コンスタントにやろうと思ってたのにいつもごぶさたになってしまうのは何故でしょう。
という訳で、旧譜レビューでございます。
今回取り上げるのはNUMBER GIRLの「SCHOOL GIRL BYE BYE」です。
99年にインディーズから出したアルバムですね。
これがNUMBER GIRLにとって初めてのアルバムだった、と思います。
そもそも何故わざわざインディー作品なのかというと
先週の向井秀徳のソロ・ライブで聴いた「IGGYPOP FANCLUB」が未だに頭の中で鳴ってるんですよ。
なんかずーっと響いているというか。
だから、その曲が入ったこのアルバムをそれからちょくちょく聴いてた訳ですけども。
メジャー作品に比べれば大分荒削りで録音状況も劣るんですが
それでもこのアルバムは強烈なロック・アルバムですね。
決して埋もれてはいけない作品の一つ、だと思います。
今、2010年に於いてこの作品を語るとなるとどうしても後続のバンドについても触れなければいけない事になります。
具体的に言うとASIAN KUNG-FU GENERATION、Base Ball Bear、凛として時雨あたり。
何というかね、もう、ある意味まんまっちゃあまんまなんですよ。
彼らのどこにどう影響与えたのか手に取るように分かると言うか。
歌詞カードとか読んでると、ベボベは特にね(笑)。
ある種の生き写し。
しかも、それらのバンドってめちゃくちゃ売れたじゃないですか?
NUMBER GIRLは、セールスに関しては正直そこまで振るわなかったですけれど
後続のバンドに与えた影響とその成果を考えれば、
どれくらい偉大でオリジナリティがあったバンドなのか、って事が容易に分かりますね。
特にこのアルバムはNUMBER GIRLの原点とも言える作品で、
彼らの特徴が端的に入りまくってる、
一つの傾向の始まりとしても興味深いアルバムだと思います。
正直このアルバムが出たことによって始まった歴史もあると思います。
やっぱり、その独特な言語感覚や思春期特有の甘酸っぱい感じ、
を、
決して爽やかではなく欲望や汚い部分を含めて描いた詞世界と曲世界は
今聴いてもやはり物凄いオリジナリティに満ちているんですが
それに関しても具体的だったり分かり易いものではなくて抽象的でフィーリング重視な感じで。
要は、共感云々よりもイメージ感覚を優先させたロック、という事で
こういう感じの音楽は当時はあんまりなかったと思うと益々凄いなあとか思うんですが
別に自分は当時(中学生)から、ていうか今も日本のロックに関して詳しいわけではないんですけど
単純に聴いた事の無い世界観と言うか
これ他に誰もやってないんじゃない?っていう感覚になる音楽だったんですよね。
取り敢えず、見渡す限りにゃいないというか。
もっと前をさかのぼったりアングラシーンにはいたんじゃないか、って可能性もなきにしもあらずですが。
でも、妄想や言葉の語感を中心に展開される歌と詞は
向井秀徳、NUMBER GIRLでしか味わえない気持ち良さがあると思うんですよね。
それを発展させていく前の作品、ということで
非常に若々しさ剥き出し
青春性丸出し
でも、それが(今聴くと)ノスタルジックな感触を味わえてとても心地良いんですよね。
それと、よく分かりそうでよく分からない、曖昧な歌詞の気持ち良さも存分に味わえると思います。
「ああ 制服の少女よ 気が狂いそうな青空と朝日のせいで白くまぶしい」
「現実と残像はくりかえし 気がつくとそこにポケットに手を突っこんで
センチメンタル通りを練り歩く17歳のおれがいた」
「学生通りは夕暮れの中に浮かぶ
喧騒に瞬間のボーイミーツガールがいっぱい」
「セーラー服の女の子 自転車に乗って ぬれて帰るのかい?
はずかしそうに水たまりをよけながら胸さわぎの放課後かい?」
「果てしなく続く このセンチメンタルジャーニー」
「グラスのむこうにゆらゆらゆれる 水色ガールのあの娘はだあれ?
大さわぎのガールハンターたち 水色ガァルに大さわぎ」
「暁のカイダンを一気にあいつはかけおりて よろめいて転んで消えていく
俺は笑いながら手を振って 太陽のまぶしさに終わりを感じ 俺は目をとじる」
明らかに向井秀徳にしか書けない詞世界。
男なら誰でも持っている(?)、少女への憧れや劣等感もキレイに描いています。
もちろん、基本曖昧に。
それでいて、サウンドもこの時点で格好良い。
ギターがジャキジャキ鳴る感じ、ビート感たっぷりのベース、抜けの良いドラム、
荒削りながらもNUBMER GIRLならではのざらついたアンサンブルは非常に癖になるし、
一度嵌るとずっと聴きたくなるような中毒性がある。
良い意味で冷たい感じというか。
でも、リズムが面白かったりリフがキャッチーだったりときちんとポップな要素もあるんですけどね。
だからこそ、しっかりと1枚通して聴ける訳で。
元々のオリジナリティが高い上に、個々のセンスもこの頃から確立されているので
単なる荒削り、若い云々では留まらない、
これも彼らの傑作の一つ、と言い切れる程度のアルバムになっていると思います。それは、今聴いても。
ただ、私の場合確実に思い出や当時の記憶等とリンクする部分が往々にしてあるので
その点を考慮すると必ずしも的確なレビューとは言えないかもしれません。
ですが、それでもこの作品は自分にとって大切な一枚であり
今聴いても相当のオリジナリティを感じずにはいられない、
格好の良いアルバムとして響いています。
こういう感触のCDって他にはないと思うから、
興味と機会があれば是非聴いてみて欲しいところ。「OMOIDE IN MY HEAD」はいつ聴いても名曲。沁みます。
「あの曲をいま聞いてる
忘れてた 君の顔のりんかくを一寸
思いだしたりしてみた」 (IGGY POP FANCLUB)
このフレーズを聴く度に切なくなるのは何故でしょう。
向井秀徳の声も大好きなんだな。