超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

[(an imitation)blood orange]/Mr.Children

2012-11-29 03:31:04 | 音楽











チューニングは君に合わすよ
幸せな歌を歌ってこう    (Marshmallow day)










まあ、上の二行が今のミスチルを端的に表しているフレーズだと思うんですけど
紆余曲折を経てようやく国民的バンドとして腹を括ったというか
俺が俺がと言う段階が完全に終わりを告げた
みんなの好きな歌、みんなの好きなポップを完全に引き受ける役割を20歳を越えてようやく決めた
このアルバムは言ってしまえばそこに初めて到達したアルバムなんじゃないかと思います。
今から考えると「深海」とか「Q」っていうのはある種の反抗期というか
そういう考えて悩む時期は実はもうとっくに終わっていて
これからは大人として歩んでいく事を受け入れた
それは往年のファンにとっては寂しい事なのかもしれないけど、いつか誰しもが大人になるものだから
そういう観点から聴いてみると驚くほどスッキリしていて清々しいアルバム
一つのコンセプト・アルバムとして傑作だと思っています。

この作品には驚くほど「迷い」がないというか
個人的な葛藤は一旦床に置いて
聴き手を全力で励まし勇気付け包み込むことに腐心している印象
それは勿論去年の3月11日以降初のアルバムっていう条件も影響してるとは思うんだけど
皮肉とか猜疑心とか、今まで絶対に手放さなかったそれらを完全に捨て切って
ただただポップスターに徹し切って鳴らされている感覚の作品
その是非はさて置き
予防線というかロックサイドのファンに対する保険が一切無いように聴こえるので
その意味でもある種の潔さを感じる、もう完全にポップスを究める道に移行したんだなと、
聴き手としてもちょっとスッキリした気分になれる。
何かを卒業したような
未練を捨て去ったような
そういった意味では女々しさからの脱却を果たし、真に国民的ロックバンドへの進化を遂げたとも言える
全曲ポップテイストで歌詞のテーマもほぼ共通(応援歌)してると言ってもいいので
統一感だったり通して聴いた時のカタルシスは今までと比べても随一
完全に脱皮を果たしたアルバムであり
古参のリスナー的にはやや寂しい気持ちもあるけれど、
ここまでサッパリ振り切れてると逆に気持ち良いっていうのが最終的な本音かなあ。
とにかく、これで一旦ぐらついてた時期が終焉を迎えた事はよく分かるので
その意味でも聴く価値や聴き込む価値はあると思う
リトマス試験紙みたいなアルバムでもありますよね。

重要な曲としては、個人的な趣向を外すとやっぱり「イミテーションの木」ですかね
これまで桜井さん自身の葛藤とかも逃さずに歌にしてきていて
それが分かりやすく反映されてるのが「深海」で
最もひねくれてるのが「Q」、
んで近年はまだその葛藤が終わってないのか「フェイク」なんて曲をポロッと出してたりもしつつ
でも結局は、例えニセモノでもニセモノって呼ばれても、本物と変わらず誰かに影響を与えられてるなら
別にニセモノでも全然構わないという、それまでの葛藤等に対する明確なアンサーになっていて
この曲を聴いてると本当に今のミスチルの決意の表れが如実に感じ取れて
個人的に感慨深い気持ちになります
その他にも「インマイタウン」「かぞえうた」と渋めでじっくり聴ける曲が多めなんですが
個人的に特に大好きなのは「Marshmallow day」の若々しい温度ですかね(笑
まだこういう曲作れるんだー、って思ったくらい
みずみずしくて鮮度の高い楽曲
その他にも純粋に元気になれる「End of the day」や
ミスチルにしてはオルタナティブなメロディが光る「pieces」、
ストレートすぎて逆に切ない気分になる「Happy Song」、
珍しく電子音中心のアレンジ楽曲になってる「過去と未来と交信する男」なんかが好きですね
結局はロックバンドとしてのミスチルが好きでも認めざるを得ないクオリティになってる
それは若干悔しくもあるんですけど(笑)。
でも一歩間違えれば安っぽくなってしまう歌詞やメロを
ここまで純真に響かす事が出来るのはやっぱりミスチルの凄味だとも思うので。
「End of the day」とか照れちゃうような応援歌なんですけど、全然押し付けられてる気分にはならないし
そういった部分では変わらないタフさだったり表現に於けるパワーなんかも感じたりしました
欲を言えば、後半一曲アッパーな楽曲が欲しかったかな、とも思いますが
それを抜きしても何の抵抗もなく励まされる温かい傑作かな、と。
これから先も十分聴き込めるアルバムになったと思う。








何だかんだいいつつ、ミスチル大好きだなというか
どっかで桜井さんの声や励ましを必要としてる自分もいるのかなー、なんて
今作を聞いてて改めて思ってしまいました。
この時期にも合うので、是非。