超進化アンチテーゼ

悲しい夜の向こう側へ

神聖かまってちゃん「友だちを殺してまで。」 全曲レビュー

2010-05-10 23:40:40 | 音楽(全曲レビュー)


ちょっと間が空いてしまいましたが、お久しぶりの全曲レビューです。
今回は神聖かまってちゃんの「友だちを殺してまで。」です。

気がつけば発売から2ヶ月。
その間にメジャーデビューが決まったりとなんだか一気に状況が動きすぎていて怖いです。
ちょっと前までは知る人ぞ知る、って感じだったのに。うーむ。

しかも「夕方のピアノ」シングル化って。
本当に怖いもの知らずですね。
個人的には「自分らしく」と「口ずさめる様に」の音源化を熱望したい。
「地上じゃ天使じゃちっそく死」あたりもね。



このアルバムって、割と上手い具合に受け入れられた気もしてるんですが
実際まだまだ見世物的なイメージが強すぎて
中々本質が理解されてない節があります。
っていっちゃうとちょっと偉そうであれなんですが、
元々は部屋で一人でずっと音楽を聴いているような寂しい人が、ふと聴いて何かを感じるような、
なんかそういう類の音楽としてのイメージの方が強いんですよね。自分の中では。
だから、
自分の事が嫌だったりダメだって思っている人ほど強く響くってのが持論でして
個人的にはThe ピーズの正統継承者みたいな印象もあったりします。
そんな彼らの初音源。以下。





1.ロックンロールは鳴り止まないっ

言わずと知れた名曲。敢えて「迷」ではなく「名」で。
ぶっちゃけ、私的にはこれが一番好きって訳ではないんですが
それでも代表曲を一つ選ぶとしたら間違いなくこれだと思います。
ある意味スタンダードになれるくらいタフなポテンシャルも垣間見れる曲。
キーボードの旋律だけでも感じられるものがあるはず。

所謂ロックについての目覚めを歌った曲なんですが
同時にここから飛躍して行く!と言う意思表示も歌っていて
それを考えると実に熱い意志を伴った曲です。
彼らの曲の中では割とポジティブめなのも面白い部分。

今の時代に衝撃がないのなら、自らの手で創りだしてやる、と言った力強いメッセージが込められた一曲で
一つのシンボルとしても語り継がれていかれそうな曲。
個人的には「なんて事を君は言う、いつの時代でも」って歌詞が的を得てるなあ、って思いますが。



2.ぺんてる

一曲目とは対照的に、下らない大人になってしまった自分をひたすら嘆く曲。
あまりにも詞の内容が痛々しすぎてあれなんですけど
実際聴いてみると痛々しさよりも切実さのがより伝わる仕様で、
それはつまり、これは歌い手にとってリアルな内容なんだなって思う訳です。
同時にものすごいヤケクソ感も往々にして。
この後本気でどうにかなってしまうんじゃないか、ってくらい。

「ぺんてるに~」って何回も叫び倒す最後のパートがハイライトっぽいんですけど
個人的には途中の「雨が上がる前に~」って部分のハーモニーがとても好きだったり。
キーボードの音色で割とロックだけではない、エキゾチックな感じとかも醸し出せていて
一筋縄ではいかないかまってちゃんの魅力が凝縮された一曲だと思う。

「人生が完全に狂っちゃっている」ってフレーズがとても好きです。聴いてるとちょっと気が楽になる。



3.死にたい季節

来ましたね。
これが音源化されてる中では一番好きな曲!
聴いてると未曾有のゲンナリ感が・・・(笑)。
 これがまだ音源化されて無い頃、
具体的に言うと去年の秋口にめちゃめちゃ再生してたんですよ。この曲。
自分の感性とのシンクロ率が半端じゃなくって。
曲のタイトルこそ何じゃこりゃ?って感じですけど、曲そのものに関してはとても素直で、素敵な曲です。
みんなが思っていても絶対に言わない事を平気でいっちゃってるような、そんな曲。
純真無垢の一つの形なのかも。

執拗に繰り返される「死にたい」のフレーズは、ボイスチェンジャーで加工された声と相俟って
聴いてるとかなり不安定になってくるんですが
こういう言葉を歌われる事で救われる感情もあるんですよね。
要は捉え方次第と言うか。
聴き方によっては生に執着している様にも聴こえますしね。
ある意味ピーズの「シニタイヤツハシネ」に対するアンサーソングにも聴こえます。
「地上じゃ天使じゃ~」もそうですけど。
独自性の塊のような曲。

