読書な日々

読書をはじめとする日々の雑感

「あやめ 鰈 ひかがみ」

2007年12月10日 | 作家マ行
松浦寿輝『あやめ 鰈 ひかがみ』(講談社、2004年)

以前読んだ「半島」がじつによかったので、松浦寿輝の作品を読んでみようという気になって図書館にあった比較的新しい小説を選んでみたが、やはりコンスタントに面白い作品をかくというのはなかなか難しいものだろう。死の匂いのぷんぷんと漂う雰囲気がどうも好きになれない。一応この三作ともある年の暮れの数日の上野の裏町を描いたということになっている。

フランス語教師をしている木原が秋葉原の会計事務所からでて少し歩いたところで交通事故にあい死んでしまったのに、その抜け殻だけがさまよい続け、旧友の斐川と待ち合わせしていた風月堂にいくが、彼は現れず、かつて彼が話していた同級生の美代子が雇われママをしている「あやめ」というバー(かつて自分が住んでいた家の跡地にある)に、そして美代子が電話してきて賭博場に、そしていつしか「あやめ」でまた一人酒を飲むというありえないような話をつづっている「あやめ」。

旧知の下村からの一緒に酒を飲もうという誘いにのって朝早くから市場に行って鰈を仕入れクーラーボックスに入れて何日も持ち歩き、結局自分のうちに帰ってきて、自分のおぞましい過去を否が応でも自覚させられる「鰈」。

上野の裏町のひなびた地域で鳥獣店をしているが、いまや数種類の蛇だけしかいなくなった真崎がバーの珠実と妹のタマミと勘違いするような危うい近親相姦的意識のなかで、執拗に珠実のひかがみ(膝の裏側のくぼんだ部分)を愛撫することで、死の意識から逃れようとする「ひかがみ」。

最後まで我慢して読んで、やっぱり「半島」の面白さは偶然だったのかと、がっかりきている。人生というものが表の部分だけで作られているわけではなく、こうした訳の分からないどろどろした死臭漂う部分もあることは了解するが、そうれをこうした形で描いてなんになるという思いがある。もっとエキサイティングにもっとさっぱりと描いてくれよといいたくなるのは私だけなのだろうか?こいつ何を気取ってやがんのっていうのが私の素直な感想。

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