



浴室は玄関の左前側。脱衣室は至って簡素な造りで、棚の他には洗面台など必要最小限のものしかありませんが、経験則から言えば質素な造りであればあるほど良いお湯であることが多いので、むしろこの質素さは私の期待を膨らませてくれます。そればかりでなく、脱衣所の戸を開けた時点で、浴室の方からボコボコという音が響いてくるので、この音に対してもワクワクしてしまいます。



室内には浴槽に関する説明が掲示されていました。「広い浴槽の方が洗い湯です 狭い浴槽の方があがり湯です」とのこと。これを頭に入れて、いざ浴室へ。


 
曇って見難い画像ですいません。古いタイル貼りの浴槽は二つに分かれており、上述の説明によれば、脱衣室側の狭い浴槽があがり湯、窓側(道路側)の広い浴槽が洗い湯となります。



脱衣所にまで届いていたボコボコ音の原因はこの湯口でした。あたかも間欠泉のように、勢いよく大量に源泉を漲らせていたのです。噴き出るお湯は40℃ほど。このお湯はまず狭いあがり湯浴槽へ注がれます。



湯口のお湯をすべて受ける上がり湯用の浴槽は2人サイズで38~9℃の湯加減。浴槽サイズに対して投入量が多いため、槽内に留まるお湯は無く、多くは隣の広い浴槽へ流れ込み、それでも余るお湯は床へ溢れ出してゆきます。



窓側(道路側)の広い入浴用浴槽には、上がり湯浴槽から流れ込んできたお湯が溜まる構造になっています。上流の上がり湯ですら38~9℃ですから、その川下に当たるこちらの槽は35~6℃というかなりぬるい湯温です。お婆ちゃんがゆっくり入れと強調していたのは、湯船がぬるいからなんですね。でもその温度が不感温度帯であるために、じっくりと全身入浴しているとやがて熱くも冷たくも感じなくなり、そして微睡みに包まれてゆきます。非常に心地よいぬる湯で、冬ですら気持ち良いのですから、夏に入ったらさぞかし爽快でしょうね。

お湯は無色澄明無味無臭で癖が無く、それでいてヌルヌル感を帯びるツルツルスベスベの浴感が楽しめるものでした。肌に優しく滑らかで、且つ体への負担もかなり軽い、極上のぬる湯。すっかりこのお湯に魅了されてしまった私は、ひたすら長湯してしまい、出るときは後ろ髪をひかれる思いでした。温泉ファンの皆さんが絶賛するのも至極当然ですね。


アルカリ性単純温泉 40.9℃ 溶存物質0.49g/kg 成分総計0.49g/kg
Na+:146.2mg,
HCO3-:202.3mg,

西鉄朝倉街道駅より西鉄バス「杷木」行(41番)か日田バス「日田」「高塚」行で原鶴温泉バス停下車、徒歩5分(約320m)
福岡県朝倉市杷木志波28-3  地図
0946-62-0267

10:00~21:00
250円
貴重品帳場預かり・石鹸やタオルなど販売あり

私の好み:★★★
コメント (2)
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原鶴温泉 旅館喜仙

2012年03月19日 | 福岡県

筑後川のほとりに大小の旅館が軒を連ねる原鶴温泉では、いろいろな旅館で立ち寄り入浴を楽しむことができると聞き、所用で久留米へ赴いた某日、原鶴まで足を伸ばして何軒かの旅館を訪ね歩いて温泉をハシゴしてみることにしました。一軒目は原鶴大橋の袂に位置する「旅館喜仙」です。宿の看板とともにはためく「源泉純度100%掛け流し」と染め抜かれた幟に導かれてしまいました。



建物裏手、大橋の橋詰付近には、こちらのお宿で使われている源泉を利用した足湯がありました。



玄関脇には「ゆび湯」なるものも。いわゆる手湯ってヤツですね。


 
玄関で立ち寄り入浴を乞うと、快く対応してくださいました。こちらでは立ち寄り入浴も積極的に受け入れているようです。帳場の前ではニャンコがお客さんをお出迎え。とっても人懐こく、私を見つけるや否や、すぐさま体を摺り寄せてきました。かわいいですねぇ。



