超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

SEVEN/長澤知之

2012-06-07 21:17:00 | 音楽





長澤知之のニュー・ミニアルバム「SEVEN」を聴く。







長澤作品に基本外れなし!ですがこれも漏れなくそうです。
いつも以上にどっしりと構えたグルーヴといつも以上に精神の奥深くに入り込む詞と
基本的なJポップの間逆を突くひねくれたフレーズの数々に唸らされること間違いなしの傑作
欲を言えば一曲弾けたロックンロール・ナンバーが欲しかったとは思いますが
まあこれはこれで雰囲気はちゃんと統一されているので。だから不満という不満もなく。
いつも以上に陽気な一曲目から
どんどんとディープになる楽曲観に浸りつつ最後はちょっと明るく浮上する
そんなミニアルバムとは言えフルアルバム並みのコンセプトを発揮している今作「SEVEN」、
アコースティック色も薄くロックンロール色も薄く、強いのはミディアムなグルーヴ、って事で
これまでの作品とも一線を画す性質のミニアルバムになっているかと思います。




「会いたい人はどこにもいない」(センチメンタルフリーク)

「君が大好きさ それはそうとしてしらけちゃうんだ、許して」(されど木馬)

「君を誇らない」(決別)



長澤知之の歌は初期から一貫して「はみだし者のための歌」って感じがします。
同時に世間一般のポジティブで元気なラブソング応援ソングに対するカウンターでもある。
「会いたい」に対して「会いたくない」
「君が好き」に対してでも「しらけちゃう」
「君は素敵」に対して「君を誇らない」
ここまで世間の流れに実直に反しているシンガーも珍しいと思いますが
これもまた人間の素直な感情である事は間違いないとは個人的に感じるんですよね。
誰もが分かり合える?馬鹿言ってんじゃねえよ、ってそういう気分になる時もあるし
実際問題決して相容れない相手というのは実在するもので
分かってても折れることが出来ない
分かってても歩み寄る、許容する事が出来ない
そんな限界だらけの下らない生き物だとも思うんですよ。人間って、「自分」って。
そこをごまかしたり無理矢理ハッピーに持って行く音楽に対してやや猜疑心を持っている身としては
長澤さんの素直な、本当の意味で素直なフレーズの数々にはいつもシンパシーを感じてます。
会いたくもないし、好きでもないし、素敵だとも全然思わないっていう。
そんな気分に陥る時も絶対にあるからね。
で、そんな気分の時に絶対的に作用してくれる音楽がこれです。
はみだし者、ひねくれ者、マイノリティ、もう形容なんてどうでもいいけれど
そういう言葉に当て嵌まる人が聴けば、若しくはそういう気持ちになった時に最大限に作用してくれるロック
それを今作でも存分に雰囲気までも統一して鳴らしてくれた長澤さんの音楽に感謝!ですね。
まだ一部馴染んでない曲もあるけど、きっと聴き込めばどんどんと沁みてくるんだろうな。確信出来る。
深い深い精神世界に入り込めるような中毒性のある一枚になってます。






普通、優れたシンガーの作品には「もっと売れたらいいのに」って形容を私は付ける癖があるんですが
こと長澤知之の作品に関しては割と冷静っていうか「ま、そうだよね」って感じなんですよね(笑)。
こんなにひねくれた歌詞ではいくら曲が良くても売れないとは思う。
でもその分この詞に当て嵌まる人にとっちゃきっと大切な音楽になっていくんじゃ、とも思う。
勿論私もこの作品側の人間なので、共鳴しつつもじっくりと聴き込みたいと思います。