日々、思うことをサラサラと。

日頃、イイな、とかおかしいゾ、とかキレイだなと思うことをサラサラと書き出してみたい。

捜査と俳句と飼育の話

2018年04月21日 | 美術展・本
直近で読んだ本は・・・

「許されざる者」 レイフ・GW・ペーション 2018/2文庫化
スウェーデンミステリ


25年の時効成立後に”真犯人がいる”事実が判明する。
話の流れに全く無理がない。脳梗塞で緊急搬送された国家犯罪捜査局元長官ヨハンソン。
彼の主治医となった医師がある話を持ち出す。
牧師だった医師の父親が懺悔に訪れた人物から聞いた話を亡くなる間際に打ち明ける。
「25年前の9歳少女暴行殺人事件の犯人について聞いていた」と。

脳梗塞の後遺症を残しながらも良きアシスタントを得て実に巧みに真犯人に迫っていく。
練りに練った構想でどんどん引き込まれる。
そして、真犯人は早めに割り出せてしまうのだが更に面白いのはここから
時効成立してしまっている犯人をどう裁くことができるのか。真犯人は狡猾だ。

ヨハンソンの内面の吐露の描写が好きだ。
退職後の人生や不自由な身体への不快な気持ちを毒舌且つユニークに捌いていく。
600ページ近い長編がアッという間に読了してしまう。


「他流試合ー俳句入門真剣勝負!」
金子兜太+いとうせいこう

2001年発行 文庫化2017年副題変更・加筆修正あり


私は俳句には全く疎い。
だが、今年2月に亡くなられた金子兜太さん関連の新聞記事に金子さんの俳句が
掲載されていて一目惚れ(一読み惚れ)したんである。
いろいろ調べてみたらファンであるいとうせいこうさんと共著で本を出されていた。
伊藤園(あの有名なメーカー)主催の新俳句大賞の選考委員を共に任されていたという縁での
仕事だったようだ。
俳句と名打っているように老若男女(小学生~)から寄せられた俳句からの
選抜過程を詳細に程よくくだけた調子で紹介している。
僅か一文字で俳句の風景がまるで違ってくる話など、金子さん、いとうさんならではの独特の人柄が展開されていて
言葉が深くそして愉しい内容である。


「動物園ではたらく」小宮輝之

作者は多摩動物園・上野動物園で園長をされていた方で、新人時代から退職までの
動物たちとの交流と仕事上の記憶(記録)が書かれている。
動物好き動物園好きの方には是非・・と推したい一冊です。
知られざる動物の本来の生活や動物園の役割に瞠目することしばしば。

ゴリラの描写が印象に残る。やはり”哲学”する動物だったんだな。




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賢治の父

2018年03月01日 | 美術展・本
「銀河鉄道の父」 門井慶喜(よしのぶ)
童話作家・詩人の宮沢賢治の父、政次郎さんを描いた作品である。

初めて賢治に触れたのは「風の又三郎」の映像だった。
子どもの頃に観た”どっどどどう・・・”から始まる歌いだしのインパクトが強烈に残る。
あの少年の普通ながら不思議な佇まいのワクワク感は何十年を経た今でも想い出せる。
そして、独特の語彙(当時はもっと斬新に響いたはず)でハッと打たれた「銀河鉄道の夜」。
賢治の豊穣な世界感が煌々とちりばめられている。
「よだかの星」は切ない、子どもだった私はズシンと胸に応えた(今でも思い出すと切ない)
賢治の作品に共通するのは綺麗な情景だ。場面設定がどうあれ作者の”綺麗”な心情が見える。
そこにユーモアと知恵が加わわり揺るぎない独自路線を展開する。

揺るぎない独自路線の創作活動の源にあるのは賢治の父(政次郎)だったのか。
この作品を読み終えてそう思う。
賢治へ放つ愛情が溢れている。資産家の長たるものの威厳を保ちつつ、内面はあれやこれやと
賢治の動向をつぶさに気にかけている。気にしつつ子どもを断じていない。言葉を慎む加減が良い。
政次郎さんの心配の有り様が、喜びの気持ちが恐らく世の母親たちの心情と同質なのではないか。
そこへ子どもの本質を見抜き先を冷静に分析できる父親の目が加わる。
このあたりの情景を上質のユーモアで描いている。読んでいてにんまり笑える可笑しみがある。
読了後、この本に出合えた喜びをじんまり噛みしめていた
たしか?満場一致で直木賞を受賞したのかな。

