超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

「パジャカノ、二セコイ、恋染紅葉の作者が2007年の赤マルで一度集まってた。」という話

2012-06-22 14:09:07 | クロス・マネジ(WJ系)






最近のWJではラブコメ作品が3つも連載されてますが、昔の赤マルをチェックしてたらですね、
なんとその3作品の作者が勢ぞろいしている号を発見してまして。実に象徴的だなあと思ったので
軽く触れたいな、と思います。古味直志、濱田浩輔、坂本(裕)次郎の3人ですね。
当時はまさか数年後この3人が本誌で、しかもラブコメでしのぎを削ってるとは考えにくい状況でした。
特に古味さんはバリバリの看板系少年漫画だったので、特に。
何気に今と比較してみると色々と面白いですね。




◆突撃!!宇宙撃滅隊!!/坂本裕次郎

タイトルに「!」が付きすぎですね(笑)。
で、内容は、まあ、いつもの坂本裕次郎って感じでそれ以上でもそれ以下でもなく。
恐らくこれが連載にならなかったのって結局タカヤよろしくバトル作品になるからなんだろうけど
基本的にこの作者が一番楽しんで描けるフォーマットがこういうタイプなんでしょうね。
多分にわのまことみたいなポジションを目指してたんだと思いますが
結局は、まあ、
一人では純粋な恋愛漫画が無理、絵柄的にそっち(格闘)のシーンも入れたくなっちゃう、
っていうのが本音なのかなあ。そういう気持ちが誌面から伝わって来ます。

だからこそ作画を別にしてブレーキ役としての二人三脚なんだろう、とは感じますが
でもこの読切では決して戦ったり悪人をこらしめるのは好きじゃないって主人公宣言してて
その辺はタカヤの失敗からちゃんと学んだんだなあ・・・っていうのがよく出ていて
これはこれでそこそこ好感を持ってたりもするんですけどね。

後は、主人公の男が他のヒロインには一切目もくれず自分の好きなヒロイン一直線
全ての動機が好きな女の子の事だけ、っていうのはこの頃から続いている坂本イズムですよね~。
新ヒロインの登場は編集の指示だったり世間的な好みを反映してって
そんな考えで恋染に出してるんだと予想してますが
やっぱり本人的にはギリギリ一途なキャラで行きたいんだろうな。この先、どこまでそれを貫けるかな?




◆流星ストーム/濱田浩輔

まあ、初期の作品は殆どバスケ漫画なのでこれもバスケです。
でも本格的なバスケってよりはオマケって感じで本質は青春群像劇ですね。
一人の美少女を巡って二人の男が悩んだり駆け引きしたりするという、
正に逆「パジャマな彼女。」っていうか、でもやってることは当時からあんま変わってないんですよね(笑)。
それだけに一本芯の通ったものを感じるといいますか、今の展開も地なんだろうな、って思います。
変わったとすれば絵が劇的に上達したって部分だけのようにも感じられます。
この読切読んでると。

お話の方は、元々一人のヒロインを軸として一緒にバスケを楽しんでた主人公の二人だったんですが
いつの間にか二人ともそのヒロインを好きになってしまっていて
でも友情関係を壊したくない片方の主人公が敢えてバスケを辞めて手を引いて、
そんな目配せに気付いてたもう片方がその行為に対して積年の怒りをぶつけるっていう・・・。
なんとも甘酸っぱい話、ジャンプってよりは少女漫画的か?(笑)。
ただここら辺の切なさ加減は
しっかり今の「パジャマな彼女。」にも引き継がれてるんだな、とは思えますし
今見て考えると手を引く方の主人公のいじらしさはまくらに通じる部分があって面白いですね。
正直作中のバスケ描写よりもそういうセンチメンタルなネタの方が読んでて楽しいので
今の方向転換はある意味正解だとも思える。
あとはしっかり読者が付いて来てくれるかどうか、ですね。
もしこの先まくらの姿が見えるような事があったら、そういう更に入り組んだ三角関係も見てみたいッスねえ。




◆island/古味直志

これが一番面影ないなー(笑)。なんかもう・・・別物ですもん。
巻末コメントで「夢のある話が描きたいです。子供が夢中になってくれるような。」って宣言してますが
「二セコイ」で子供が夢中になってる姿を想像したら若干危ないような気がする(汗)。
それよりはもっと年齢層も高めなはずだとは思うけれど。
方向転換の仕方が凄いッス。
所謂看板狙えるタイプの王道のファンタジーだったのが
今や温泉で女子にバレずに必死に抜け出そう!ってラッキースケベを描いてる訳で
どんな心境の変化が・・・?って思うんですが、まあこの次の読切は「恋の神様」ですし
後続の作品にもちょいちょい恋愛要素もあったりするので
その意味ではそこまで違和感もないんですかね。っていうか実際にそういうレビュー書いてますが、自分。
でもこのデビュー作はまるっきり方向性が違うので今読むと本当に驚きなんですよね。

ただ、「表情で魅せる」っていう点はこの頃から一貫して存在しています。
この読切でも今の必死になった楽みたいな表情をアイラってキャラがしてますし
絵柄に関してもそこまで変化がなく
当時から完成されている確かな画力を感じる事が出来ます。でも、主人公二人は女って事で
男のメインキャラはほぼ出てこないんですよね。その点ではジャンプ的に珍しい作品とも言えるかも。
現在とのギャップを楽しむ為にも中々面白いデビュー作ですね、「island」。

で、やっぱり内容は今読んでも最高ですね・・・!


