映画の話でコーヒーブレイク

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噂のふたり  The Children's Hour 1961

2014-03-12 | 映画 あ行
偽りなき者」を見て、本作を思い出しました。

ウイリアム・ワイラー監督、オードリー・ヘップバーンとシャーリー・マクレーンの主演の白黒映画です。
原作は1934年に書かれたリリアン・ヘルマンの「子供の時間」。数年前に見ました。
主演の二人から都会的ロマンティックなラブストーリーをイメージしてしまいがちですが、
予想もしていなかったストーリー展開に、非常に驚いたのを覚えています。
偽りなき者」では、少女クララにルーカスを貶める意図はなく、思い込みで罪なき人に暴力を振るい、
それを正義とする集団心理の恐ろしさを感じましたが、本作では叱られた腹いせに先生を貶めようという
少女メアリーの明らかな意図が見られ、大人の偏見よりも、無垢な子供の残酷さに怖さを感じました。



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             噂 の ふ た り
                The Children's Hour

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 < ストーリー >
17歳の頃から仲良しのカレン(オードリー)とマーサ(シャーリー)は寄宿制の女学校を経営している。
事業が軌道に乗ったのでカレンは婚約者ジョーとの結婚を決意する。何もかも順調に進んでいた時
マーサの叔母の心無い言葉と、態度を咎められた寄宿生メアリーの嘘によって、ふたりは同性愛の噂を
立てられる。噂を耳にした保護者達が子供たちを引き上げ生徒はいなくなり、
街の人たちから白い目で見られるようになる。
一人の少女の心無い発言で、三人の人生の歯車が狂い、悲劇を迎えることになる。

             
60年代に女性の同性愛を描いていることに加えて、主演がヘップバーンということにも驚きました。
いや、このテーマでリリアン・ヘルマンが原作を書いたのが1934年というのに、もっと驚きます。
ヘップバーンは同年「ティファニーで朝食を」も撮っています。

少女メアリーは先生に叱責されたことに腹を立て、先生を困らせてやろうと嘘をつく。
事が大きくなると、保身のために嘘を重ね、同級生の弱みを握って巧みに操り脅迫し、
周りの多くの大人たちをすっかり信じ込ませるメアリーの狡猾さ。
まさかこんな少女がそんな嘘などつけるはずがないという大人達の思い込み。
モノクロの映像とカメラワークが、どんどん悪い方向へと加速度的に展開する状況に畳み掛け、
カレンとマーサをじりじりと追い詰める。

噂が噂を呼び、周りのふたりを見る冷たく・汚らわしいものを見るような目に曝される中、
カレンは、この人だけはと信じていた婚約者ジョーの口から思わず出た疑いの一言に絶望し、
マーサは、カレンへの思いがあったか?と自分自身の心に疑いを持ちはじめ、心揺れる。

子供はけっして天使などではなく、時には残酷な悪魔にもなり得る。
自分の嘘を正当化する為、平気で嘘を重ね、クラスメートを脅迫し追い詰める少女の憎々しい演技が
実に上手くて恐ろしい。


「ベンハ―」などアカデミー監督賞を3回受賞、ノミネート回数は12回に上るというワイラー監督。
歴史スペクタクルからロマンス、コメディー、スリラー、社会派ドラマと、幅広いジャンルの作品を
世に送り出した監督は、40年代後半ハリウッドに吹き荒れた「赤狩り」に最後まで抵抗した方だとか。
同性愛者としてコミュニティーから排斥された本作のふたりは、
「赤」のレッテルを張られ共産主義者として映画業界から追放された方たちの隠喩でしょうか?





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