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仏教ライフを考える西原祐治のブログです

音楽療法の基礎③

2022年04月21日 | 苦しみは成長のとびら

『音楽療法の基礎』(村井靖児著)の続きです。

 

「同質の原理」は、アメリカの精神科医I.アルトシューラーによって、1952年に初めて発表されました。それは、精神病院で精神分裂病患者の音楽法を行うときの治療戦略として考えられたものでした。

 精神分裂病患者は当時も今も変わりなく、活気がなく、自分から進んで話をせず、放っておけば何もしないでただぼんやりしている人達、そんな印象が、アルトシューラーが扱った精神分裂病の患者にもあったと思われます。

 彼は、まずそういう人達にどんな音楽を最初に与えたらよいのかを考えました。そして結論として二殼初に与える音楽は、患者の気分とテンポに同質の音楽であるべきだと考えました。これが音楽療法における有名な「同質の原理」です。

 アルトシューラーの優れていたところは、患者さんの心理を気分とテンポの2つの面で捉えたことです。それは、音楽が持つ気分とテンポという2つの性質と対応しますと同時に人間の感情の動きにはテンポがあるという鋭い洞察に関わります。

 気分がテンポを持っている、あるいは感情の動きにはテンポがある。そのことを日常私達は暗黙裡に認めているのではないでしょうか。なんとなく浮き浮きしているとき、とてもイライラしているとき、気分か滅入っているとき、私達が同調できるテンポが違っていることは、読者諸氏も既にお気づきでしょう。

 心のテンポはそのときの気分によって支配されています。そのことが分かると、同質の原理で、精神分裂病の患者さんに最初に提示する音楽が、気分とテンポの両面で同質でなければならないことの重要さが了解できます。私達は、憂鬱なときには憂鬱な音楽を聴きたいですが陽気なときには陽気な音楽を聴きたい。深刻なときには深刻な音楽を求める。そういう具合に、自分のそのときの気分と同じ音楽を選んで聴こうとします。

 

 

異質への転導

 同質の原理で述べたI.アルトシューラーは、精神分裂病の音楽療法のもう1つの重要な治療戦略として「水準戦法」を提案しました。

 水準戦法は、人間の音楽に対ずる反応を、ますリズムへの反応の段階、次に和声を伴った旋律への反応の段階、さらに音楽の持つ気分の利用の段階、そして最後に絵両的な音楽で人間の連想を刺激する段階、と分け、その順序に従って刺激の種類を変えていく方法です。

 つまり本能的なリズムの刺激で、精神分裂病の患者さんの不活発、無為に治療的に迫り、次に旋律と和声の協和が小脳への刺激を伝達し、さらに気分的な音楽を持ってくることで患者さんの関心を引き付け、それを望ましい気分の方向へ転導していき、最後に絵画的な音楽で現実世界へ患者さんの思考を収り戻すことで、治療の一まとまりとします。

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