温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

越川温泉

2012年12月05日 | 北海道
 
根北線の未成線区間に架かる第一幾品川橋梁(通称:越川橋梁)。資材難の戦時中に多くの犠牲を払いながら建設されたものの、一度もこの上を列車が走ることなく根北線は廃止され、橋梁だけが現在に至るまで残っております。幾星霜の風雪によって崩れかかったアーチ橋は幻想的ですらありますが、その橋脚にはタコ部屋労働で使役された人たちが人柱となって埋められているという噂もあります。虚実のほどはともかく、石北本線の常紋トンネルなど、北海道の戦前の土木建築にはこの手の話が散見されますね。私は霊感というものとは全く縁遠い鈍感な神経なので、おにぎりを頬張りながらのんきに見学してしまいましたが、もしその手の感覚が強い人が特急「オホーツク」に乗って常紋トンネルを通過したり、あるいは車を運転して国道244号でこの橋の下を通ると、予備知識が皆無だったとしても、何かを感じちゃうんでしょうか。



そんな戯れ言はさておき、さて今回の目的地はその第一幾品川橋梁のすぐそばにある「越川温泉」です。温泉ファンには古くから知られた素朴な造りの温泉共同浴場ですが、不幸にもいままで訪問する機会に恵まれず、先日ようやく入湯することができました。国道に面したこのドラム缶のゲートが目印ですね。


 
掘っ立て小屋のような建物がいい味を出しています。駐車場スペースがやけに広いのですが、さすがに国道を頻繁に利用するドライバーはそのことを知っているらしく、私が訪問した時にはデカいトレーラー(ベンツ・アクトロス)が小屋の前までやってきて、運転席から運ちゃんがお風呂道具を片手に降りてきました。



建物には浴場利用にあたっての注意書きが掲示されているのですが、その看板をとめている釘にはバッテリーが上がった時に使うブースターケーブルが引っ掛けてありました。冷え込みの厳しいこの地域では冬になるとバッテリーが上がりやすくなるんでしょうし、救援を求めようにも周囲には人家も何も無い場所ですから、意外と利用機会は多いのかもしれません。


 
小屋の中ではタバコの臭いが染み付いてかなり草臥れているソファーが部屋の周囲を固めていました。


 
無人の施設ですので、わたしのような外来客はセルフでこのドラム缶を短くしたような料金箱に200円を投入します。


 
ソファーの部屋の奥が入浴ゾーンです。お風呂は男女別に分かれていますが、戸を閉めておかないと男女両方が丸見えな構造なんですね。また男用の脱衣室は浴室に直結しておらず、一旦男女共用の廊下に出てからお風呂へ向かうスタイルになっております。



地域のための共同浴場らしく、とっても質素な作りのお風呂。上屋はプリミティブな木造で、浴槽や床はコンクリ打ちっぱなし。浴槽は4人サイズといったところでしょうか。室内には清掃道具が立てかけられていたり、常連さんの風呂道具(特にT字剃刀)が置きっぱなしだったり、ゴミも散らかっていたりと、かなり雑然とした状況でしたが、全く気取らない生活臭が濃い施設というのもまた面白いものですし、それだからこそ、私のような温泉好き人間の心を魅了してしまうのかもしれません。この手の温泉が好きな男って、メイクをバッチリきめた女性よりスッピンの方が好きなんじゃないか、なんて余計なことを考えてしまいます。



ホースの先から掘削自噴の源泉がドバドバ吐出されており、縁から惜しげもなくザブザブとオーバーフローしています。源泉のみではやや熱いので、沢水で加水されていました。源泉ホースのバルブには析出がコンモリと付着しています。お湯はほんのりと橙色を帯びているようでもありますが、ほぼ無色透明に近いように見え、はっきりとした塩味に少々の出汁味、そして弱い金気や焼き石膏の味や匂いが感じられました。また全身浴して肌をさすってみると、食塩泉的なツルスベ浴感と石膏泉的なひっかかりが混在しているものの、ひっかかりが優っているようであり、しばらくお湯に浸かっていると弱いながらも気泡の付着も確認できました。湯上りは温熱効果が持続し、なかなか汗がひきません。極寒の道東に相応しい、身も心もスッピンになれる温泉でした。


ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 50.9℃ pH7.0 湧出量不明(自噴) 溶存物質7.202g/kg 成分総計7.224g/kg
Na+:1838mg(71.38mval%), Ca++:514.0mg(22.90mval%),
Cl-:2023mg(51.13mval%), SO4--:2438mg(45.48mval%), HCO3-:224.6mg(3.30mval%),

北海道斜里郡斜里町字富士150
電話なし

6:00~22:00
200円
備品類なし

私の好み:★★★

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (K-I)
2016-11-21 23:23:06
>バッテリー
私は日中に行ったので気づかなかったのですが、なるほど、壁に掛かっていたブースターケーブルはそういう目的で用意されていたのですね。勉強になります。ありがとうございます。小屋の中の独特な雰囲気は、まさに地域住民の隠れ家という言葉がピッタリですね。そんな素敵な温泉を、我々のような外来者でも使えるようにしてくださってい地元の方々に感謝です。
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まさに地域住民の隠れ家なのです! (みならいかのん&はじめっち)
2016-11-21 12:51:32
ここはあったかくて居心地がいいので、
まれにヘビさんに会ったりします。
びっくらするけど、こっちがなんもしなかったら、
あっちもなんもしないので、驚いたりしないようにしてました。
・・・でも1回だけです会ったのはみならいかのん

あらま、ここは電気通ってなかったはずですが、
数年行ってなかったので、人気の温泉ゆえに
電線ひっぱて来たのかもしれません。
この温泉、少なくても7~8年前までは24時間入浴可能にもかかわらず、
電線がなかったものですから、管理されている方々が
深夜にでも入れるようにと、ケーブルをバッテリーにつないで
車から室内電球の電気を供給できるようにしたものがありました。
こういうのを聞きますと、自分らとしては200円は惜しくないと思っちゃいます。
・・・それで3時間もいられたら堪らないすはじめっちでも冬場の深夜誰も来なかったです
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