虎杖浜温泉でもほとんど登別との境界付近に位置する「ホテルいずみ」で日帰り入浴を楽しんでまいりました。平屋の建物はかなり年季を重ねているものと察しますが、ペンキを塗り直す等して体面を取り繕い、古いなりに修繕を重ねて頑張っており、その姿は厚化粧で現役にこだわり続ける熟練の婆さん芸者のようでもあります。
こちらのお宿は太平洋を臨む高台の上にとっても広大な敷地を有しており、上画像のようなパークゴルフ場が広がっているほか、敷地内の遊歩道をたどって海岸方面へ下りてゆくと、縄文時代の生活の跡であるポンアロヨ遺跡等もあるんだそうです。訪問した日は絶好の観光日和。真っ蒼な海原と大空、そして緑が非常に美しく、海から吹く風があまりの爽快だったので、しばらくこの場でのんびり過ごしてしまいました。パークゴルフ場では団塊の世代のみなさんがプレイを楽しんでいらっしゃいました。
日帰り入浴もパークゴルフ利用も、玄関を入ってすぐ左側に設置されている券売機で料金を支払い、券をフロントへ差し出します。靴を下足ルームへ収め、フロントの前方にある階段を下りて浴場へ。浴場入口手前には有料のロッカーが設置されていますので、貴重品はここへ預けます。脱衣室も見るからに古そうな造りですが、ペンキを塗り直しや日々の細かなお手入れによって懸命に古さが払拭され、まずまずの使いやすさとなっていました。天井では扇風機がグルグル回っており、湯上がりのクールダウンにはもってこい。壁にはエクセルで作表したと思しきお手製の分析表が掲示されており、ミリグラム・ミリバル・ミリバル%それぞれについて、どのイオンが多いのか、ひと目で分かるように表示されていました(とはいえ、横軸の数値の取り方に問題があるので、ミリグラム以外は却ってわかりにくくなっちゃっているのですが…)。こうした表でデータを明示するのですから、けだしお湯の良さには自信があるのでしょうね。では実際にどんなお湯と出会えるのでしょうか。いざ浴場へ。
出入口の扉を開け、3~4段のステップを下って浴室へ。低い天井と中間色のタイルに昭和の面影を感じますが、きちんと手入れされており、窓からは高台の緑と青い海が望め、陽光が降り注いで明るい環境が保たれていますので、気持ち良く使うことができました。男湯の場合、露天風呂に向かって左側に洗い場・サウナ・水風呂が、右側に浴槽が配置され、洗い場には交換されてまだ間もないと思われる新しいシャワー付きカランが5基並んでいました。
総タイル貼りの浴槽は洋梨を半分に割って逆さにしたような形状をしており、手前側のくびれている箇所は浅くなっていて、そのステップのような槽内断面の側部からお湯が投入されていました。浴槽のお湯はガラス窓下の排水口から排湯されており、洗い場などへのオーバーフローは見られません。湯船は10人以上入れそうな容量があり、私の体感で42~43℃ほどの湯加減でした。
何と言っても「ホテルいずみ」はこの絶景露天風呂が素晴らしい。雄大な太平洋の大海原を一望できるこの露天風呂は、海まで若干の隔たりがあるものの、視界を遮るものはなく、高台に位置しているため、開放感が抜群です。海の蒼さと台地の緑が非常に美しく、潮風が青々とした夏草の香りを露天風呂まで運んでいました。この清々しい眺望を目にした私は、思わず息を呑んで、しばし呆然としてしまいました。台地上に立つ一本の木が、良いアクセントになって、絵画のような世界観をもたらしていますね。
浴場を含め建物は全体的に経年劣化が感じられるのですが、この露天風呂だけは重ねてきた年月が明らかに他の部分と異なっており、近年になってリニューアルされたのか、はたまた増設されたのか、ここだけ設備として新しい感じがします。浴槽の手前側はウッドデッキになっており、頭上には屋根が掛けられています。石材造りの浴槽は、目測で2.5m×4mサイズ。お湯は槽内側面の穴より投入されており、穴からは時折泡があがっていました。そして湯船を満たしたお湯は、ウッドデッキ側へと流れ落ちていました。