帳場からお風呂場へ向かう途中の通路に展示されているのは、地下180mの源泉付近の地層から採った花崗岩。



浴室は男女別の内湯が一室ずつ。こじんまりとしていながらも、清潔に保たれて使い勝手が良い脱衣室。湯上りに涼むための扇風機がありがたいです。なおロッカーは脱衣室の外に設置されています。
さて、ここまでは「ごく普通の旅館のお風呂なんだな」とあまり期待していなかったのですが、脱衣室に入る手前から、ただならぬ音が浴室から聞こえてくるではありませんか。俄然興奮の度が上がってきました。さっさと脱衣して浴室へ。



浴室に入って感動! 中小規模の旅館によくある内湯で、構造こそ極めてシンプルなのですが、湯口から吐出されるお湯の量が半端じゃないのです。そして室内にふんわりと温泉由来のタマゴ臭が漂っており、その香りが非常に芳しいのです。


 
滝のように轟音を立てながら源泉が大量投入され、怒涛の勢いでオーバーフローし、床はほとんど洪水状態です。圧倒的な湯量に、私はしばしその場で呆然と立ち尽くしてしまいました。

お湯は無色澄明、室内を充満させるほど芳しい明瞭なタマゴ臭が漂い、口に含むとほろ苦さとタマゴ味が感じられます。いかにも重曹型のアルカリ性単純泉らしい、ヌルヌルに近いツルツルスベスベ浴感が強く、入浴中は何度も肌をさすりたくなるほど気持ち良い感触です。いわゆる美人の湯ですね。湯加減も丁度良いので、いつまでも入っていたくなります。

浴槽サイズは6~7人サイズ、浴槽や洗い場ともに滑りにくい材質が用いられておりますが、浴槽の縁だけはとても滑りやすいので要注意です。なお槽内の一部ではジェットバスが作動しており、このジェットは肉がそぎ落とされそうなほどに噴出のパワーが強く、これがオーバーフローの勢いに一役買っているみたいでした。



洗い場にはシャワー付き混合栓が4基。水栓から出てくるお湯は源泉使用ですから、シャワーを浴びてもお肌スベスベ。とっても爽快です。

圧倒的な湯量といい、浴感の爽快さといい、とっても感動的な一湯でした。



喜仙源泉
アルカリ性単純温泉 44.6℃ pH9.0 190L/min(動力揚湯) 溶存物質0.49g/kg 成分総計0.49g/kg 
Na+:140mg(98.07mval%),
HS-:0.8mg(0.34mval%), HCO3-:240mg(67.29mval%),

西鉄朝倉街道駅より西鉄バス「杷木」行(41番)か日田バス「日田」「高塚」行で原鶴温泉バス停下車、徒歩5分(約320m)
福岡県朝倉市杷木志波30-1  地図
0946-62-0047

立ち寄り入浴時間10:00~?
480円/40分
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
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たった4分の船旅 若戸渡船

2012年03月17日 | 福岡県
渡し船はかつては日本中に存在していましたが、今ではほとんどが姿を消し、特に私が生活する東京圏では観光用途(矢切の渡し)を除けば壊滅状態です。しかし西日本の方ではまだ現役で市民生活を支えているところが残っており(大阪はその典型)、渡し船が行き来する水辺の景色が、生活色の強い独特の情景をつくりだしています。ちょっと懐かしい庶民生活の一面が垣間見える絶好の交通機関でもあり、私はこうした風情をたっぷりと味わえる渡し船が大好きです。

北九州市では市の事業として渡船事業を行っていますが、その中でも若松から戸畑を結ぶ若戸航路は両方の船着き場が鉄道の駅から近く、しかも運航本数も比較的多くて利用しやすい上、洞海湾という近代日本の産業を支えた海を横断する航路ゆえにレトロな風情も色濃く残っており、短時間で手軽に「船旅」を楽しむにはもってこい。所用で福岡へ赴いた某日、あいた時間を活用して北九州へと向かい、わずか4分の短い船旅を楽しんできました。



まず博多から鹿児島泉の快速に乗って折尾で下車。


 
日本最初の立体交差駅である折尾。歴史の風格漂う煉瓦の通路を通って筑豊本線のホームへ。

 
 
これから乗る若松行はキハ47の2両編成。反対側のホームには福北ゆたか線の電車が停車中。


 
折尾駅1番ホームには国鉄時代から駅構内福祉理髪所がありましたが、残念ながら閉店してしまったようです。


 
若松行の列車はガラガラ。のんびりと洞海湾に沿って走る。JR九州の気動車には「ガムは包んで捨てようね」という古いステッカーが窓に貼られていることが多いのですが、そこに描かれているいかにも悪童そうなガキンチョのイラストがいい味出しているんです。国鉄時代のものかしら。