あと、ギターリフちょっと格好良すぎ。王道にも聴こえます。その部分だけ。



4.23才の夏休み

子供大人の嘆きの曲パート2。
アレンジ的にも「ぺんてる」に近いですが、こちらは割と疾走感重視。
歌詞の内容も失踪してますしね(笑)。
すごくだらしがない世界観と言うか
無気力無感動、或いは不感症気味の青年をありのまま切り取ったような曲なんですが
それでも「だけど気にしてしまう僕がそこにいるのさ」と歌っているあたり、
完全には諦めていないというか
まだ少しは何かに期待している部分が伺えるような、そんな詞世界でもあります。
同時にこのままダラダラ終わっていきそうだな、って感じもする。
憂鬱な気分だったり、
どこか鬱陶しい感情が続いている時とかに是非身を任せたい曲。
非常に浸れると思う。

あとは、歌詞の中に「九十九里浜」って言葉が出てくるのが何気にポイント高し。



5.学校に行きたくない

ストレートにいじめの曲。
聴いてるだけで嫌な気分になって来ます。
ただ単に、それだけの曲です。
ただ単に、それだけの曲をポンと入れちゃうセンスも凄い。堂々としてるなっていうか。
ただ、アレンジに関してはゴシック感サイケ感丸出しで、ひねっているので
ストレートにひねた曲、とも表現できますかね。
たまに飛ばしたくなるけど(笑)、
そういう部分も含めて好きな曲ですね。



6.ゆーれいみマン

これまたキラーチューン。
個人的にTVでこの曲歌って欲しいなあ。
これは弱者から強者に対する正々堂々の宣戦布告ですよ。
僕の存在に気づいてくれ~っていう。
これもまたシリアスで強く訴えかけるような曲。
なんだけど、音に関しては割と楽しげというかポップな感じなのが相反していて面白いところ。
この曲もまたキーボードのフレーズがいちいち素敵過ぎますね。
素敵と言えば、
途中でみんなで「うーっ ゆーれいっ!」って叫ぶ部分もとっても素敵だと思います。気持ちがアガるというか。
終わり際の「ですがねー」も反骨精神感じられてとてもいいな。

個人的にはこの曲、陰の代表曲だと思ってまして
バンドのテーマ曲みたいな一面もあると思うんですよ、歌詞とか読んでると。
まだ一度しか聴いてませんけど、ライブでも非常に盛り上がるし。
「死にたい季節」と並んでこれからも歌い継いでいって欲しい曲です。
恨みつらみだらけの曲ですが。



7.ちりとり

これはちょっと銀杏っぽい曲ですね。
そして、銀杏と違う点はこっちのがギリギリ、という事(笑)。
必死に思いを伝えるラブソングで
そういえばかまってちゃんってあんまラブソングないなって気づきました。
なんでないのかって考えたら
既にこの曲が決定打というか、
究極のラブソングだからこそ敢えて作らないのかなって思ったんですけど
実際はどうなんでしょう。
後半思いっきり叫び倒す部分さえ目をつぶれば一番間口は広そうな曲ですね。
メジャー感も珍しくあると思うし。

ただ、バランスを取る為に入れたってよりは、最後に合うからって理由で入れられたような気もする。
とってもピュアで、そしてその気持ちがとってもよく分かる曲。





このアルバムを全曲レビュー書くために数日間じっくり聴いていて思ったんですけど
これはあくまで一人の人間の心情を綴ったアルバムといいますか、
本質はそれ以上でもそれ以下でもない気がして。
勿論面白いもの好きの人たちにも一杯目を付けられているとは思いますけど、
こういう気持ちで生きている
こういう気持ちを少なからず感じている人たちがなかなかの数で居ます、って事を証明した、
掻き集めたって感触もあって。
個人的には。
その輪が広がっていくのかいかないかは分かりませんが、
ここまで本音を求める人たちがいるってのは健全な事だな、とは思います。
いつかSyrup16gみたいに武道館とかでライブして欲しいですね。
きっと面白いことになるはず。
色々と批判も多いバンドですけど、個人的には応援しています。いきます。