のろや

善男善女の皆様方、美術館へ行こうではありませんか。

ウォルシンガム本新刊

2011-10-20 | 
届きました。



改装ウォルシンガム本3でもちらっとご紹介した、The Queen's Agent: Francis Walsingham at the Court of Elizabeth I でございます。
表紙カバーのタイトル部分は赤銅色のメタリック印刷およびエンボス加工が施されております。



裏表紙には賭けトランプに興じる貴人たちの図と、スペイン無敵艦隊の航路を記した海図、そしてエリザベスの署名入りの文書2点があしらわれております。折り返し部分の説明書きによるとこの文書、一枚は北部諸侯の反乱に加担したノーフォーク公トマス・ハワードに対する死刑執行令状(当ブログでの記事はこちら)であり、もう一枚は例の、エリザベスが散々渋って先延ばしにしたのちにウォルシンガムへのシビアな皮肉を吐きつつ署名した、メアリ・スチュアートの死刑執行令状-----メアリのみならず、哀れなデイヴィソン君の運命をも決した例のアレ(当ブログでの記事はこちらこちら)-----ということでございます。後者の令状にはもちろん、ロンドン塔近くの自宅でこれを受け取ったウォルシンガム本人の指紋がついているに違いございません。きゃっ。

さておき。
英Amazonのレヴューでは☆3と低めになっておりますが、これは「ウォルシンガムが主人公の小説かと思って買ったのに、やたら細かい歴史的事実ばっかり書かれてるし、学問的すぎて全然おもんなかった」といういささかお門違いな文句を垂れているレヴュアーが☆1をつけているからでございます。
ワタクシはもとより小説を買ったつもりはございませんし、やたら細かい歴史的事実こそまさに知りたい所でございますので、大いに楽しめるものと期待しております。この所用事が立て込んでいる上に購読紙が溜まりまくっておりますので、せっかく届いたのにしばらくは読めそうにないのが悔しい所。

カバーをはずすとこんなデザイン。


うーむ、なかなか渋い。
中ごろにあるカラー図版には、ケンブリッジ・キングスカレッジの正面図や、ロンドン郊外の別荘バーン・エルムスとおぼしき屋敷の絵など、今まで目にしたことのない資料も含まれております。紙質はまあまあといった所。文字の大きさも余白もちょうど読みやすいくらいのあんばいで、巻末にはきっちりと索引がついております。

ただ一点、どうしても苦言を呈したいことがございます。
例によって、造本のことでございます。
ハードカバーかつ丸背という立派な外観にもかかわらず、これが無線綴じ(糸綴じをせず、接着剤で背をくっつけただけの製本)なのでございます。しかも日本のハードカバーではよく見かけるアジロ綴じ(無線綴じの一種だが折丁ごとにまとめられており、開きがいい)ではなく、ペラものをホットメルトでバシーッと接着しただけの、要するに文庫本や新書やペーパーバックと何ら変わらないつくりなのでございます。



しかも、紙が横目。
これは本当に腹が立ちます。
本というのはテキストが判読できればそれでいいというものではないのですよ。綴じ方、製本方法、素材、字体から表紙デザインまで全てひっくるめて、その時代の精神を反映するものなのです。なりは立派なのに中身は早くて安上がりな上に壊れやすい製本で済ませるってどんな時代精神だ怒。後世に対して恥ずかしいことではございませんか。国王の身の安全のために病身を押し私財を投げ打って働いた人物の伝記がこんなことでいいのかイギリス怒。

といっても、かの国は産業革命のおかげをもって、世界に先駆けて粗悪本の大量生産ということをやりはじめたお国ではありますから、製本に対する無頓着さという点では伝統があると言えるかもしれません。
ウォルシンガム本人も「テキストが判読できればそれでいい」てなことをあっさり言いそうな御人ではありますしね。いや、何となく。


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