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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

脳科学で解く心の病③

2024年07月07日 | 日記
『脳科学で解く心の病: うつ病・認知症・依存症から芸術と創造性まで』(2024/4/1・エリック・R・カンデル著)からの転載です。


意思決定

 よい意思決定ができる能力は、無意識と意識下の両方における精神的プロセスに左右される。第8章では、意思決定において感情の果たす重要な役割について触れた。本章では考察をさらに深め、認知心学と生物学からもたされた知見について検討し、意識とおよび無意識のプロセスが意思決定においてどのように相互作用しているのかを探求する。
 前述の適応的無意識という概念を提唱したのは、認知心理学者のティモシー・ウィルソンである。これは、一連の高次の認知プロセスであり、本人が気づかないうちに素早く情報を解釈する、フロイトの提唱した前意識的無意識に似ている。生存に不可欠である。我々は周囲で起きていることに意識を集中する一方で、適応的無意識では、精神活動かそれ以外のところで何か起こっているのかを追跡し、重要なことを見逃さないようにしている。適応的無意識には複数の機能があり、その一つが意思決定である。
 重要な選択を迫られると、多くの人はどうするか決めるために、紙を取りだして選択肢のプラスとマイナスを書きだす。しかし、複数の実験から、この方法は意思決定には必ずしも最適な方法ではないと判明している。あまりにも意識しすぎると、自分が実際には好きではないものを選択するよう、自分を説得する可能性があるからだ。むしろ、決定にかかわる情報をできるだけ集めた上で、その情報を無意識の領域に任せるのが一番いい。選択が自然と湧き上がってくる。睡眠は感情のバランスをとるので有益であるため、重大な意思決定をする際には、文字通り寝て考えるのが最善である。我々が意識的に行う意思決定は、無意識に選択された情報に基づいているものである。
 適応的無意識は非常に賢く、洗練された一連のプロセスだが、完璧ではない。物事を迅速に分類するので、やや硬直的になることもある。偏見が生じる一因は、そこにあると考えている人もいる。素早く刺激に反応する際には、過去の経験に基づいて判断するが、いま起きている新しい状況には過去の経験はあてはまらないかもしれない。そのような新しい状況では、意識が介入し、「ちょっと待って。この迅速な、否定的な反応は問違っているかもしれない。再考する必要がある」と、素早くなされた判断を修正する。このように適応的無意識は意識と協働して、人類を地球してもっとも賢い種たらしめている。
これら二つの精神的なプロセスは、さまざまな種類の情報を扱うためにどのように進化してきたのか?・それをどこまで遡ることができるのかを探るのは興味深い。
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