ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

配偶者控除の改正

2016-12-09 13:45:00 | 経済・金融・税制

危機感が足りないと思う。

既に既報のとおり、平成29年税制改正大綱では、配偶者控除の改正が見込まれている。この改正により、働く女性を増やそうとの思惑があってのことだ。現在、詰めに入っているようだが、正直、私はその効果に否定的だ。

分かっちゃいないと云わざるを得ないのだ。現在、働く女性が自ら仕事を抑えてしまうのは、配偶者控除の制約だけが原因ではない。社会保険の制約も大きい。税制と、社会保険の両方が制約となっている。

この問題は結構、深刻なもので、私も過去何度となく相談を受け、また試算もしている。現状、主婦が働くと、その年収が100万円を超えると住民税が発生する。103万円を超えると、所得税が発生するだけでなく、夫の所得税も増えてしまう。

そして年収130万円を超えてしまうと、夫の社会保険から外れて、妻自らが国民年金と健康保険料を払わなくてはならない。これが大きい。私の試算だと、年収180万円以上働かないと、とても払いきれないし、夫の扶養家族のままでいたほうが資金的には負担が軽い。

これらの制約があるがゆえに、十分なスキルを持ちながら専業主婦のままでいる、もしくは年間100万円未満の稼ぎに留めているパート主婦は、かなりの数に上る。

そこでこの年収の制限(103万円)を緩やかにすることで、働く主婦を増やそうと目論んでいるらしい。しかし、税制だけでは片手落ちだ。社会保険の制限(130万円)も緩和しなければダメだろう。

ところが、おかしなことに、先月には社会保険の壁があることを報じるマスコミはけっこうあった。しかし、今回の税制改正関連の報道では、当然のように税制の改正点だけを論じ、社会保険は無視した記事が多い。

たしかに社会保険は税制ではないが、改正の目的が働く主婦層を増やすことであるならば、社会保険も合わせて論じなければ意味がない。税制担当は財務省であり、社会保険は厚生労働省と縦割りなのは承知しているが、報道まで縦割りでいいのか?

実のところ、税制改正大綱が発表される少し前までは、マスコミは税制と社会保険を合わせた報道をしていた。ところが、いざ税制改正大綱が出ると、呆れるほど横並びで税制のみを報じている。

まさしく、これぞ記者クラブの弊害であろう。大本営の公式発表をろくに検証もせずに、役所の意図するままに報じる。これが日本のマスコミ様のお仕事であられる。

社会の木鐸としての気概なんぞ、まるで感じられぬ事なかれ主義に染め上げられた霞が関ご用達記者と云われても致し方あるまい。

少子化を迎えた21世紀の日本では、この先働き手を増やさねば、社会システムが円滑に動かない。私は外国人労働者の導入には肯定的だが、すべてを外国人に任せることは出来ないことも承知している。

やはり日本人でやるべき仕事はあると思うし、やれる可能性があるのなら、それを広めるのが政府の仕事だろうと思う。その意味でも、パート労働力を実質的に制約している税制の103万円の壁と、社会保険の130万円の壁を改善する必要がある。

また副業をやりやすい労働環境を整備し、少しでも働きやすくするべきだとも考えている。よくある副業禁止の企業内規は原則禁止としてもいいくらいだと考えている。

しかし、人間は長年馴染んだ環境、制度が変わることを本能的に厭う。だからこそ、政府が主導する必要があるが、民主主義国家である以上は、有権者の理解と支持が必要となる。

そのためにも、マスコミが適切に情報を開示する必要がある。ところが、日本のマスコミ、特に大手の新聞、TVの記者は閉鎖的な記者クラブに支配されているだけでなく、縦割り行政にも縛られている始末である。

高給取りのマスコミ様は分かっていらっしゃらないようだが、既に日本各地で労働力不足による弊害は発生している。働けるのに働かないニートだけでなく、副業禁止から働けない、あるいは社会保険、税金の増額を嫌がって働かない人は、かなりの数に上っている。はっきり言って、技能が高く、即戦力になる主婦を労働力に欲しい企業は数多ある。でも、税制と社会保険の壁がそれを阻んでいる。

記者クラブで配布される資料を横流ししていれば安心して高給が食めるマスコミ様には、働き手がいなくて営業時間を短縮したり、工場のラインを閉鎖している事業者の苦労は分かるまい。

選挙で政策、政権が決まる民主主義国家では、有権者に適切な情報を呈示するマスコミの存在が重要になる。しかに、今の日本のマスコミが、その任を十分に果たしているとは、到底思えません。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする