■米国のオバマ大統領が支持率を下げているそうです。就任当初から根拠のない期待感が過熱しているとの懸念がありましたから、誰がどんな理由で選んだかさっぱり分からない日本の総理大臣の支持率低下とは事情がまったく違うのでしょうが、前政権が全世界に見せ付けた米国の暗部とダメさ加減はまだまだ長い尾を引いておりますから、その後始末を一身に負う新大統領の苦労は始まったばかりであります。
■今月上旬にNHKが放送した『未来への提言』というインタヴュー番組にエマニュエル・トッド氏が登場しまして、現代世界の諸問題に関して実にてきぱきと的確なコメントをしておりましたなあ。無駄な話は一切なし。日本にとっての最大の問題は「人口問題」なのだと痛い指摘をしたトッド氏は、米国が抱える最大の問題は「教育問題」だということになるのだそうです。日本の人口問題は右肩上がりの高度成長期が忘れられない自由民主党という生きた化石みたいな政党と徒党を組んだ官僚が、好き勝手に統計数値を曲解して「明るい未来」を偽造し続けた結果の世界第一位の早さで進む少子高齢化現象。ソ連崩壊を人口調査のデータだけから予想して的中させたトッド氏から見れば、この先の日本が経験する恐ろしい苦難が分かるのでしょう。
■ずっと前からさまざまな兆候があったのに、「日本は何をしていたのでしょう?」と冷笑的に政府が大失敗した過去を思い出せながら、近い将来に関しては「移民に関する無知と臆病さ」を指摘しておりました。今のオバマ政権が前のアホ政権の負債を背負って苦闘しているように、日本でも万が一にも政権交代などが起こったら、半世紀以上にも亘って自民党が積み上げた負の遺産を継承しなければなりません。中でも田中角栄さんが猛烈な勢いで作り上げた政治システムを「ぶっ壊す」のは大仕事でありましょう。
■さてさて、トッド氏が指摘した米国が抱える最大の問題の方ですが、彼が言うには「優秀な人材が弁護士業か金融業に集中する」今の米国を作り上げたのは独特な教育システムに原因があることになります。技術分野や製造業には人材が集まらず、文化芸術分野も金儲け主義に走って空洞化している米国が変わるためには、教育システムを根本的に改善しなければならないそうで、それには100年くらいのスパンで取り組む必要がありそうだとか……。バブル後の日本が経験した「失われた10年」に対する再評価が始まっているそうですが、トッド氏の予感が当っているのなら米国は「失われた100年」を過ごさねばならないかも?
■ここから、世にも恥ずかしい米国発のボーナス騒動のお話です。
米政府の救済を受けた保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が幹部へ高額な賞与を支払った問題に怒ったコネティカット州の小政党では、同州内のAIG幹部の邸宅を回るバスツアーを計画している。コネティカット・ワーキング・ファミリーズ党は、ウェブサイトで「われわれ全員がAIGに怒っている」とメッセージを掲載。その上で「裕福で恥ずべき人々のライフスタイル」と名付けられたバスツアーへの参加を呼びかけている。同ツアーは21日に催行予定で、集合場所はコネティカット州ウィルトンの同党本部となっている。……賞与を受け取った従業員の間からは身の危険を案じる声も出ており、一部の幹部は殺害をほのめかす脅迫状を受け取ったという。同党の広報担当者は、バスツアーでどの幹部宅を訪ねるかについては言及していない。同ツアーの催行予定人数は約50人。……
2009年3月22日 ロイター
■ツアー参加者の持ち物は、水筒・弁当に御菓子は300円以内で……という小学校の遠足みたいな事にはならないにしても、お国柄で自動小銃や散弾銃、巨大なサバイバル・ナイフや手榴弾などは「持って来てはいけない物」に指定されそうですなあ。それにしましても、怒りの表わし方が直截な上に幼稚です。ツアーに参加するくらいに熱心に怒っている人なら、豪勢な邸宅を前にしたら投石や唾棄ぐらいはするでしょうし、ネット社会ですからグーグル地図とデジタル写真を組み合わせて詳しい場所を世界中に発信する人も出て来そうです。標的にされる方とは生きた心地もしないでしょうなあ。まさかGPSを利用して手製の無人爆撃機を飛ばすようなマニアまでは出て来ないとは思いますが……。
