ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

トリコ 島袋光年

2016-12-02 13:04:00 | 

寂しいものだ。

私は今でも週刊少年ジャンプを読んでいる。ただ、今読んでいるのは「ONE PIECE」と「銀魂」だけで、他の漫画はスルーしている。多分、後で漫画喫茶などでまとめ読みするだろう漫画なら幾つかある。

だが、毎週読みたいとは思えない作品ばかりなのだ。ただ、表題の「トリコ」は、連載完結までちょくちょくと流し読みしていた。ジャンプ得意の対決路線を踏襲しているグルメ・バトルという妙な漫画であった。

なにせ食材は怪物ばかり。それを倒して、美味しく調理して「いただきます」なのだから笑ってしまう。でも、正直言えば、名作と呼ばれるレベルの漫画ではない。どちらかといえば、流行の漫画のイイとこ取りの印象は否めない。

興味深かったのは、読者から募集した食材となる怪物たちの姿であった。私がこの漫画で一番、注目していたのが、実はこの個性豊かな怪物たち。私は子供の頃から、主役のヒーローよりも、敵役の怪獣のほうが好きだったからだ。

反面、ストーリーとか登場人物の作りは、それほどのものではなかった。凡庸な漫画家ならば、この漫画は低調なものとなっていたと思う。しかし、作者は、あの島袋光年である。

ご記憶にある方もあろうが、以前女子高生買春事件を起こした漫画家であり、そのせいで長く業界を干されていた。決して絵の上手い漫画家ではないが、妙に土性骨を感じさせる、泥臭い雰囲気をまとった絵柄が特徴であった。そして、なによりも漫画にパワーがあった。

絵の上手い漫画家ならプロ、アマ含めて数多いる。しかし、多くの読者を惹きつけるだけの漫画を描ける漫画家は、決して多くない。そして、島袋氏はその数少ない才能を有することは、ジャンプ編集部のみならず、他の漫画家たちからも認められる力量の持ち主であった。

だが、未成年者に対する買春事件は、少年誌に掲載する漫画家としては致命傷に近い。だから、私は復帰するとしたら青年誌もしくは大人向けの漫画雑誌だと思っていた。

しかし、ジャンプ編集部は敢えて島袋氏を再起用した。これだけの才幹を埋もれさす気はなく、世間の非難を覚悟の上での登用であったと思う。そして彼はその期待に応えて、見事に「トリコ」を大ヒットさせた。

率直に言えば、売れ線を狙った漫画で、絵柄もストーリーも以前より洗練されてはいたが、それほど高く評価できるものではないと私は判じていた。だが、連載が終了してみると、ジャンプの紙面の味気なさに、どうしても寂しさを感じざるを得ない。

私はあまり高く評価はしていなかったが、少し辛過ぎだったのかもしれません。

コメント
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