 
若松駅。今となっては無駄に広い駅の構内が、筑豊線の歴史を物語っています。往時は溢れんばかりのお客さんが利用したのでしょう。筑豊地区をはじめとする北部九州は、近代日本のロマンと陰影とのコントラストが非常にはっきりと現れており、過去の姿をすっかり捨ててしまった東京圏で生活する私としては、この地域を訪れるたびにとても強烈な印象を受けずにはいられません。



若松駅の駅舎外観。


 
駅前にはSLと操車場跡の石碑が。エネルギー革命以前はここから積み出される石炭が日本のエネルギーを支えていたんですね。操車場跡地は公園や集合住宅に変貌しており、ここがかつて物流拠点であったという形跡はほとんど残っていないようです。いや、探せば形跡はあるんでしょうけど…。



さぁ、駅を出たら海岸沿いを歩きます。
この日は散歩日和のいい陽気。海岸は歩道が整備されており、とっても快適に散策できました。前方に架かる橋は若戸大橋。幅の狭い洞海湾は、海というより川のようですね。


 
波止場の跡。弁財天上陸場。礎には「大正十年」と彫られています。



ここから荷物が揚げ下げされていたのでしょう。かつては死の海と呼ばれるほど酷く汚染されており、私も社会科の教科書でその事実を学んだものですが、今見る限り、波止場跡の石段に波を寄せる洞海湾の海水はまずまずの透明度を保っており、ごく普通の内湾らしい磯の香りを漂わせていました。


 
「旧ごんぞう小屋」。当地では、沖の本船で石炭荷役を行う沖仲仕を「ごんぞう」と称したそうです。明治34年頃から昭和40年頃まで、彼らの詰所として使われてきたのがこの小屋(復元)なんだそうです。現在は散策する人々の休憩所として開放されており、内部には石炭積み出しの関する説明プレートが掲示されていました。


 
歴史ある港町らしく、界隈にはレトロな煉瓦の建造物が残っていました。画像左(上)は旧古河鉱業若松ビル、右(下)は旧三菱鉱業若松支店の倉庫。三菱の紋がとても目立っていました。


 
駅からのんびりと15~20分ほど歩いて、渡船の乗り場に到着。薄暗くて地味な待合所。装飾性の無いところは、観光目的ではなく市民の日常の交通機関であるというこの渡船の性格の顕れなのでしょう。


 
券売機で乗船券を購入。わずか100円。



対岸の戸畑側に建つ日本水産の建物も相当古そうです。私が乗船場へ到達したとき、渡し船はまだ戸畑側にいましたが、しばらくすると船は戸畑を離れ、数分ですぐに此岸へやってきました。


 
一列に並んで乗船を待ちます。
船の戸が開き、戸畑からのお客さんの下車が済むと、乗船客はあっという間に船内へ吸い込まれていきました。自転車利用のお客さんの姿もちらほら。



船上から若戸大橋を見上げます。
気持ち良いなぁ。



次に船尾から湾の奥の方を眺めてみます。この海が近代日本の産業を明治の黎明期から支え続けてきたんだと思うと、感慨もひとしおです。



操舵室を背後から写してみました。一日に何回も同じところを往復して、飽きちゃったりしないのかしら。


 
10:33若松を出発。デッキに立って、潮風に吹かれながら洞海湾の湾口側を臨みます。重厚長大産業の礎を築いてきた歴史ある海は、この日も船舶が輻輳していました。



船は若戸大橋の真下を進んでいきます。内海である上に良い陽気なので、海面はベタ凪。ほとんど揺れません。船はあっという間に戸畑へと近づきました。数分前に出港したばかり若松側を眺めてみます。



わずか4分の船旅が終了。戸畑へ到着。


 
戸畑の渡船乗り場も若松同様昭和の香りが漂う渋い佇まい。若松よりもコンパクトにまとまっているように見えました。


 
下船後、戸畑の船着き場に隣接する広場のベンチに座り、洞海湾を臨みながら折尾駅で購入した名物駅弁「かしわめし」をほおばりました。北九州地区の主要駅で購入できる名物駅弁。炊き込みご飯の上に載せられた鶏のそぼろ、錦糸卵、千切り海苔という素朴な味覚が旅情をもり立ててくれました。うまい!
船着き場から戸畑の駅までは直線の通りをまっすぐ歩いて5分ほど。近代日本の歴史の重さが伝わってくる、潮風が気持ち良いミニミニトリップでした。


