旅限無(りょげむ)

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言った、言わない、記憶に無い 其の壱拾参

2009-03-17 18:26:24 | 政治
……「(献金は)ダムや空港など東北地方の公共工事の受注のためだった」ダミーの政治団体を使った小沢氏側への迂回献金が、平成18年までの12年間で2億円近くにのぼった西松建設。捜査関係者によると、西松前社長の国沢幹雄容疑者(70)ら西松の関係者は特捜部の調べに、“実弾”の趣旨についてそう供述しているという。……5~6年に建設相や宮城県知事、仙台市長らが、大手ゼネコン幹部らとともに摘発されたゼネコン汚職事件……。ゼネコン側が、公共工事をめぐる、いわゆる“天の声”を期待して政治家にわいろを渡すという「政・業」の癒着構造……事件の背景には、東北地方の強固な談合体質とその変質があったといわれている。

■長野県、和歌山県、大分県などの地名も出て来ているのですから、取り立てて「東北地方」だけを異界のように扱うのは如何なものでしょうなあ。北海道や沖縄あたりも、相当に怪しい話が転がっているようですし、群馬県なども……。


……「東北では古くから大手ゼネコンの支店幹部が談合の仕切り役となって業界をまとめ、うまみのある大規模工事は大手が独占していた。西松などの後発組は、それが不満で発注権限を持つ地方首長らにわいろを渡すようになり、強固だった談合組織に亀裂が入った」西松関係者によると、ゼネコン汚職後、西松が頼ったのが、自民党を離党したばかりの小沢氏だった。……自民党元副総裁の故金丸信氏の存在がある。金丸氏は竹下派七奉行の中でも、小沢氏を特に重用。金丸氏の次男が西松元社長の娘と結婚しており、「金丸氏から西松を託されたのが小沢氏だった」(西松関係者)という。

■古くは佐藤派から分離独立したのが田中派で、そこから分かれたのが竹下派、田中角栄さんは早世した息子と同年齢だった小沢一郎さんを事の外可愛がっていたのは有名な話ですが、田中首相が金権政治を批判されて辞任して再起を狙うようになってからは、総裁候補を持たない巨大派閥となって他の派閥から4代の首相を担ぎ出しているのに倦んだ連中が竹下総理を実現する為に決起したという流れがありました。竹下派の大番頭だった金丸さんが暗躍して田中金脈の基盤となっていた建設業界ネットワークを根こそぎ奪ったという話もありまして、それを小沢一郎さんが継承したという事なのでしょうなあ。


建設業界に君臨した故田中角栄元首相の秘蔵っ子とも呼ばれた小沢氏は、自民党を出た後も、東北地方の建設業界に影響力を持ち続けてきたとされる。西松はこのころ、ダミーの政治団体を使った小沢氏側への迂回献金を始めた。 「○○(大手ゼネコン)さんからは、これくらいの献金を受けている。西松さんも、もっと増やすことはできないのか」小沢氏側の窓口は、小沢氏の「側近中の側近」といわれた元秘書だったとされる。西松は元秘書と、年間2500万円程度を献金する約束を取り交わした。献金先を指示されるなど、元秘書の“言いなり”だった。

■現在、厳しい取調べを受けている第一秘書が何かを証言したというリーク情報は見当たらないので、頑として口を割っていないのでしょう。一説にはこの年度末に東京地検特捜部は、他の地方から多数の検事を動員しているという話もあるようです。人海戦術を使って何を調べるのでしょう?

言った、言わない、記憶に無い 其の壱拾弐

2009-03-17 07:49:33 | 政治
民主党の小沢一郎代表の公設第1秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕されたことについては「コメントしない。パーティー券購入と政治資金提供は、ちょっと異なる」と述べるにとどめた。
2009年3月5日 産経ニュース

■飽くまでも小沢ケースと同列には扱われたくない!という態度が明らかです。しかし、どちらも同じダミー団体から資金を提供されていますし、どうやらダム建設の受注を目的とした献金だったことも共通していると思われるのですが……。


小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、西松建設側が東京地検特捜部の事情聴取に、「ダム工事受注のため複数の政治家側に献金などをした」という趣旨の供述をしていることが14日、捜査関係者の話で分かった。西松は、小沢氏の地元・岩手県の胆沢(いさわ)ダム工事受注をめぐって小沢氏側に口利きを依頼していた疑いが浮上しているが、西松関係者などによると、献金の目的とされるダム工事には、長野県の浅川ダムや大分県の久木野尾(くぎのお)ダムが含まれていたとみられる。

■新たな証言が得られると即座に報道機関に流す手際の良さには感心しますが、身柄を拘束されていて外部と接触できない状態に置かれている人間が何を言ったのか?実際には誰にも現時点では分からないのですが、何故か「正義の味方」の検察から出て来る話は基本的に本当だと暗黙の内に前提されているのは無気味です。とは言っても、こうして岩手県と長野県の「ダム工事」を受注することが献金の目的だった可能性は高くなっていますから、小沢代表のみを血祭りに上げれば事が済むとは思えませんなあ。


……さらに、「各地のダム工事受注を期待して、国会議員や自治体の首長など複数の政治家側に献金やパーティー券購入をした」との趣旨の供述をしていることが新たに判明した。……西松は平成17年10月、大分県の広瀬勝貞知事を支援する団体が開いた政治資金パーティーで計100万円分を購入。その2カ月後に、他社との共同企業体(JV)で県発注の久木野尾ダムの工事を約45億円で落札した。また、長野県の村井仁知事の衆院議員時代の秘書だった県の参事が2月、特捜部の事情聴取を受けた後、自殺した。検察関係者によると、村井氏が当選した18年の知事選前、西松から村井氏側にヤミ献金が渡った疑いがあることから、聴取は行われたという。……ヤミ献金は、前任の田中康夫知事の「脱ダム宣言」で中止になった浅川ダムの工事計画の復活を見込んだものだった疑いがある。

