旅限無(りょげむ)

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言った、言わない、記憶に無い 其の参

2009-03-14 18:27:19 | 政治
公務員制度改革を巡っては、改革の道筋を示す「工程表」を策定する際にも、1月中の政府決定を目指した甘利明行革担当相に対し、反発した漆間氏らの圧力で河村建夫官房長官が「調整不足だ」と2月に遅らせた経緯がある。麻生太郎首相の足元で官僚が抵抗する構図に、「改革をサポートするはずの官邸が、官僚の代弁者として足を引っ張っている」(行革事務局幹部)との指摘もある。

■何が何だか分からない内に解散総選挙をしてしまえ!という実に乱暴な発想で産み落とされたのが麻生コロコロ首相の内閣ですから、実際の行政担当能力が有るのか無いのか、発足当時は誰もまったく気にしていなかった節があります。新聞各社の政治欄は、解散総選挙の「日程」予測ばかりが先行していましたし、週刊誌なども気の早い「当落予想」などを好き放題に掲載していたようです。そんな事をしているから活字メディアの読者が減って行くのでしょうが、「100年に1度の危機」に見舞われていた世界第2位のGNPを誇っているはずの国としては、この半年ほどの政治記事は場当たり的で内容も貧困で、「蜂に刺された程度」発言から「生活給付金」騒動に到る報道すべき優先順位をまったく弁えない記事の羅列は国民をますます不安にしただけでした。

■唯一の存在理由だった解散総選挙がだらだらと先延ばしされる間に、少なくとも政権交代さえ無ければ選挙の影響をまったく受けない官僚たちが軽量級内閣の下で深く静かに暴走していたのかも知れません。お役人はイザとなったら政治責任などまったく取らない人達ですから、暴走した後始末はそれを許した政治家とマスコミ、そして有権者・読者である国民に押し付けられることになります。


国家公務員制度改革基本法を成立させた渡辺喜美元行革担当相は「典型的な、霞が関による骨抜きだ。強大な官僚組織の幹部人事を政治主導で実現するには、局長は最低でも官房副長官以上でなければならない」と語る。
2009年3月13日 毎日jp

■漆間官房副長官が指揮を執った「骨抜き」工作は、現行の官僚権力ピラミッド構造には指一本触れさせないぞ!という強烈な意志を感じます。この無気味さは人事院の改革を巡る暗闘と同じ根っこから出て来ているのではないか?などと想像しておりましたら、非常に気になる新聞記事を発見しましたぞ。何と小沢クラッシャー代表の公設第一秘書が逮捕される直前の話というのですから、同時多発テロみたいな印象も受けますが……。


政府が人事・行管局設置のための国家公務員法改正案……の原案骨子を自民党行政改革推進本部の公務員制度改革委員会に提示したのは2月26日。これに「改革派」と称される塩崎恭久元官房長官や、珍しく会合に姿を見せた中川秀直元幹事長らがかみついた。原案は、内閣人事・行管局に、総務省行政管理局にある機構・定員管理機能を加え、行政情報システムや独立行政法人(独法)の新設・廃止の審査機能も移管するとした。中川氏は「独法は公務員制度改革基本法が想定しない話だ」などと組織の肥大化に懸念を表明。塩崎氏も「人事と関係ないことを入れるのは反対だ」と機構・定員管理機能以外の移管に反対の意向を示した。このため、会合では骨子案の了承を見送り、次回会合の見通しも立っていない。

■奇しくも2月26日という意味深な日に提示された改正法案に、「麻生おろし」の急先鋒だった2人が反対したというわけです。政府公認の「天下り一括管理センター」を作るだけだ!と野党から猛烈な反対を受けていた同法案は、問題の焦点がさっぱり定まらないまま自民党内の権力闘争の具に成り下がり、渡辺喜美元行政改革担当相が自民党を離党する騒ぎになったのでした。

言った、言わない、記憶に無い 其の弐

2009-03-14 18:24:09 | 政治
■週末になってからは、与党も野党も右顧左眄(うこさべん)の「様子見」態勢に入ったようですが、何故か麻生コロコロ首相だけが妙に元気なようです。何か良い事でも起こったのでしょうか?政界を揺るがす発言をした漆間官房副長官は、「辞めろと言われれば辞めるだけ」と実に淡々とした態度のままで週末を過ごしているのでしょう。でも、任命権者の麻生さんは得意のコロコロ変わる表現を駆使して漆間さんを必死に擁護していましたから、解任などされる心配はなさそうです。

……10日午前の閣議後の記者会見では漆間氏の対応を批判する声が出た。法相経験者である鳩山総務相は「今の時代、国策捜査はあり得ず、他党に(捜査が)及ぶとか及ばないなんてことが分かるはずがない。分かるはずがないことは言わない方がいい。あらぬ誤解を招く。強い怒りを感じた」と述べた。

■いつの時代にも「国策捜査」は有るものなのではないでしょうか?特に日本の検察が持っている機構のままなら、暴走もするでしょうし、組織防衛のためになら何でもやれるのですからなあ。民主党の政権構想が実現したら検察も含めて役所の上層部は総取っ替えになるそうですから、麻生コロコロ内閣の支持率が奈落の底に落ちる前に、民主党が自滅して雨散霧消するくらいの「国策捜査」はやるでしょう。まして鳩山総務相も同じ釜の飯を食った田中派OBなのですから、検察と田中派との間に根強く残る怨念の深さはご存知のはずです。


甘利行政改革相も、「漆間氏は官邸の事務の最高責任者であり、警察庁長官だったから、単なる観測発言があたかも検察情報と接しているかのような誤解と疑心暗鬼を与えた。極めて不適切な発言だった」と語った。
3月10日 読売新聞

■人事院のボスに手もなく捻られてしまった甘利行革相が、役人全体のボスを相手に何を言っても唇寒しの感があります。「検察情報」が毎日の新聞紙面にぶちまけられているというのに、政府中枢にだけは1滴も流れて来ないなどと、一体、誰が信じられるでしょう?三権分立が原理的に成立しないような仕組みを一刻も早く是正しないと、国民が選んだ議員によって構成されている議会が最も弱い権力しか持てない油断が民主主義が続きます。既に、今回の検察が仕掛けた「国策(庁益)捜査」は、戦前の2.26事件と同じものだと指摘する声があちこちから出始めているのですから、制度の抜本的な改革が必要でしょう。でも、それが出来るのは国会だけで、そこで少しでも予告でもしようものなら忽ち「国策捜査」の餌食になるのでは、戦前のテロに怯えた政治家たちの時代と何も変わってないことになりますなあ。


国家公務員の幹部人事を一元化するため、政府が10年4月の設置を予定する「内閣人事・行政管理局」の組織案で、当初は官房副長官級を想定していた局長職を、政務官級に格下げしていたことが12日、明らかになった。強力な局長の誕生を懸念する官僚トップの漆間巌官房副長官らが格下げに動き、13日の自民党行政改革推進本部(本部長・中馬弘毅元行政改革担当相)に提示される見通し。ただ「副長官級でないと、霞が関(官僚)の幹部人事を仕切るのは難しい。霞が関による改革の骨抜き工作だ」(自民党閣僚経験者)との反発も出ており、最終決定にはさらに曲折が予想される。

■人事院から上がった烽火を合図に、深く静かにお役人の一斉蜂起が始まったようですなあ。その本陣に居るのが漆間官房副長官だとすれば、今の麻生コロコロ首相など単なる案山子扱いされてしまいそうです。漆間さんを「連れて来た」のは安倍元首相だそうですが、小泉改革の継承者として総理大臣になった人が、北朝鮮による拉致犯罪の捜査で活躍したとかいう理由で官僚のトップに押し込んだのなら、小泉改革には官僚機構の改革は含まれていなかったことになります。やっぱり、郵便局が抱え込んでいる莫大な郵貯と簡保の資産を米国に献上するだけの改革だったのでしょうか?


同局の設置は、政治主導で各府省の幹部人事を一元化し、省庁間の縦割り行政を是正するのが狙いだ。このため、局長は各省の事務次官よりも格上となる官房副長官級とすることで政府案は固まっていた。……3月中の国家公務員改革関連法案の提出を前に、官僚の意を受けた漆間氏らが「骨抜き」を働きかけた。……

■官房副長官という職責ならば、麻生コロコロ首相に仕えるのが本分のはずが、これでは麻生内閣を引っ張りまわしているように見えます。福田ホイホイ前首相よりも御し易いと官僚たちから歓迎されているという噂もある麻生コロコロ首相ならば、国家公務員改革の法案を骨抜きにするくらいは朝飯前なのでしょう。そうなると小沢クラッシャー民主党代表に仕掛けた政治資金規正法違反のスキャンダルは、党内に燃え上がっていた「麻生おろし」を一挙に沈静化させる深謀遠慮だったのではないか?という憶測が根底から崩れてしまうことになりそうですなあ。検察と警察のトップが阿吽の呼吸で政権交代を阻止すると同時に現政権が進める公務員改革の流れを堰き止めてしまう一石二鳥の、役人の・役人による・役人のための「国策捜査」が始まったということになるのかも?