船着き場の地図 → 若松 ・ 戸畑
若戸航路(北九州市)
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博多温泉 富士の苑

2012年03月15日 | 福岡県

福岡市内南区の那珂川沿いに高く聳えてひときわ目立つ建物が今回の目的地である温泉旅館「富士の苑」です。前回取り上げた「元湯」とは川を挟んだ対岸に位置しています。なおお隣はゴルフの打ちっぱなしとなっており、私がその脇をすり抜けてロビーへ向かおうとしたとき、下手っぴなオッサンがシャンクさせたボールが私に向かって飛んで、ちょっと肝を冷やしました(もちろんネットが張ってありますけどね)


 
本業は旅館ですが日帰り入浴も積極的に受け入れており、むしろ日中は公衆浴場のように地元から集まってくる多くのお客さんで賑わいます。旅館というよりマンションみたいな外観ですね。最上階は展望レストランなんだそうです。

靴箱の施錠には100円玉が必要で、お金は戻ってきません。靴箱のカギを手にしながらフロントへ向かうと、そのカギを確認した受付の方曰く「すでに100円お支払いいただいているので、あと300円分をお願いします」とのこと。何の事だかよくわからないまま券売機を見てみると、ベンダーのボタンには入浴料などといったサービス名は全く書かれておらず、ただ単に100円だの200円だのと、金額のみが書かれています。なるほど、ここは目的別の券を買うのではなく、料金に応じた金券を買うのですね。入浴料は1時間400円ですが、靴箱で100円払っているので、残額は300円ということでしょう。ベンダーにお金を投入して300円のボタンを押し、その額がプリントされた券を靴箱のカギとともにフロントの方に手渡しました。なお券には発券時刻も印字されており、所定の1時間をオーバーしている場合は、その券で超過時間を確認するようです。


 
お風呂へはロビーから階段を下りた一階層下のフロアへ。脱衣所入口には塩ビの配管がむき出しになっていましたが、よく見ると「床暖房 温泉ゆ」とマジックで書かれています。日本を代表する都市部なのに、床暖房の熱源が温泉で賄われているとは、いやはや恐れ入りました。


 
脱衣所内の様子。洗面台は広くて使い勝手が良いのですが、ロッカーは柱を挟むように向かい合わせで一か所に固まって設置されており、あまりゆとりが無いため他客と干渉しやすい状態です。実際に常連さんの口からも「ここは着替えるところが狭いんだよなぁ」という意見が聞かれました。



脱衣室内で「あせもは1回で枯れて来ます。枯れないお方には代金はお返し致します」と自信満々な文言を発見。


 
浴室内は混雑していたので、撮影は一部のみとさせていただきました。
浴室への入口は衝突を防ぐために入口と出口が別々になっているのがちょっとユニーク。
↑画像は主浴槽です。思いっきり曇った画像で申し訳ありません。真四角の内湯で10人は入れそうな大きなもので、一角ではジェットバス装置が稼働していました。こちらのお風呂には温泉熱を利用したサウナも併設されているのですが、そちらへ向かうにはこの主浴槽の中を通っていかなきゃいけない不思議な構造になっています。奥の壁に掲示された説明曰く「日本温泉協会より(中略)最高の好評価を頂きました」「この様な全国25,000軒の営業店の中でも殆ど無い」とのこと。


 
露天風呂は横長で浅く窪んでいる造りとなっており、じっくり肩まで浸かる湯船ではなく、寝湯として利用することを前提としているようです。横にずらっと並べば12人ぐらいは同時利用できそうなサイズがあり、浴槽の縁の若干低くなっているところからしっかりとお湯がオーバーフローしていました。実際に横たわってみると、若干ぬるい湯加減も相俟ってなかなか良い心地。頭上はガラス張りとなっていて、その両端のみが網戸になっていました。構造的には露天というより半露天といった方がしっくりくるかもしれませんね。



シャワー付き混合栓は内湯ゾーンに6基、露天ゾーンに5基の計11基設置されています。こちらのお風呂で注目すべきは…


 
11基中6基のカランからは源泉がそのまま出てくるのであります。温泉を床暖房に使ったり、カランへ配管したりと、湯量が豊富なんですね。温泉と赤く書かれた札がそのカランの目印。温泉カランの上に貼ってある説明書きにはこのお湯が飲めると記されており、更に使用方法に関しては「洗髪…シャンプーでOKです 洗体…ナイロンタオルでOKです」とのこと。つまり源泉で洗えばリンスだとか石鹸だとか余計なものは要らないよ、ということなのでしょう。また別の場所に掲示されている能書きには「上り湯をせず浴槽のままでは少し不衛生です。温泉札のある温泉湯をふんだんにかかり湯して下さい。ベトベトしません」とも書かれています。自分の温泉のパワーに対してもの凄い自信をお持ちなんですね。なお浴室入口脇にある上がり湯も源泉です。