■やっぱり、長野県で起こった政権交代の衝撃が建設会社を吸い寄せていたとしか考えられません。自民党の国会議員に加えてあちこちの地方自治体の首長たちにばら撒かれた西松建設からの政治資金のすべてを洗い直さねば、検察側の正義は揺らぎそうですなあ。


西松は伝統的に土木事業を得意としており……平成19年までに全国で21のダムを完成させている。昭和55年には、二階俊博経済産業相の地元・和歌山県の椿山(つばやま)ダムの工事を他社とのJVで受注。西松OBによると、この工事を契機に、西松は二階氏への支援を始めたという。二階氏は当時、県議だった。二階氏側は、西松にパーティー券を購入させるなどしていた。産経新聞の取材に、大分県知事室は「知事は西松から工事受注のための働きかけを受けたことはない」、長野県秘書課は「西松から知事への働きかけなどはない」としている。
2009年3月15日 産経新聞

■小沢代表も「働きかけ」を否定しているのですから、二階さんや長野県知事などの証言との違いを際立たせる決定的な事実を示さなければ、検察の権威は地に落ちるかも知れません。

言った、言わない、記憶に無い 其の壱拾壱

2009-03-17 07:49:00 | 政治
県建設部によると、西松建設が県発注の工事を行ったのは記録が残る平成5年以降、14年までに7件あり、いずれも共同企業体としての受注だった。村井知事当選後の受注はないという。
2009.2月27日 産経ニュース

■田中県政は2000年(平成12年)から2006年(平成18年)の間ですから、産経ニュースが調査した記録の最後の2年間は時期が重なります。村井県政が始まってから3年が経過していますから、その間に受注が無かったのは「脱ダム宣言」の効果がまだ残っているからかも知れません。


……主なゼネコン9社の東北地方における過去5年間の公共工事の請負状況を読売新聞が集計したところ、西松建設の請負額は計約390億円で3位に……。同社は売上高ベースで9社のうちの下位に位置している。……前田建設工業(約498億円)、鹿島(約478億円)に次いで3位だった。……東北では、鹿島を除く大成建設、清水建設、大林組の大手3社をしのいでいた。西松建設はこの5年間で、岩手県の胆沢ダム(約47億円)のほか、秋田県の森吉山ダム、山形県の長井ダム、宮城県の長沼ダムなどの本体工事や関連工事を、幹事社を務める共同企業体(JV)で請け負った。特にダム工事が目立った05年度では、同社の東北地方における土木工事の請負額は、全国の3割近くを占めた。

■もう一度確認しておきますが、長野県知事選挙で村井さんが当選したのは2006年でした。その時期に脱「脱ダム宣言」を期待して大小のゼネコンが村井知事に献金し、以前から長野県の「共同企業体」に食い込んでいた西松建設が、田中県政時代の「脱ダム宣言」に追われるように東北地方に進出して更なる実績を積み、村井県政が始まるのに合わせて長野県に再び食い込もうとしたようにも見えますなあ。


……ゼネコン各社は、小沢事務所の影響力を期待して、下請け業者などを使って、小沢代表側に年間1000万円程度の献金などをしていたが、西松建設はこれとは別に、ダミーの政治団体を経由して年間1500万円程度を献金していた。ダミー団体経由の献金は、ライバル社に気付かれないようにする狙いもあったとされる。東北地方の地元大手業者は、「かつて西松建設は弱かったが、ここ10年で工事の受注が目立つようになった」と指摘している。
2009年3月16日 読売新聞

■表の政治献金と外為法を破って運んだ裏金を使って「裏献金」をしていた西松建設が、小沢代表には1500万円、村井知事には1000万円を違法に渡していたのなら、検察としては金額のバランスも申し分が無いところだったでしょう。小物の方を先に着手して大物は解散総選挙の日程がはっきりする直前に逮捕する計画だったのかも知れませんが、小物の秘書が自殺してしまったことで検察はパニックになって小沢代表の秘書を逮捕せざるを得なくなったというのが『週刊文春』の読み。


長野県の村井仁知事は5日の県議会一般質問で、準大手ゼネコン西松建設(東京)関連の政治団体が購入した自身の政治資金パーティー券の代金について「政治資金規正法上、適切に処理している。返還すべきとは認識していない」として、現時点で返還する考えのないことを明らかにした。西松建設OBが代表だった「新政治問題研究会」は平成17年7月、自民党衆院議員だった村井氏のパーティー券20万円分を購入した。

■「死人に口無し」とは申しますが、政治資金の全貌を詳細に知っている重要人物が自ら命を絶ったことで、村井知事の「適切に処理」という発言を崩すのは不可能なのでしょう。長野県を舞台とした献金疑惑に関する検察側からのリークはまったくありません。一方の小沢代表に懸けられた疑惑に関しては集中豪雨のように真偽不明の情報が乱れ飛んでおります。例の漆間官房副長官から飛び出した「自民党には波及しない」発言の根拠は、小沢側には多額の現金が流れ、自民党の議員はパーティー券を買って貰っているという違いと、突出した金額にあったようですが、村井長野県知事も「パーティ券」に守られているわけですなあ。でも、検察が追求しようとしていたのは裏側で流れた「1000万円の現金」だったのですが……。