ヌマンタの書斎

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型式認定

2024-06-05 09:23:33 | 社会・政治・一般

守られるべき形式認定制度が守られていない。

現在、トヨタ、マツダなど5社が国土交通省の立ち入り検査を受けて、慌てて対応に終始している。それを叩くマスコミ様は、まるで鬼の首を取ったように騒ぎ立てる。

あぁ馬鹿らしい。

悪法であっても法は法。守らねばならないことぐらいは分かる。しかし、よく考えて欲しい。形式認定制度を十分に守っていないが故に発生した事故は、どれだけおったのか。あるいは、形式認定制度をも持ってもなお車両の構造的欠陥で消費者が害されたケースはどれだけあったのか。

行政の在り方として、事前指導型と事後対応型がある。日本は長年、厳密な事前対策をすることにより国民を守ってきたとされている。だが、厳密な車検制度を守っていたにも関わらず、車両そのものの欠陥による事故が起きた場合、国はその責任の一部たりとも負ったことがあったのか。

あるとしたのならば、公害による健康被害や、予防接種による健康被害ぐらいではないか。これは因果関係がかなり明白なうえ、裁判での判決があったからこそ賠償が行われたに過ぎない。交通行政においては、ほぼ皆無ではないかと思う。

実例を上げよう。三菱のトラックのタイヤが走行中に外れて、暴走したタイヤにぶつかり母娘が死傷した事故がかつてあった。形式認定制度を守り、車検制度を通過していたにも関わらず起きてしまった事故である。

この時、国(国土交通省)は死傷した母娘の遺族に対して、自分たちは関係ないとの態度を崩さず。自分たちには責任はないと逃げまくった。では一体なんのために形式認定制度や車検制度はあるのか。そう噛み付いたのは、辛口の自動車評論で知られた故・三本和彦氏であった。

それにたいして大手のマスコミ様がやったことは、三本氏を干しただけだ。もちろん誰の意向を汲んだのかは明白だったが、そのことさえ無視したのがマスコミ様だ。おかげで矛盾だらけの車検制度は生き延び、実情に即さない形式認定制度はメーカーに無駄な努力を強いる。

もちろんメリットもあった。先細る退職役人の再雇用先に確固たる天下り先を確保できた政府のお役人様は老後の心配が減った。また国土交通省の記者クラブという出世コースを確保できたマスコミ様も安泰である。

え?消費者の保護、国民の知る権利?

そんなもの役に立ちはしない。大メーカーを叩いて自分たちの偉さを痛感させて、今後も天下り先の席を用意させれば良し。自動車事故と型式認定制度の有効性なんて曖昧な検証は面倒だし、そんな手間暇かけたくない。これが実相だと私は考えています。

ちなみに霞が関でも、行政の在り方を事前対策型から事後対応型へ変えようとの意見はあり、安倍政権の時には水面下で激しいやり取りがありました。しかし安倍氏の死後、若手の優秀な官僚を集めた官邸主導型の政治は姿を消し、変わって岸田のように役人の言う事は良く聞く政治にすり替わっています。

私は自動車業界とは無縁ですが、それでも税務、会計の世界で事前に提出せねばならぬ書類の多さから、相も変らぬ事前指導型が息を吹き返していることを実感しています。悪法であっても法は法。それが分かっているので仕方なく・・・ですけどね。


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2 コメント

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なるほど (6x6)
2024-06-05 10:39:41
おはようございます。
何か不自然なニュースだと思っていましたので、記事を読んで納得しました。
現在の仕事とは全く無関係ですが、前職時代に所属会社が経済産業省から処分されました。それは法令違反で、当たり前といえば当たり前なのですが、そういう状態であることは経産省側には相談していて認知黙認の件だったようです(僕はペーペーなので直接やりとりしたことはありません)。
それが何らかの理由で突然処分となりました。官僚側の出世争いの余波という説や、会社側が不遜な態度を取ったことに対する趣旨返しとも言われましたが、よく分かりません。いずれにしろ官僚側承知の件ともいえず、かなり重い処分が出ました。いま考えると、法令違反といっても解釈の問題で、別に大した問題ではなかったようにも思います。

そういう権限を持っていることを定期的に見せつけることで、企業側をコントロールする目的だったのでしょうか。今回の報道で、当時のことを思い出しました。もっとも自動車メーカー側の本当の言い分は全く承知していませんが・・・。
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Unknown (ヌマンタ)
2024-06-06 12:17:12
6×6さん、こんにちは。貴重なお話ありがとうございました。官僚というものはずる賢く、口頭では了承しても決して言質は与えません。そして権限を振るいたがりますが、その結果責任は決してとろうとしません。今も昔も難儀な人たちです。
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