ちなみにお湯の質は近所の元湯に似ており、見た目は無色透明、飲んでみると塩味とニガリのような苦みがはっきりと舌に残ります。元湯ではタマゴ的な知覚が感じられたのですが、こちらではあまり確認できず、そのかわりニガリ味はこちらの方が若干強いように思われました。

完全掛け流しの良質な温泉というだけあって、訪問時(平日夕方)は大繁盛していました。温泉風情はありませんが、お湯の質はホンモノ。こんなお湯が街中で湧く福岡という街が羨ましいなぁ。


カルシウム・ナトリウム-塩化物温泉 45.4℃ 100L/min(動力揚湯) 
Na+:984.8mg, Ca++:901.3mg,
Cl-:2749.0mg

西鉄井尻駅より徒歩20分(1.6km)、西鉄バス「和田」(博多駅・天神・大橋駅から47・48・62番など)より約300m、「横手小学校前」(700番・西鉄大橋駅~福大病院(福大前駅))より約500m
福岡県福岡市南区三宅3-19-7  地図
092-551-4126
ホームページ

10:00~22:00 火曜定休(ただし火曜日も夕方は入浴のみ営業)
400円/1H(1時間超過ごとに200円)
ロッカー有料(10円)、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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博多温泉 元湯

2012年03月13日 | 福岡県
 
博多の中心部から直線距離で僅か数キロしか離れていないにもかかわらず、興奮しちゃうぐらいドバドバ溢れる源泉のお風呂に入れちゃう素晴らしい温泉が、福岡市南区の住宅地の真ん中にあると聞き、所用で福岡へ行った某日、笹原駅から歩いて行ってみることにしました。昭和40~50年代辺りに開発されたのではないかと思しきやや古い住宅街の中に伸びる、あぜ道を舗装したような細いウネウネの路地を歩いてゆくと、やがて「元湯」と赤い字で書かれた看板を発見。予めこの辺りに存在していると知っているとはいえ、およそ温泉とは縁遠い街並みに突如として現れる「温泉」の二文字に意表を突かれる思いをしました。



付近には温泉湧出を記念して「泉源 博多温泉」と彫られた石碑が立っていました。この温泉は昭和41年に井戸を掘削していた際、偶然発見されたそうですが、当事者ですら「まさかこんなところで温泉が湧くとは」という驚きでいっぱいだったに違いありません。


 

(右(下)の画像はクリックで拡大)
ごく普通の一般民家のような建物。本当にここで大丈夫なの? 勝手に入って良いの? 不安を抱きつつ、「追い返されたって仕方ねぇや」と杓文字を片手に民家へ突撃する桂米助のような心境で敷地へ踏み入ります。門から玄関へのアプローチの途中にはお地蔵さんが立っており、その上には温泉に関する説明の看板が立てられていました。ちょっと要約してみますと、昭和41年正月に地蔵様のたもとに井戸を掘ったら49度の暑いお湯が滾々と湧き出した、これは地蔵様が病苦の人を癒し老人に長寿を与え人々にお湯の楽しみをお恵みになったものだ、昭和43年にここを奥博多温泉郷と命名し、NETテレビ木島則夫モーニングショーや朝日新聞その他で紹介され、昭和44年10月25日元湯が開店となった…とのこと。NETテレビ(現在のテレ朝)や木島則夫モーニングショーという文言につい関心が向いちゃいますが、こちらは開湯してまだ50年も経っていない比較的新しい温泉なのですね。



さて玄関へとやってきました。一応戸の上には扁額が掲げられていますが、本当にお邪魔して良いのか不安になる佇まいです。しかしその一方で↑画像の左側に写っている青い波板の向こう側からは、温泉マニアの心を揺さぶる「ボコッボコッ」という勢いのよい音が聞こえてくるではありませんか。その音に背中を押されながら玄関の戸に手を掛けます。



曇りガラスの引き戸を開けると、数十年の昔へタイムスリップしたかのようなこじんまりとした帳場が目の前に現れました。「ごめんください」と声をかけると帳場の奥から御年80のおばあちゃんがやってきて、笑顔で「お風呂はあっちね、ごゆっくり」と対応してくれました。



