ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

戦場を駆ける車

2024-06-18 13:47:33 | 社会・政治・一般

車に関心がない人でもジープの愛称で知られる小型車は知っていると思う。

第二次世界大戦中に開発されて戦場に投入された小型自動車である。小柄な車体だが走破性能は高く、壊れにくく、修理も容易である。武装はなく、装甲もないが、その抜群の機動力で兵士たちに愛用された。重い重機関銃を運んだり、傷病兵を後方に送ったり、まさに万能の自動車であった。

戦後、ソ連も似たような車両を作ったが、ジープほどの信頼性の高いものではなかった。呆れたことに冷戦時代、アメリカに敵対していた左派ゲリラでさえもジープを愛用していたほどだ。

その後アメリカ軍はジープの後継として大型の自動車を採用した。横幅が広く、車高が高い独特のスタイルで、愛称はハンビィーである。やはり固定の武器はなく、装甲も薄いがジープよりも大型であるため兵士の移動や武器、食料などの運搬には無類の強みを発揮した。

そのハンビィを手本にトヨタ自動車が作ったのが、高機動車である。日本版ハンビィということでジャンピーなんて呼ばれたこともある。しかし、外見こそ似ているが、中身はだいぶ違う。仏作って魂入れずとでもいうのだろう。

アメリカのハンビィは、フロントグリルが鋼板製なのだが、高機動車はFRPである。鋼板でも重機関銃は防げないが、小銃ていどならエンジンルームを多少は守れる。当然にFRP製のフロントグリルではスカスカであり、あっという間にエンジンが傷つく。

防衛省に言わせると、実際に銃弾が飛び交う戦場での使用は想定していないので問題ないそうである。一応確認するけど、高機動車は軍用車両である。PKO活動で使われることもある。実際には、道路が未整備の不整形地を高速で走ると、飛散する小石などでフロントグリルが破損してエンジンルームにダメージを与えることが分かっている。

実際に戦場で使用することを前提に設計されたハンビィと、ただ形を真似しただけの高機動車ではかくも違う。正直言うと、日本国産の軍用品には、戦場で使用することを考慮していないものがかなり散見される。その設計思想に戦場での使用が想定されていないからだと思う。

もっとも原価削減を至上の命題とするトヨタからすれば、どうせ戦場で使わないのだから安ければ良しなのかもしれませんけどね。実際、使用のほとんどが日本国内の整備された道路での走行なのも事実ですから。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする