超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

LOSTAGE「ECHOES」全曲レビューその5「NAGISA」

2012-11-28 02:21:27 | LOSTAGE 全曲レビュー








前半はこれで終わり、ですね。










5.NAGISA








LOSTAGEは一般的に感情的に楽器を掻き毟って狂気や鋭角さを演出するバンド、と
捉えられてるかも知れないですが、実は美しいバラッドも得意分野でして
「母乳」「海の果実」「噂」「楽園」・・・
そしてこの「NAGISA」と
コンスタントに続けてきた美メロを活かした優しい手触りの楽曲群の延長線上にある一曲
だけどそれらの楽曲に比べても静の部分が際立って耳に残る仕上がりになっていて
バンド感をある程度捨ててまで美メロを活かす事に拘った
ある意味では新境地の楽曲にもなっていますね
延長線上は延長線上なんだけど
プラスアルファできっちり進化系にもなっている感覚というか。
それが長年のファン的には新鮮だったりもする渾身の出来のバラッドナンバー。
ここ最近私が特に日常で助けてもらっている一曲でもあります。

有り体に言ってしまうと、負け犬の為の歌というか
それはあくまで個人的な解釈ではありますけど
生活の中で「勝ちてえ」って思っててもどうにもならずに負ける事の方がどう考えても茶飯事なワケ
願った事柄を全て叶える事も、努力した時間を全部結果に変える事も正直無理な訳ですよ。
どうしてもそこから零れ落ちてしまう諸々も存在するから
そういう人達の為の歌というか
処方箋というか、
でもそれはただ単に慰めるためっていう馴れ合いのようなものではなく
その中でも確かに息づく意思だったり、それでも前に進みたいっていう切実な気持ちだったり
そういう結果的に残った感情たちを掬い上げる楽曲・・・という風に最終的には聴いてて思えます
そして、そんな慰めだけでは終わらない微かに残る希望の表現に救われる一曲です。
頑張れ頑張れではなく
個人個人の胸に巣食う辛さや痛みを認めてくれてるのが尚素敵な楽曲。






【悪魔に誘われて 悲しい夢を見てる】

自分で「こうしたい」とか「こう思う」と強い意思を保ったつもりでも
気が付けばそんな意思だったり気持ちが去勢されてたり捻じ曲げられてたり
偽らざるを得ない状況が出来ていたり・・・
そんなのははっきり言って苦しいし、精神的にも肉体的にも毒でしかないと思います。
大事なのは「これは嫌だ」とか「俺はそうじゃない」だとか
そういう気持ちを認識する事
自分で自分を助けられるとしたら、まずそういう感情に対して自覚的になる事が大切なのかな、と。
自分でも知らない間に、無自覚の内に意思の一部を去勢されてるのはよくある話。



【僕等はまだ 美しい夢を見てる】

この歌詞の前に「冷たく震えてる」というフレーズがあるんですけど
そこと繋げると余計にグッと来てしまうワンフレーズに仕上がっていると思います。
何度も何度も思い通りに行かなくても
こんなはずじゃなかったと寂しく嘆いても、
それでもまだ自分が過ごしたい未来や居たい場所を求めて
結局は今日もまたそこに向かって歩いてしまう、止まらない足がある
でもそれが、人間の持っている根本的な強さであり、弱さでもある。儚くもある。
そんな情景を切り取って本人の感情も乗せたこのパートに関しては
いつ聴いても胸が熱くなってしまうカタルシスがあります。
それに加えて、
拓人さんの流麗でノスタルジックなギターフレーズが挿入されたりと正に極上の仕上がりになってますね。
今作の中でも随一に浸れる、ポップでありながらロール感に溢れた名バラッドになっていると思います。








涙を流しながら、それでもまだ「何か」を諦めてない人々の姿が情景と共に浮かぶ、そんな一曲。