【だってみんな子供の頃はそれが夢だったんでしょ?】

マルーのこのセリフが泣けてきて仕方がない。子供に世界の残酷さと真実を教える、
実に過酷で悲しい内容にもなってる本作品ですが
そんな絶望を知った後で、既にその事実を察していたマルーが満点の笑顔で言うセリフ
このセリフにこの作品の全てが集約されてると言っても過言ではありません。
いつからか「現実」を知って
夢を見る事も過度な努力をする事も忘れてしまった大人たち
そんな大人たちに向けてのメッセージとしても機能しているこのセリフは
正に看板漫画ならではの「大人も子供も一緒に夢中になれる」そんな可能性を秘めたシーンであって
ここから考えると確かに今のベタなラブコメを描いてる事に対する批判の声に関して
ちょっとは「うーん」って頷いてしまう部分はあるかもしれないですね。
それくらい素敵な、夢に溢れた作品で
逆に言えばこの作品の輝きを知ってるからこそ今でも応援したくなっちゃうのかもしれない
それくらいの求心力を感じられるデビュー作にして名作と言い切って特に後ろめたさもない傑作です。
個人的には空知英秋「だんでらいおん」に匹敵するクオリティの読切だと言えるでしょう。

いつか、この作品の続きも読んでみたいな・・・。
本当の夢に、本当の世界に辿り付けたマルーとアイラの姿を見てみたい・・・!
って思わされた時点で読み手の負けなんでしょうな。
個人的に初連載はこの作品でも全然良かったのかも、って思いますが
まあこの手の作品は結局バトルものに転換されそうですし美しい思い出のままでもいいのかもね。
古味直志のファンならば是非一度は読んで欲しい心に残る読切作品です。
今読んでも本当に色褪せてないもんなあ。それって凄いことだよ。


ま、それはそれとして、「もったいない」と言う人の気持ちも分からなくもないけど
「二セコイ」自体は決して悪い作品ではないし、支持するべき作品だとも思ってます。
この頃のような正統派のファンタジーでなく
逆に少年誌的には横道のラブコメで人気を博しているって事実はやや皮肉的だとは感じますけど
結局は良い作品、面白い作品が読めればそれに越した事はないので・・・。
何にせよ古味さんは才能のある漫画家って事は確かな事実だと思います。もちろん、「個人的に」、ね。







まとめ。
それぞれタイプも違ってるし、作風も変わってたりするけど
それぞれの特徴(女の子にひたすら一途、甘酸っぱい感傷的な恋、表情で魅せるストーリー)に関しては
この頃から既に立派な武器として存在してたんだなあ・・・っていうのが確認出来て
その意味では収穫のある再読だったなあ、と思えましたし
単純に今との比較も楽しかった(笑)。何より今一緒に切磋琢磨しているであろう3人の作家が
かつても一堂に会していたっていうのはちょっとした命運なんかも感じたりしてね。
既にこの頃から戦いは始まっていたのかも、ですね。
これは適当な発言ですけど(笑)。

ただ、「宇宙撃滅隊」はともかく(オイ)他の二作品に関しては今読んだ方が色々と面白かったりするので
その意味でも機会があればどうぞ、って話ですね。「流星ストーム」もかなりの完成度だったし
何より「island」は今読んでも本当に面白く価値があると思ったので・・・。
両方とも初連載の単行本に入ってて今でも読めますので。
同時にそれぞれの方向性も改めて見えて来ました。
恋染は少年の気持ちを、パジャカノはとにかく切なさと儚さに重きを
二セコイは少々強引かもしれませんがドラマ性を重視してお話を作ってるんでしょうね。
それに加えてとにかく印象に残る表情で魅せるっていうのも確かな特徴で。
その辺を意識してれば割とどれも気持ち良く読めると思いますけど。
ただ、基本揺れ動き展開っていうのはどの作品も変わらなくてその辺は桂/河下センセの影響が強い気がします。
少なくともTo LOVEに影響受けてる作品っていうのは一つもないんじゃないかな・・・。
あれは揺れ動き云々とは途中から無縁になってた作品なので
ある意味真似るのは難しい作品ですよね(笑)。
だからこそオリジナリティが逆に確立されてた感もあったんですが。


ちなみに古味先生も濱田先生もほぼ同世代なのでその意味でも応援してます。自分も頑張らなくちゃ!