超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

ついてきます!/川崎直孝 全作品レビュー

2012-06-02 10:00:23 | 漫画(成年)






川崎直孝「ついてきます!」読了。






このタイトル、最初はどういう意味なんだろう?って考えてたんですけど
ふと冷静になって思い浮かんだのが「付いてきます」と「突いてキます」のダブルミーニングなんじゃないかと。
確かに女の子がついていきます!って宣言するかのような内容だし
後者に関しては正にそのまんまなんですけど(笑)。
まあ実際にタイトル作品もあるんですけど、個人的には前述の解釈の方が面白いんじゃないかと思い。
なんていうか、この作家さんは本当にブレない個性を持ってますよね。
前作よりは掲載誌がコンビニ誌って言う事もあって流石に倫理って何?って言うような展開は少なめ
でも「少な目」っていうのもまた凄いと思うんですけど(笑)。与えられた環境の中で必死に個性を活かしてあげようと
頑張って作って川崎直孝ならではのとことんまで突き進む絶頂感と熱量は保ったままで
倫理観が崩れていく描写もきちんとあるからファンとしても満足だし
今回も今回で一つの「芸術」だとは思いましたね。絶対にこの人にしか描けない作品に仕上がっていて
デビュー作の「アとエのあいだ」に負けず劣らずの傑作だと感じました。読み終えた後の爽快感が素敵すぎ!
今回はスレンダー路線ではなく
全作グラマーっていう真逆の方向性になっている
そんな極端なふり幅も面白かった今作、前作と同じく全作品レビューを敢行します。

☆成年漫画のレビューなので苦手な方要注意です。では以下。






■ メランポジウム

性の不一致に悩むカップルの話。蓋を開けてみれば絶頂に辿り着くまでの速度が違っていた
彼女の方が遅めだったので何度も何度も頑張って突き上げると言う内容
ただ単にずっと行為に及んでいるだけの内容ではあるけど
途中から全力で走っているマラソン選手のようなエネルギーと情熱が感じられる素敵な作品
冗談じゃなく身体の不一致で別れるとか不穏になるって話はよく聞きますからね。同窓会の時とかに(笑)。
そんな全力でやり切った後の爽やかなエンディングも心に残る感動的で素直なお話でした。
こういう涙腺に来る様な成年漫画って大好き。偏見で語られるのは大嫌いです。



■ 平和なエネルギー

乳房とモノを一遍に味わう女の話・・・って一体何なんだろう(笑)。
こんな描写は何気に始めて見たかも。
前のお話とはうってかわってコミカルなバカバカしさと一気にエスカレートして
途中からぶっ壊れる倫理観の調和が面白くまた興奮するレベルの一作
まったくその気もないのに巻き込まれてしまったまいかちゃんに同情してしまいますね。
ま、それがすっごくアナーキーで良かったりもするんだけど。

「凄すぎるぞ男子っ こんな気持ちを抱えて生きているのか・・・っ」は名言。ちょっとウルっときた(なぜ)。



■ A cup of coffee

媚薬入りって言っといて実はウソでしたっていう割とオーソドックスな話かな?
それに単純にのせられてしまうっていうのは滑稽なんですけど
でも思い込みも思い込みで威力は高いんだろうな、って
それと元々好きだったのもあるんだろうから、結果的には一日で二人も恋人を作った、って事で
店長のやり手っぷりにおそれおののくような、そんな一作。



■ すいちちスイッチ

陥没乳首を頑張って必死に吸いまくって、その結果無事に中身が出たよ!っていう
コンプレックスを解消してあげる話・・・って
これまたとんでもねえ設定の話だな(笑)。単なるグラマーもんじゃ済まさないぞって気概を感じます。
その後の出現を祝うような激しい祝杯パレードの様子もまた見所だと思います。
にしてもこんな姉ちゃんが実際に居たら天国だろうなあ。



■ 石と紙とはさみ

前・中・後編に分かれてる結構な大作ですね。
あらすじとしては、奥手なカップルに熟練カップルが手取り足取り
お互いの身体を使ってセックスのレクチャーをしてあげるって内容なんだけれども
奥手カップルの女の方がそれきっかけで淫乱になってしまい
冷めた男が別の女に乗り換えるっていう、幸せの形が摩り替わるっていうそういうお話ですね。
一方は本当に望んでた奥ゆかしい愛情を見つけて、一方は元々快感に溺れる性格だったのか
一度楽園の味を知ったらもうその辺の知らないおっさんとも行為に及んじゃって
その様子ははっきり言って異常なんですけど
でも、当人は当人で幸せそうに生きているのをみると、なんとも言えなくなってしまうという。
こういうタガが外れた理性を描かせたらこの人の右に出る人って意外といなさそうです。
何となくこのお話の続きを読んでみたくなるような、そうでないような。微妙に恐ろしいですね(笑)。



■ ついてきます!

マンションの見学に訪れたらそこの女が身体を使って何度もアピールしてきて
最終的には行為に及んだ後に契約を快諾させられてしまう、っていう。
でも最終条件が「私がついてきます」ってこれ単純に色仕掛けっていうには本末転倒な気がしなくもない(笑)。
しかし考えようによっちゃ一ついいとこに収まった気もするし、ユニークではあるけれど
さり気に純粋なカップル成立のお話でもあるのかも。羨ましいなあ。
必死に喘いで防音のレベルを保障するセールスウーマンとか・・・狂ってて最高ですね(笑)。



■ 3角曜日っ

テクノブレイクって知ってます?



■なんとかラポ~ル

人の居ない喫茶店で、店員の目を盗みエロプレイに走る二人
その内にエスカレートして堂々と何も隠さずに行為に及んでしまって
注文が運ばれるまでに必死に行為を済まそうと頑張る
一回終わった後も、
また注文を頼んで何度も繰り返す二人
その様子に飽くなき興奮や刺激への渇望が垣間見れてある種のロマンを感じさせるような、そんな一作。
この店員も本当は知ってて裏でソロプレーをやってるのでは?って勘ぐりたくもなりますね。







川崎直孝の個性としては倫理観の崩壊と羞恥心の無効化と、
そしてスピード感溢れる押し引き描写の3つが主に存在してると思うんですけど
その一つでも際立っているだけで、きちんと彼自身の、川崎直孝らしい漫画になるんだなあ・・・と。
そんな事実とポテンシャルを確認出来て嬉しかったしファンとしても大満足
これからも彼の漫画を私は逐一推して行く気分にはなれる程度の破壊力を秘めた傑作集でした。
とはいっても成年作品なので年齢制限はちゃんと守って読んで下さいね。
後は「漫画だからこそ」の表現だとも思うので、その辺は決して履き違えないようにしましょう、っていう〆で。
今作も心から素敵だと思える単行本でした。また新作同人誌の方もチェックしなくちゃ!