もう一つ
「おらおらでひとりいぐも」若竹千佐子 
芥川賞受賞作で目に止まった作品。
読みだして間もなく「え、同じ心情だ・・そうそう、分かる分かる」という気持ちがくる。
62才で書きだした方の描く心情は、やけに素直にスっとこちらに入りこんできた。
自分の気持ちを代弁してくれているようだ。
他の方のレビューを読んでみればそういう方がたくさんいる。ということは・・・
そんな心情を持たれている方が大勢いたということだ。軽い驚き。
これはベストセラー文句なし




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光の犬の余韻

2018年01月20日 | 美術展・本
「光の犬」松家仁之(まついえ まさし
気持ちがやんわりと鎮まる。
読後、そんな余韻が残ります。
北海道枝瑠(えだる)に住まう家族と家族にまつわる犬・人々の話。
それぞれの人物の描写を丁寧に丁寧に語っている。
読み進めていくと自分の人生を赤ん坊時代から遡って俯瞰しているような眺めがやってくる。
状況は違っているのに、過去の”あの時の、あの人の”心理状態に気付く。
そういう場面を読むと不思議に後悔ではなく、いたらなかった自分を受容している自分がいた。
そう、自分を柔らかくあるがままに受容してくれる本だった。

助産師である祖母、歴代飼われている北海道犬の描写が殊に良い。
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蒼井優の片言日本語が抜群・・ミックス。

2017年10月28日 | 美術展・本
「ミックス!」を観た。
(全然、観る気はなかったのにそういう流れになってしまった)
結果、健やかに面白かった

蒼井優のコメディが抜群に面白いのだ(僅かの出番しかないのだが)
中華飯店の中国人夫婦役で元卓球インターナショナルチーム所属という華々しい経歴を持ち、
新垣結衣・瑛太を特訓するという設定。
蒼井優の片言日本語がとんでもなく面白い声の抑揚が、はじけた大声が、顔が・・
蒼井はなにもかも極上のコメディ仕様で本気で笑った。
そして、卓球するフォームが実にカッコ良かった。かなりフォームをし込んできてる。
やっぱり凄いなこの人蒼井優は映画でこそ活きる人。

追記
斉藤司さん(トレンディエンジェル)も工事現場の瑛太の上役で出演しているが、
妙に存在感がある。気になる。
斉藤さんは、今後シリアスな役で俳優としていけますね

瀬戸康史は苦手だな(最大ライバルペア)
朝ドラ「朝が来た」の頃から抑制の効かない演技が”雑音”だった。
数十年ぶりで見て夢中になった朝ドラにこの人のうるさい演技に辟易していた。
再び・・。



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沼田まほかる作品

2017年10月28日 | 美術展・本
沼田まほかる作品は読みだすと妙にクセになる。
どれも特異な雰囲気を纏っている。
「九月が永遠に続けば」「猫鳴り」「ユリゴコロ」「彼女がその名を知らない鳥たち」他

「ユリゴコロ」は映像化され「彼女がその名を知らない鳥たち」もきょうから公開(10/28)される。
「彼女が・・・」は、映像化できるのか?とちょっと驚いた。
myブログに以前に記したが(2012/7/6)相当キツい男女の愛の形なのだ。
原作の内容は申し分ないのだが、果たしてどこまでその心情風景を映せるのかと訝しんでいた。
だが、演じる俳優が阿部サダヲ・蒼井優とくれば・・これは期待出来るんじゃないか
なんて、ベストなキャスト!!観ようかなと思う。

実は、沼田まほかるの自身(私)が持つ世界観を損ないたくなかったのだ。
それだけ中毒性がある。
延々と沼田の小説に浸っていたくなり、”抜けなきゃヤバイかな”と思わせてしまう。

印象が殊に深く残るのは「猫鳴り」。
飼って貰えなかったノラの子猫が樹木の前で小さい背中をみせて佇む風景がずっと消えない。
傷の手当をしてもらったときの布がまるで風呂敷を背中に背負っているみたいで、可愛いくて哀しい
後日、結局この子猫はその人に飼われることになるのだけど、その生態と死ぬ間際の様子の描き方が独特。
ふんわりやんわりした動物とひとの触れ合い・・・なんて描写はほとんどないけど
愛おしい想いが気持ちの芯まで痛いほどじんじん響いてくる。
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