(CNN)米政府の資金注入を受け公的管理下にある保険大手AIGの一部幹部社員が高額ボーナスを得ていた問題で、全米の20州の司法当局が調査を開始したことが20日判明した。コネティカット州ではAIGのリディ最高経営責任者(CEO)と役員11人に召喚状を送る方針。召喚状は州の消費者保護関連法案に基づく。ボーナスを得た社員リスト、関連契約書類の提出や注入された税金がボーナスに使われたのかの事実確認などを求めている。同州の司法当局者は、税金を使って再建されている企業の従業員はボーナスの詳細を示す法的、倫理的義務があると主張している。同州にはAIGの従業員多数が居住しているという。
■なるほど、前のニュースがコネチカット州発だったのは「従業員多数」が住んでいるからなのですなあ。でも、高額所得者も多いはずですから住民税やら地元の諸団体に対する寄付行為など、感謝されてもよい事もしていたのではないでしょうか?まさか所得を丸ごとカリブ海のペーパーカンパニーに避難させ、あれこれ帳簿をいじくって借金塗れにして税金逃れを画策していたわけでもありますまいに?!
……ニューヨーク州司法当局が調査を始め、ボーナスを獲得した社員リストも入手している。ニュージャージー州のミルグラム司法長官は金融危機の引き金をひいたAIGの社員がボーナスを得ていたのかを調べたいと指摘した。ボーナスの受領者の一覧などをAIGに要求、5日以内の回答を求めた。この要請に多くの他州の司法当局も加わったという。……
2009年3月21日 CNN.co.jp
■もはや完全な「犯罪者」扱いであります。日本でもインサイダー取引で逮捕された村上某氏が「金儲けは悪いことなのか?」と開き直って虚しい暴言を吐いて見せたことがありましたが、今の米国で同じ事を公言するのは文字通り命懸けなのでしょうなあ。しかし、巨額なボーナスを受け取った!と憎悪の的になっている人達が行った本当の悪事は高額な所得を得たことではなくて世界の金融システムを崩壊させたことのはずなのですが……。米国人の怒りは単純過ぎませんかな?
■今月上旬にNHKが放送した『未来への提言』というインタヴュー番組にエマニュエル・トッド氏が登場しまして、現代世界の諸問題に関して実にてきぱきと的確なコメントをしておりましたなあ。無駄な話は一切なし。日本にとっての最大の問題は「人口問題」なのだと痛い指摘をしたトッド氏は、米国が抱える最大の問題は「教育問題」だということになるのだそうです。日本の人口問題は右肩上がりの高度成長期が忘れられない自由民主党という生きた化石みたいな政党と徒党を組んだ官僚が、好き勝手に統計数値を曲解して「明るい未来」を偽造し続けた結果の世界第一位の早さで進む少子高齢化現象。ソ連崩壊を人口調査のデータだけから予想して的中させたトッド氏から見れば、この先の日本が経験する恐ろしい苦難が分かるのでしょう。
■ずっと前からさまざまな兆候があったのに、「日本は何をしていたのでしょう?」と冷笑的に政府が大失敗した過去を思い出せながら、近い将来に関しては「移民に関する無知と臆病さ」を指摘しておりました。今のオバマ政権が前のアホ政権の負債を背負って苦闘しているように、日本でも万が一にも政権交代などが起こったら、半世紀以上にも亘って自民党が積み上げた負の遺産を継承しなければなりません。中でも田中角栄さんが猛烈な勢いで作り上げた政治システムを「ぶっ壊す」のは大仕事でありましょう。
■さてさて、トッド氏が指摘した米国が抱える最大の問題の方ですが、彼が言うには「優秀な人材が弁護士業か金融業に集中する」今の米国を作り上げたのは独特な教育システムに原因があることになります。技術分野や製造業には人材が集まらず、文化芸術分野も金儲け主義に走って空洞化している米国が変わるためには、教育システムを根本的に改善しなければならないそうで、それには100年くらいのスパンで取り組む必要がありそうだとか……。バブル後の日本が経験した「失われた10年」に対する再評価が始まっているそうですが、トッド氏の予感が当っているのなら米国は「失われた100年」を過ごさねばならないかも?