湯使いに関する具体的な表示が確認できなかったので、明確なことはわかりませんが、内湯・露天風呂ともに放流式かと思われます(加水の有無は不明)。見た目はほぼ無色透明ですが、ほんのり山吹色を帯びているようにも見え、湯中では褐色をした大小様々な大きさの浮遊物がちらほらと見受けられました。甘塩味の他、清涼感を伴うほろ苦味が明瞭に感じられ、アブラっぽい匂い、そして麦茶を想像させる有機的な何らかの味と匂いもわずかに伝わってきます。いかにも虎杖浜温泉らしい知覚的特徴です。
泉質名は食塩泉ですが、浴感としては重曹泉に近いものがあり、湯中ではツルツルスベスベの滑らかな浴感がはっきりと感じられ、そればかりか、肌には気泡も付着し、これが滑らかさをより際立たせていました。この泡付きは露天の方で顕著であり、湯船に2分も浸かっていれば、全身がしっかりと気泡で覆われました。あまりにツルスベなので、浴中は何度も自分の肌を擦ってしまい、その滑らかさを楽しみました。
絶景を楽しみながら、ツルスベの良質なお湯にも入れちゃうという、文句なしに素晴らしい温泉でした。次回は宿泊で利用したいものです。
住友8号
ナトリウム-塩化物温泉 49.0℃ pH8.2 280L/min(動力揚湯) 溶存物質2.318g/kg 成分総計2.322g/kg
Na+:734.9mg(96.31mval%),
Cl-:789.6mg(66.22mval%), SO4--:278.1mg(17.22mval%), HCO3-:317.3mg(15.46mval%), CO3--:9.1mg,
H2SiO3:120.4mg, HBO2:31.2mg,
JR登別駅より徒歩20分強(1.6km)
北海道白老郡白老町字虎杖浜312-1 地図
0144-87-2621
ホームページ
日帰り入浴時間
月火水金12:00~22:00 (受付21:00まで)、日曜・木曜10:00~22:00 (受付21:00まで)、土曜・祝祭日の前日12:00~17:00 (受付16:00まで)
530円
ロッカー(100円有料)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★
既に各メディアで報じられていますね。まぁ、仕方ないかな、と思っています。あんちゃんさんも閉鎖直前に利用することができてよかったですね。いつも思うのですが、温泉って閉鎖が相次いでいるので、「次に来た時でいいや」と後回しすると、後悔することが多いですね。
露天で混浴で誰でも利用可能…というお風呂って、実は私の苦手とするカテゴリーでして、もし行くのであれば、怪しい人たちが居そうにない平日の午前中などを狙っていました。今回の件について、具体的に個人的な見解を申し上げますと…
・有象無象を含む首都圏の客が来やすいロケーションにありながら、今まであのスタイルで開放し続けられたことは驚きに値する。
・「一部の不届き者がいるから、みんなも連帯責任だよ」みたいな感じで、いきなり閉鎖という最終的な手段に訴えるのではなく、経過的措置はとれなかったものか。たとえば巡回パトロールをこまめにしたり、駐車禁止を厳しく取り締まるなど…。
・公共に開放されていたとはいえ、施設の構造上、強い関心のある者や愛好者以外は、羞恥心などの心理的障壁によってほとんど利用しなかったであろうから、閉鎖しても塩原の観光に対する影響は軽微だろう。
なんて考えています。
共同浴場やジモ専は排他的であることが基本ですから、私のような外来者が利用できること自体ありがたい話でして、長年の管理運営の過程で、開放の程度を縮小してゆくのはやむを得ないのですが、「不動の湯」は観光施設としての色合いが強かっただけに、今回の措置はとっても残念です。
既に報道でご存知かと思いますが、福渡温泉の不動の湯が風紀の乱れを理由に閉鎖されてしまいました。残念無念です。
先の黄金週間に塩釜温泉を訪れた際に、幸い初入湯を果たしておいて本当に良かったです。この時は、宿でのんびり過ごす予定でいて、他の浴場を廻る予定ではありませんでした。しかし、せっかく来たのだからと思い、ネットで情報を収集し、現地確認だけでもとおもいつつ入湯まで果たした次第です。
しかしながら、いつものことながら、一部の輩のせいで共同浴場が閉鎖やジモ化へと追い込まれるのは本当に無念です。