浴室は帳場から振り返ってすぐのところにありました。脱衣所は半畳もあるかどうか怪しいほど狭く、一人が占有したらそれだけで精いっぱいです。室内にも棚しかありません。浴室との間に仕切りの戸は無く、実質的には田舎の古い共同浴場のように脱衣所と浴室が一体化しています。



青いアクリル波板で囲まれた質素な浴室は、鰻店の養殖池を彷彿とする独特の佇まい。こちらもなかなかコンパクトな空間となっており、浴槽も洗い場も、それぞれ2人同時利用でいっぱいになってしまう大きさです。カランは水道の蛇口のみ。タイルの代わりに石を埋め込んでいるモルタルの床、天井や壁などに多用されている青いアクリル波板など、手作り感溢れる造りにただならぬものを感じ、それだけでも十分に興奮できるのですが…


 
何よりもすごいのが、太い塩ビのパイプからドバドバと轟音を響かせて吐き出される源泉であります。表の玄関付近で室内から聞こえてきたゴボゴボという大音響の発生源はこれだったんですね。福岡の天神から10kmも離れていない街中とは思えない、驚異的な光景に、私は大興奮して失禁寸前の状態に陥りました。源泉の「噴出」はおばあちゃんが操作するポンプのON/OFFによって行われ、けたたましいポンプの作動音とともに温泉が吐出されます。ポンプはON/OFFが繰り返され、ポンプが止まって数分もするとお湯の吐出も弱まり、それと同時に今度は太い湯口の隣にある細いVP管から口径サイズに見合ったお湯がチョロチョロと出てきます。私が入浴中は、太い管からのドバドバ吐出と細い管からのチョロチョロ投入が3回ほど繰り返されました。大量な投入量のみならず、完全掛け流しという湯使いにも驚かされます。源泉の投入量に強弱をつけているのは、投入量によって湯加減を調整するためであり、加温はおろか加水すらも行っていないのであります。循環消毒も一切無し。

お湯は無色透明(ほぼ澄明)、地下に陸封された海水性の温泉らしく、湯口にかけられているコップで飲泉してみると、塩味に少々ニガリの味が混ざった味、そしてほんのりとタマゴ的な味と匂いが感じられました。それほどしょっぱいわけではなく、コップ一杯ぐらいなら飲めちゃう感じです。
約49℃の源泉が加水されないまま投入されているので、湯加減はやや熱め。しかも塩分をしっかり含むお湯ですから、お湯への入りしなは肌にピリピリ感が走り、湯上りも強烈に火照って汗がなかなか止まりませんでした。都会の住宅地なのに、渋く鄙びた佇まいの建物の中で、こんな濃いお湯に完全掛け流しの状態で楽しめるだなんて、本当に夢のようです。

湯上りにおばあちゃんは、「昔は朝から店を開けていたが諸々の都合で午後からの営業にした」「昔は旅館営業していたが今は泊まりの客をとっていない」「夜行バスに乗って一人で東京や神戸からやってくる熱烈なファンがいる」などなどいろんなお話を聞かせてくれました。そして「うちの温泉は天下一品で全然沸かしてない」と、誇り高く語ることも忘れませんでした。
その自慢げな面持ちを目にした瞬間、私が実感した素晴らしさとおばあちゃんが語った誇りが見事に一致していることに気づき、まるで我が事のように嬉しくなってしまったのは、私が興奮のあまりに舞い上がりすぎているだけなのでしょうか。


ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 48.8℃ pH7.6 120L/min(動力揚湯・50m) 溶存物質4.82g/kg 成分総計4.82g/kg
Na+:1107.9mg(56.32mval%), Ca++:719.6mg(41.97mval%),
Cl-:2664.9mg(94.16mval%),

JR鹿児島本線・笹原駅より徒歩20分(1.7km)、西鉄井尻駅より徒歩15分(1.1km)、西鉄バス「横手四丁目」(49番・天神方面~西鉄大橋駅~博多南駅)もしくは「横手小学校前」(700番・西鉄大橋駅~福大病院(福大前駅))より約250m
福岡県福岡市南区横手3-6-18  地図
092-591-6713

13:00~17:00 毎週木曜定休
入館時間により料金が異なる
13:00から:500円
15:00から:400円
16:00以降:350円
備品類なし

私の好み:★★★
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