■ここから、世にも恥ずかしい米国発のボーナス騒動のお話です。
米政府の救済を受けた保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が幹部へ高額な賞与を支払った問題に怒ったコネティカット州の小政党では、同州内のAIG幹部の邸宅を回るバスツアーを計画している。コネティカット・ワーキング・ファミリーズ党は、ウェブサイトで「われわれ全員がAIGに怒っている」とメッセージを掲載。その上で「裕福で恥ずべき人々のライフスタイル」と名付けられたバスツアーへの参加を呼びかけている。同ツアーは21日に催行予定で、集合場所はコネティカット州ウィルトンの同党本部となっている。……賞与を受け取った従業員の間からは身の危険を案じる声も出ており、一部の幹部は殺害をほのめかす脅迫状を受け取ったという。同党の広報担当者は、バスツアーでどの幹部宅を訪ねるかについては言及していない。同ツアーの催行予定人数は約50人。……
2009年3月22日 ロイター
■ツアー参加者の持ち物は、水筒・弁当に御菓子は300円以内で……という小学校の遠足みたいな事にはならないにしても、お国柄で自動小銃や散弾銃、巨大なサバイバル・ナイフや手榴弾などは「持って来てはいけない物」に指定されそうですなあ。それにしましても、怒りの表わし方が直截な上に幼稚です。ツアーに参加するくらいに熱心に怒っている人なら、豪勢な邸宅を前にしたら投石や唾棄ぐらいはするでしょうし、ネット社会ですからグーグル地図とデジタル写真を組み合わせて詳しい場所を世界中に発信する人も出て来そうです。標的にされる方とは生きた心地もしないでしょうなあ。まさかGPSを利用して手製の無人爆撃機を飛ばすようなマニアまでは出て来ないとは思いますが……。
(CNN)米政府の資金注入を受け公的管理下にある保険大手AIGの一部幹部社員が高額ボーナスを得ていた問題で、全米の20州の司法当局が調査を開始したことが20日判明した。コネティカット州ではAIGのリディ最高経営責任者(CEO)と役員11人に召喚状を送る方針。召喚状は州の消費者保護関連法案に基づく。ボーナスを得た社員リスト、関連契約書類の提出や注入された税金がボーナスに使われたのかの事実確認などを求めている。同州の司法当局者は、税金を使って再建されている企業の従業員はボーナスの詳細を示す法的、倫理的義務があると主張している。同州にはAIGの従業員多数が居住しているという。
■なるほど、前のニュースがコネチカット州発だったのは「従業員多数」が住んでいるからなのですなあ。でも、高額所得者も多いはずですから住民税やら地元の諸団体に対する寄付行為など、感謝されてもよい事もしていたのではないでしょうか?まさか所得を丸ごとカリブ海のペーパーカンパニーに避難させ、あれこれ帳簿をいじくって借金塗れにして税金逃れを画策していたわけでもありますまいに?!
……ニューヨーク州司法当局が調査を始め、ボーナスを獲得した社員リストも入手している。ニュージャージー州のミルグラム司法長官は金融危機の引き金をひいたAIGの社員がボーナスを得ていたのかを調べたいと指摘した。ボーナスの受領者の一覧などをAIGに要求、5日以内の回答を求めた。この要請に多くの他州の司法当局も加わったという。……
2009年3月21日 CNN.co.jp
■もはや完全な「犯罪者」扱いであります。日本でもインサイダー取引で逮捕された村上某氏が「金儲けは悪いことなのか?」と開き直って虚しい暴言を吐いて見せたことがありましたが、今の米国で同じ事を公言するのは文字通り命懸けなのでしょうなあ。しかし、巨額なボーナスを受け取った!と憎悪の的になっている人達が行った本当の悪事は高額な所得を得たことではなくて世界の金融システムを崩壊させたことのはずなのですが……。米国人の怒りは単純過ぎませんかな?