ヌマンタの書斎

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緩衝地帯

2024-05-30 09:20:16 | 社会・政治・一般

I Shall Return と捨て台詞を残してフィリピンから逃げ出したダグラス・マッカーサーは意気揚々と日本列島の厚木基地に降り立った。

彼は邪悪な侵略者たる大日本帝国を完全に潰すつもりであった。政治、役所、学校と至る所にアメリカ式の民主主義の仮面を被った独善を刷り込むつもりであった。侍の国・ニッポンから闘争心という牙を抜き、大人しくアンクル・トムの指図に従う子羊を育成するつもりあった。

アメリカでは大統領が替われば政治も社会も大きく変わる。それが当然なので、その感覚で日本列島の新たな支配者として、あるいは歴史に名を遺す変革者として自信満々であった。ところが朝鮮半島の北部のソ連の衛星国家である北コリアが突如として南に侵略してきた。

マッカーサーは軍人である。すぐに朝鮮半島に敵性国家があると、自分が管理している日本列島が危うくなることに気が付いた。大急ぎで本国へ報告して朝鮮半島への出兵許可をもらったが、途中で気が付かざるを得なかった。

邪悪な侵略者たる大日本帝国が半島に侵略を図ったのも同じではないか、と。

マッカーサーは悩んだが、結局背に腹は代えられないと知り、極東軍事裁判で有罪にした戦争犯罪人のうち生存しているものを釈放して日本列島及び米軍基地を警備するための軍隊の創設を命じた。さすがに軍事裁判の有罪判決の取り消しまでは命じなかったあたりが、軍人たる彼の限界だろう。

その後、参戦してきた共産シナ軍の人海戦術に怯えたマッカーサーは、中国本土への核攻撃をアメリカ本国に上申して、それはやり過ぎだと断られた挙句に本国へ帰国させられた。だが、それ以降、アメリカ軍の日本弱体化計画は大幅に緩和され経済再建と並び日本軍の拡大に方針転換した。

ちなみに南北に分断された半島の南部は、軍事政権にする以外統治方法がなく、経済再建の土台もなく、自らの統治能力も著しく低かったため仕方なく過干渉を承知の上で大幅な支援をしてなんとか自立させた。

この北に親ソ連、新共産シナ政権を置き、南に西側の政権を置くことで極東地域を安定させることが出来たため、同じ民族でありながら統一されることなく、それぞれ別個の国家として分断されたままの悲劇の民族としてコリアは我慢を強いられた。

統一されたドイツとは異なり、冷戦構造が維持されたアジアでは朝鮮半島は両陣営の緩衝地帯として役立ったため、コリア以外は誰も統一を望まぬ哀れな状況が今も続いている。西側諸国の支援で大きく経済発展を遂げた南コリアが次第におかしくなってきた。

元々儒教の影響により身の丈に合わぬ中華思想に染まった半島人である。いくら自らの優秀さをアピールしても、誰もそれを真に受けてくれない。仕方ないので隣の経済大国をこき下ろして肥大した自尊心を満足させようとしているが、アメリカの下っ端扱いされるのは耐えがたい屈辱だ。

そこで思いついたのが世界のバランサーたる南コリアだ。アメリカ、シナ、ロシアといった大国の間で調整役を務める重要な国家、それが南コリアだと前任の大統領あたりが言い出した。言うのは自由だが、誰もそれを真に受けてくれない。

そんないら立ちを唯一理解したふりをしてくれたのがシナだ。シナへの輸出や工場進出により大きな経済的利益を獲得できた。だが狡猾なシナはその間に技術を盗み、市場を分捕り、気が付いたら対シナ貿易は赤字となっていた。それでも笑顔で友好国家だと持ち上げてくれるシナとの関係は切りたくない。

米中の対立が顕在化した以上、本来南コリアのとるべき立場はアメリカ側なのだが、冷戦の最前線であった時期とは異なり、もはや二流国家としての扱いでしかない。それに比してシナはまだまだ南コリアのプライドをくすぐってくれる。

ここで再び大国の間で活躍する調整役(バランサー)としての南コリアという幻想が脳裏を占めてしまった。私の知る限り、コリアが大国間で調整役として認められて実績を残したことはないのですが、夢の世界で舞い上がる彼らには事実なんて知ったことではないのでしょう。

まぁ我が国にも日本は中立国家たるべしと本気で憂うる平和馬鹿ちゃんがいますから、あまり他人のことは笑えません。

ただ最近の南コリアの醜態をみていると、真の意味で緩衝役となっているのは、むしろ北コリアの方ではないかと思えるほどです。アメリカは本質的に独裁国家を嫌うので、北コリアとの親善は期待薄です。もちろんサウジのように資源や金を持っていれば別ですが、核ミサイルだけでは役不足。

それでもロシアであろうとシナであろうと他国からの干渉は断固として跳ね除けたい覚悟は、南コリアの比ではない。私には大陸との緩衝役は北で十分ではないかと、ついつい考えてしまいます。南は同じ西側先進国側といっても、それでは満足できない夢見がちな幼稚なところがあるので、まったく信用できません。

もちろん北も信用なんて出来ませんが、大陸との間で無言の抵抗者役を演じてくれるのは確かだと思うのです。まぁアメリカは絶対認めない気がしますけどね。

 

 


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