オールドゲーマーの、アーケードゲームとその周辺の記憶

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「三共」についての備忘録(1) 三共以前の三共

2023年02月19日 19時40分31秒 | メーカー・関連企業

AM機メーカー/オペレーターの「三共」の始まりは、1959年に設立された「三共ベンダー」であるとのことで、時期的には関西精機中村製作所(後のナムコ)らと共に、戦後日本におけるAM産業を支えた功労者の一つに数えられてしかるべき企業と言えるのではないでしょうか。

で、あるにもかかわらず、現在、この「三共」の名をAM産業の文脈で目にすることはめったにありません。これは全く不当なことだと思うので、ここはひとつ三共をリスペクトしておきたいのですが、そう言うワタシも実はこの会社について多くのことを知りません。ついては、今回はこの「三共」について調べたことを記録しておこうと思います。

なお、「三共」は非常にありふれた商号で、ネット上を検索すると、同名だが無関係なパチンコ機メーカーを筆頭に同名他社などノイズ情報が星の数ほどヒットします。以下で単に「三共」と言った場合は、特に付言がない限りそれはAM機メーカー/オペレーターの「三共」を指すものとします。

三共が1970年代後半に頒布した総合カタログの表紙。この劇画調で描かれた女性の顔は、三共の広告に良く使用されていた。

************* 前置き終わり。これより本文。 *************

過去のAM業界関連企業の中には、「三共遊園設備」や「三共精機」の名前が出て来ます。ゲームマシン76年11月1日号は、これらは1971年に分離独立したもので、さらに1976年に両社が合併して「三共」となると報じています。

ゲームマシン76年11月1日号の、三共遊園設備と三共精機が合併して三共となることを報じている記事。

この記事では、「分離独立」した年を1971年としています。しかし、1970年時点の業界誌「全日本遊園」誌の11月号では、第9回アミューズメントマシンショウの出展社として「三共遊園設備」が紹介されています(関連記事:第九回アミューズメントマシンショウ(2)出展機種画像1)。これはひょっとすると、「三共ベンダー」は1970年以前に「三共遊園設備」に社名を変え、そこから1971年に「三協精機」がスピンオフした、と言うことなのかもしれません。

それにしても、どうも三共遊園設備と三協精機の関係がよくわかりません。現在ワタシの手元にある僅かなフライヤー(ほとんどは頂き物)も、両社はそれぞれ全く異なる製品をそれぞれの社名で発表しており、てんでんばらばらに活動しているように見受けられます。いったいこの両社は事業をどう切り分けていたのでしょうか。

上が三共遊園設備が頒布した「ねずみ退治」のフライヤーに記載されてる所在地、下が三共精機が頒布した「アタックNo.1」のフライヤーに記載されてる所在地。本社と大阪営業所までは同じだが、三共遊園設備の第一工場の所在地が三共精機の工場と同じで、また三共遊園設備のみ第二工場の記載がある。

ゲームマシンの記事には「合併」とあるのですから、ある時期において三共遊園設備と三協精機が同時に存在していたことは間違いないのだとは思います。しかし、アミューズメント誌1972年11月号に掲載されている、同年に開催された第11回アミューズメントマシンショウの出展社一覧には三共精機の名前しか掲載されていません。

アミューズメント1972年11月号より、第11回アミューズメントマシンショー出展会社一覧の部分。ここには三共精機の名はあるが、三共遊園設備の名はない。

三共遊園設備の製品は三共精機の製品に比べてなんとなく古く見えるものが多いように思います。三共精機の方が後から発足しているのであればそれも当然なのかもしれませんが、それにしても1972年以降の資料に三共遊園設備の名前が確認できるものがみつかりません。両社は並行してゲーム機を開発していたのでしょうか。合併以前の資料があまりにも少なく、結局のところ真相はわかりません。現時点で判明していることをまとめて、今回の締めくくりとします。

1959年 三共ベンダー設立
1970年 第9回アミューズメントマシンショウに三共遊園設備が出展。出展機種は、「アストロファイター」、「キックボクシング」、「ねずみ退治」、「ミニボクシング」。
1972年 第11回アミューズメントマシンショウに三共精機が出展。出展機種は「ビッグハンター」。
1976年 三共遊園設備と三共精機が合併、三共となる。

次回は頂き物のフライヤーを中心に三共遊園設備と三協精機の機械をご紹介する予定です。比較的年配の方には、百貨店の屋上遊園などで見かけたものが出てくるかもしれません。

(つづく)