のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

『プラテーロとわたし』

2006-05-29 | 
プラテーロはまだ小さいが、毛並みが濃くてなめらか。外側はとてもふんわりしているので、からだ全体が綿でできていて、中に骨が入っていない、といわれそうなほど。ただ、鏡のような黒い瞳だけが、二匹の黒水晶のかぶと虫みたいに固く光る。(長南 実 訳 2001 岩波文庫)

アンダルシアの詩人、フアン・ラモン・ヒメネス著『プラテーロとわたし』はこうして始まります。

本日は
フアン・ラモン・ヒメネスの命日です。

散文詩集『プラテーロとわたし』は
1956年にノーベル文学賞を受賞したヒメネスの代表作で
世界中で大人から子供まで、広く親しまれている作品です。
しばしば「珠玉の」という言葉が冠されるこの作品は、まさに
たなごころで輝く小さな宝石のように、つつましやかで、えも言われぬ美しさをたたえているのでございます。

都会で健康を害したヒメネスは、静養のため、アンダルシアの田舎町モゲールに帰郷し
静かな田園生活を送りながら
銀の毛並みに黒い瞳の小さなロバ、プラテーロに語りかけます。

小さな田舎町モゲールで
生を見つめ、死を見つめるヒメネスの視線は、やさしく荒々しいアンダルシアの風物へと向けられます。

ある時は 薔薇の上の雨つぶに
ある時は 子を案じる母犬に
光り輝く蜘蛛の巣に 
純金のようにまばゆい空に
銀の籠の中で死んだカナリアに
よき理解者であった父が眠る、古い墓地の糸杉に
そして いつも彼の傍らにいる、甘えん坊の小さなロバに。

神はいま水晶の宮殿においでだ。それはね、いま雨が降っている、ということだよ、プラテーロ。秋が、かさかさした枝にしがみつかせたまま残した最後の花は、いまダイヤモンドをいっぱいつけているよ。そしてダイヤモンドの一つひとつに、天が、水晶の宮殿が、神が、宿っている。(p261)

散文詩というよりも詩的なエッセイといった印象でございます。
のろがこの作品を知ったのは、絵本作家 長 新太 氏の展覧会においてでございました。
子供向けに翻訳された本作の挿絵を、氏が描いておられたのです。

Amazoncojp: プラテーロとわたし〈春・夏〉 本 JR ヒメネス伊藤 武好伊藤 百合子長 新太JRヒメネス

のろが持っております岩波文庫版にも、長氏のではございませんが、挿絵が入っております。

Amazoncojp: プラテーロとわたし 本 JRヒメーネス長南 実

改装してこんなふうになりました。





これは一昨年の展覧会に出品したので、今年は出さない・・ 予 定 でございます。
期限までに10冊できなかったらまた出すやもしれません。


最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
11月の展覧会 (Beth)
2006-05-31 23:43:00
楽しみにしてますね~♪

突然ですが「藤田嗣治展」はモチ行きますよね~?

前売りが一枚手元にあります。

もしよかったら差し上げたいと思ってますが、

のろやさんは近美の会員でしたっけ?

もう、持ってますか?

ご入用の場合、ご一報下され・・・





返信する
Unknown (のろ)
2006-06-02 07:38:08
ありがとうございます~。

のろは近美のお向かいの京都市美術館友の会会員でございます。

フジタ展はモチ行くつもりでございます。しかし思いがけなくチケットをいただいたのですよ。

フジタ展、行きたい人は多いと思いますから、Beth様の前売りは別の方にご用立てくださいませ。
返信する
了解~♪ (Beth)
2006-06-02 21:42:57
そうか~、市美の会員だったんだ。

毎回、ブログをメール代わりに使うな!と自分にツッコミ入れてはいるンですが、

ついつい手軽なんで。。。

え?言い訳になってないって?

時節柄、御身大切に。。。



PS:ちなみに私は横尾さんも岡本さんも得意分野ではありません。どちらかと言えば、天野喜孝がいいです。脈絡のないことで、またしても、ども。。。
返信する
Unknown (のろ)
2006-06-07 21:53:54
そうなのです~。

市美ではなにしろ、とっかえひっかえ色々な展覧会を催されるので嬉しいですね。

メール代わりに活用してくだすって、一向に構いませんよ~。むしろ、メールが入っていると「すわ、何事!」と身を固くするたちでございますので・・。(小心者)
返信する
 プラテーロ (こりん)
2017-01-10 00:57:27
 『プラテーロとわたし』がだいすきで、ネットを見ていたところ
このブログを拝見いたしました

 とてもすてきで
購入することは できるのでしょうか

 わたしは、ささやかながら、プラテーロとわたしがだいすきなので、
ギターの方とのコラボで、朗読したり、ピアノをひいているものです
返信する
お返事が遅くなり申し訳ありません。 (のろ)
2017-01-15 11:48:32
こりん様。大変恐縮なのですが、画像の改装文庫本は展覧会用に制作した一点物で、お譲りすることはできかねます。ご了承くださいませ。
返信する
 プラテーロわたし (こりん)
2017-01-15 12:45:14
 おへんじいただきありがとうございました
すっごく すてき でした>^_^<
返信する
ありがとうございます (のろ)
2017-01-23 21:43:34
こりん様、私も『プラテーロとわたし』の優しく繊細な、しかも”死”との対比で”生”がことさら輝く鮮烈な世界が大好きで、突き動かされるようにこの改装本を作りました。こんな辺境ブログでひっそり公開していたものを、見つけていただいたことにこそ御礼申し上げます。
返信する

コメントを投稿