今回も前置きから始まります。前回の記事で、「(三共遊園設備と三共精機は)事業をどう切り分けていたのか」と述べました。その後いろいろと可能性を考えてみたところ、
①1958年設立の三共ベンダーは1970年以前にその社名を三共遊園設備に変更して、遊園地の運営と機械の開発の両方をこなしていた。
②三共遊園設備は1971年に分社し、新会社「三共精機」に開発と販売事業を委譲、三共遊園設備はオペレーション事業に集中するようになった。
と考えれば、三共精機以降に三共遊園設備の名前がAM機ビジネスから消えたことの説明になりそうだと気づきました。分離前後の資料が不足しているので想像の域を出ませんが、とりあえずたぶんこうだったんじゃないかと考えておくことにします。前置きは以上です。
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三共遊園設備がどれだけの娯楽機を開発したのかは不明です。ワタシの手元にはいくつかのフライヤーがありますが、それで全てを網羅しているわけでは(当然)ないとは思います。それらのフライヤーのほとんどはいただきものですが、今回は広く情報を募るために使わせていただきます。ご高覧くださっている皆さんに、「これ、いつごろ、どこで見た!」とか、「こんな機種もあったよ!」などの情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひともコメント欄でお知らせください。
【1】ソーナーアタック(時期不明)
ソーナ―アタックのフライヤー。5発の魚雷が撃てるとある。「姉妹品の射的セット ソーナーアタック」も気になるが、これも資料がない。
はて、これは・・・? 「さとみ」(現サミー)も、同名でしかも形状がよく似たゲーム機を1968年に出しており、ワタシがリアルタイムで見たのはどちらだったのかはわかりません。
さとみのソーナーアタック。三共遊園設備のものと非常によく似た印象を受けるが、こちらは魚雷を8発撃てるようだ。
フライヤーには3P用の筐体の画像もあり、これなどは中村製作所(後のナムコ)とセガが製造していた同名のゲーム機「ペリスコープ」(関連記事:コインマシンメーカーの老舗と「ペリスコープ」の話)にそっくりです。まったく、魚雷で敵戦艦を撃つゲームには人を混乱させるものが多くて困ります(関連記事:1960年代のTAITO(3):追加情報その1)。
【2】ねずみ退治(1970年以前)
ねずみ退治のフライヤー。
右から左に高速で移動するねずみの人形をバーで叩くゲームです。ベルトコンベアの左右にはダミーのねずみがいて、顔を出したり引っ込めたりとフェイントをかけてきます。ワタシはこの機械をデパートの屋上や遊園地のゲームコーナーなど様々な場所で見ています(ただしボウリング場では見た覚えがない)が、その時期を特定できません。「特許」「意匠登録」の文字があるので過去の特許文書を見ればわかるかもと思って調べてみましたが、見つけることができませんでした。
しかし、ねずみ退治は1970年の大阪万国博覧会での遊園施設「エキスポランド」に設置されており、少なくとも1970年以前の機械であることは確認できます。プレイフィールドの背景に描かれているキッチンには2ドアの大型冷蔵庫にオーブン付きのコンロが見えますが、これは70年代以前のものにしてはモダンで豪華すぎます。
フライヤーより、筐体部分の拡大図。当時これだけのキッチンを持つのは間違いなく富裕層だった。
ところで、このねずみ退治で使われているねずみの人形と、レトロなガンゲームとして比較的有名な「チューハンター」で使われているねずみは、ひょっとして同じものではないかとずっと思い続けているのですが、どうなんでしょう。
【3】アストロファイター(1970年)
アストロファイターのフライヤー。
アストロファイターも、ねずみ退治と共に第9回アミューズメントマシンショウに出展されていた機種ですが、こちらは全日本遊園誌71年1月号に「新発売」として広告が打たれているので、発売時期が特定できます(関連記事:第九回アミューズメントマシンショウ(2)出展機種画像1)。
ワタシはこの機械をロケの現場で見ているかどうか、記憶が定かではありません。しかし、操作系に自転車のハンドルを流用している機械には覚えがあり、それがこれだったのかもしれません。
【4】ミニボクシング(1970以前)
ミニボクシングのフライヤー。
ミニボクシングも、上述「ねずみ退治」同様どこでも見かける機械でした。ボクサー像は左右にウェービングしており、正面に来たタイミングでハンドルを倒してパンチを繰り出します。この機械も大阪万国博覧会での遊園施設「エキスポランド」に設置されました。
次回ご紹介する「ボクシング」の筐体には、このボクサー像と同じボクサーが描かれています。
【5】アニマル7(1970以前)
アニマル7のフライヤー。
アニマル7はガンゲームです。これもまた大阪万国博覧会での遊園施設「エキスポランド」に設置されていたそうですが、ねずみ退治やミニボクシングのようにどこでも見られたものではなかったように思います(ワタシが気づいていなかっただけの可能性も高いですが)。ワタシは、1970年前後頃に武蔵小山のアーケード商店街にあったゲームセンターで見たのが唯一の経験です(この武蔵小山のゲームセンターについても、いつ頃からいつ頃まであったのか、どこがオペレートしていたかなど情報を求めております。ご存じの方がいらっしゃいましたらぜひお聞かせください)。
標的は水の中にいるという設定で、客待ち中にはプレイフィールドに無数の泡が立ち上っていました。ゲームが始まると泡は止まりますが、標的に命中した時にも泡が立つ演出が行われました。水を使った演出はこの時代には大変珍しい(と言うか、今も珍しい)ものだったので印象に残りましたが、実は標的は水の中にいるわけではなく、銃と標的の間に水槽があって、状況に応じて泡を発生させているだけであることに気づいたのはずっと後になってからのことでした。
(次回「三共遊園設備のAM機その2」につづく)