旅限無(りょげむ)

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言った、言わない、記憶に無い 其の壱拾四

2009-03-18 17:37:26 | 政治
……東北の建設業界に詳しい国会議員秘書は「ゼネコン汚職後に水面下で談合は復活したが、業界では教訓として、わいろによる受注工作は行わなくなった」と前置きし、こう話す。「代わりに頼ったのが小沢氏の影響力だ。依然として大手ゼネコン支店幹部が談合を仕切るが、その後に小沢氏の元秘書の了承を得て、受注額に応じて小沢氏側への献金額が決まる。つまり、裏のわいろが表の献金に変わったわけだ」捜査関係者の話では、小沢氏側が18年まで、多数のゼネコンから年間総額2億円の資金を集めていた疑いが強いことが分かっている。そのうちの多くが、東北地方を中心とした下請け業者側をダミーにした献金やパーティー券の購入だったとみられている。ある下請け業者は「献金の入金が遅れると、小沢氏の元秘書から『早く振り込め』と催促された」と証言した。

■これまで多くのマスコミが「小沢王国」という慣用句を愛用し、「選挙に強い小沢」というフレーズも多用していたのですから、小沢クラッシャー代表だけが持つ特殊な政治力の存在をずっと前から知っていたということになります。その力の源泉と構造については何も報道せず、「王国」なる前近代的な用語を慣用していた姿勢は問題にされるべきでしょうなあ。自民党を飛び出してから、長年の野党暮らしをしているとは言っても、田中派を割って竹下派、そこから飛び出してからは新党濫造を繰り返し、常に政局の中心近くに君臨し続けている本当の理由は何なのか?

■そこには一歩も踏み込まずに世論調査の結果などに悪乗りして、「政権交代は間近!」と書き立てたかと思えば、「民主党分裂!」と見も蓋もない観測記事を垂れ流し、東京地検の特捜部が動いたら「検察の正義」に威を借りて、これまでの迷走報道をチャラにできるからなのか?「小沢辞任!」と書き立てております。新聞やテレビの報道を鵜呑みにしていたら、大切なことがまったく見えなくなるという典型的な例がまた一つ増えたということなのでしょうなあ。

■「選挙に強い小沢」というフレーズの裏側に、田中角栄さんが作り上げた地方の公共事業を食い物にする「談合」と「献金」と「選挙」という公金還流システムが生き残っている可能性はあったのに、それを調べもしないで表面的な「政権交代」騒動を煽り立て、「天下り」を中心とした「官僚叩き」に偏重して行ったのも、政治に対する国民の信頼を回復させるのには逆効果だったかも知れません。

■一説には12兆円もの税金が天下り役人を養うために毎年浪費されているという話もありますが、減ったとは言え莫大な公共事業の予算が都市部から地方へ還流してる構造は変わっておらず、そこに選挙の「地盤」と称する縄張りを持つ地元議員が、大昔の地頭か山賊の頭(かしら)のように目の前を通過する公金から何がしかの物を抜き取るシステムが二世・三世議員の封建領地と化した地方には隠然と存在している限り、公共事業予算は際限も無く水膨れして政治腐敗の元凶であり続けるのでしょうなあ。

■細川政権という奇妙な野合政権が誕生させた小沢さんは、短命だった政権なのに「小選挙区制」と「政党助成金」の両制度を遺産として残しました。これは『政治改革4法案』の二本柱となる制度改革なのですが、どうやら本当の発案者は田中角栄さんだった可能性が高いような気がします。昨日、小沢クラッシャー代表の記者会見の内容には、御本人が目指した「政治改革」と、自分の政治力の源泉となっている地方に根深く残っている公共事業の談合構造という、新旧二つの政治課題に引き裂かれてしまった宿命的なものがあったように思えます。

■自らの進退と政治献金問題を絡めて語る小沢代表の立場は、一見、盗っ人猛々しい開き直った不遜なようにも思えますし、主張内容は矛盾の塊のようでもあります。しかし、これまでの歴史的な経緯を考えますと、小沢代表だからこそ語れた話だったとも言えそうです。政権与党ではないのですから、絵に描いたような「職務権限」を乱用した受託収賄は成立しそうもない野党暮らしをしている間も、自分の秘書たちには「口利きはするな」と厳命していたという元側近の証言が『週刊文春』3月19日号に載っています。どうやら、請託を受けた職務権限を持っている公人が犯す受託収賄罪は成立しないという絶対の自信が大学院法学部出身の小沢代表にはあったようです。