仏教を楽しむ

仏教ライフを考える西原祐治のブログです

悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す⑤

2024年07月02日 | 現代の病理
『悪事の心理学 善良な傍観者が悪を生み出す』(2024/2/23・キャサリン・A・サンダーソン著)からの転載です。

同調圧力はティーンエイジャーで特に強い
 ティーンエイジャーは同調しようとする傾向が特に強いことを知っても、おそらく驚かないと思います。では、なぜそれほどまでに同調が強いのでしょうか? ひとつの明白な説明は、衝動制御と判断を司る脳の部位である前頭前皮質が、20代前半までは十分に発達していないというものです。つまり、前頭前皮質が成熟していないことが、ティーンエイジャーが衝動的な決断を下し、危険な行動に走りやすい理由のひとつです。それは、ティーンエイジャーが、自分の選択の結果をよく考えずに、仲間の行動を取り入れようとする傾向が特に強いことにも関係します。
 しかし、前頭前皮質が相対的に未熟であることが理由のすべてではありません。ティーンエイジャーは、集団に所属することを強く意識しています。彼らは、仲間の服装、態度、マナー、行動を頻繁に取り入れようとします。このような集団規範の遵守は、他の集団と異なるアイデンティティを形成する上で役に立ちますが、心理学者はこのプロセスを「規範的規制」と呼んでいます。思春期の子どもは、拒絶されることを避けようとして、社会集団に馴染むことを大人以上に気にします。思春期の子どもは、大人よりも、仲問外れにされると気分が悪くなり、社会的に受け入れられると気分が良くなるという研究結果も報告されています。
 ティーンエイジャーは、特に、曖昧な状況を解釈するための情報を仲間に求める傾向かあります。ある研究は、ロンドン科学博物館の来館者に、赤信号で道路を渡る、あるいは暗い路地を近道するなどの日常的な状況の危険度を評価してもらいました。そして、研究参加者に、大人、あるいはティーンエイジャーの平均的な危険度評価の結果を伝えてから、状況の危険度を再評価してもらいました。実際には、研究参加者に伝えられた評定値は、研究者が無作為に割り当てたものでした。
 同調に関する過去研究と同様に、すべての年齢層の研究参加者は、他人の評価に関する情報を受け取った後に、他人の評価と一致するように自分の評価を変えていました。しかし、ティーンエイジャーは、大人よりも評価を変える傾向が強く、その変化はもっと劇的であることがわかりました。具体的には、ほとんどの人は、大人の意見にそうように評価を調整していましたが、ある年齢層は、この一般的な傾向からは外れていました。それは、12歳から14歳の背少年層で、大人の評価よりもティーンエイジャーの評価に合わせようとする傾向がはるかに強いことがわかりました。自分白身のアチデンティティを形成し定義は何よりも大切なことなのです。
 残念ながら、一致したいというこのような願望は、生命を脅かすほどの深刻な結果を招くことがあります。テンプル大学の研究者は、青少年(招歳から16歳)、若年成人(18歳から22歳)、成人(24歳以上)を募集してチキン(の匠気留)と呼ばれるビデオゲームをプレイしてもらいました。このゲームでは、信号が青から黄色に変わったときに、車を止めるタイミングを判断するように求められました。そして、信号が赤に変わったときに他の平士父差点を通過したときは、衝突事故が起きるリスクが用意されていました。各年齢屑の半数は工人でゲームをプレイする条件、残りの単数は他の2人の実験参加者、がプレイの様子を見ていて、車を止めるタイミングについてアドバイスする巾でプレイする条件でした。その結果、工人でプレイする条件よりも、集団でプレイする条件のほうがリスクの高い選択を多く行うことがわかりました。そして、この効果は、青少年や若年成人ではより大きくなるという知見が示されました。
 青少年には、一般的にリスクを取ろうとする傾向が認められますが、仲間に合わせることを気にするあまりに、一人でいるときよりも仲間といるときのほうが、リスクの高い行動をとろうとします。例えば、同乗者がいる10代の少年は、単独で逓転している少年と比べて、一時停止標識の無視や許可されていない場所でのUターンなどの違法な巡転をする可能性が約6倍、スピード違反や追い越しなどの攻撃的な運転をする可能性が約2倍高くなります。このような危険な運転行動は、男性の同乗者がいるときに一層発生しやすくなります。
なぜティーンエイジャーは社会的な影響を強く受けるのでしょうか? 神経科学者は、思春期の脳が仲間の態度や行動に注意を払うように設計されていることを明らかにしました。この研究者は、思春期のホルモンの変化が、ティーンエイジャーの社会的な情報への集中力を高める脳の生理学的変化をもたらすと推測しています。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 悪事の心理学 善良な傍観者が... | トップ | 脳科学で解く心の病① »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

現代の病理」カテゴリの最新記事