いまさらながらの原点回帰
あの世に聞いた、この世の仕組み
極楽飯店.55
※初めての方はこちら「プロローグ」、「このblogの趣旨」からお読みください。
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未だ壁が取り払われていない坂本、田嶋、藪内は置き去りのまま、白井の質問はさらに続いた。
とはいえ、坂本たちに「取り残されている」といった表情は見られない。彼らにとっては、俺たちの間で何が起きているかが捉えられないし、さらに言えば、このやりとり(繋がり)が、時間を超えた(時間のない)次元で行われているため、彼らにしてみれば、ほんの一瞬の中で行われているものにすぎないのだ。
(いや、ですから…。心を開けなんて簡単に言いますが、臆病な私たちにとって、防御壁(カルマ)を消すということは至難の業なんです。私自身も、なぜ今この状態にあることができているのかも理解できていないんです。自分の意志とは関係なく、何かこう、ハプニング的に起きたような……)
白井が源(ソース)を通じて無言のまま閻魔にそう問い掛けると、彼もまた(その疑問の中に、すでに答えがあるじゃないか)と、無言のまま返答する。
(まず第一に、「自分でカルマを消そう」という、その態度自体が間違っているんだよ。だって、考えてもみてごらん。そのカルマを消そうとしている「自分」は、カルマあってこそ存在できる「自分」なんだよ。壁があるからこそ生まれる自分だ。だからこそ、「自分がカルマを消そう」とすれば、そこに確固たる「自分」が在り続けてしまうでしょ。ムネっちが指摘したとおり、まさに「自分を守るために」カルマを抱えているんだから)
(あっ……。そうか、確かに)
(だからね、「自分でカルマをなくそう」という試みは空回りするだけだよ)
(いや、……だとしたら、余計にどうすればいいかわからないじゃないですか)
(難しく考えすぎだよ。「自分で」しようとせずに「繋がり」を信頼して、それに身を委ねるんだ。源(ソース)は燦々と降り注ぐ太陽のように、いつだって僕たちに熱を与えてくれている。君たちが冷却装置を切ってくれさえすれば、その熱は氷を溶かしてくれるんだ。繰り返し話している通り、「思考」と「恐れ」がなければ、その状態は自然に訪れるんだよ。君たちだって何度もその状態を経験しているじゃないか)
(何度も、経験してる? でもそれは、さっき言っていた自覚も一緒に失っている、寝ている時の話しですよね)
(いや、それ以外でだって日常的に経験してるさ。ただ、その状態を意識的に維持できていたかといえば「ノー」だけどね。思い出してみて。「思考」と「恐れ」が消え、源(ソース)の優しさと暖かさに触れることができる状態、それがどんな時かを)
なるほど…。そういうことか。
あのドアを通り、プリズムの向こうへと入った時に感じた「ここに来るのは初めてじゃない」という感覚は正しかった。
閻魔の示す通り、そこへは何度も、日常的に足を踏み入れていた。
ただ、それがあまりにも瞬発的なため、記憶に定着していないだけ。それでもやはり、その感覚は誰もが経験済みだ。
それに気づいたとたん、俺は、つい声を上げて笑ってしまった。
「あははははははは! ……なるほど確かに、この時ばかりは思考も恐れも停止するな」
そして、俺と閻魔は目配せすると、二人同時に白井を見つめ、さらに大げさに笑ってみせた。
「ほら白井、キョトンとしてないで早くおまえも笑ってみろよ」
「え?なに?どういうことですか?………あっ!そうか!!あはははは! なるほど!確かに!あはははは……」
……つづく。
←今日は、笑いながら。
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未だ壁が取り払われていない坂本、田嶋、藪内は置き去りのまま、白井の質問はさらに続いた。
とはいえ、坂本たちに「取り残されている」といった表情は見られない。彼らにとっては、俺たちの間で何が起きているかが捉えられないし、さらに言えば、このやりとり(繋がり)が、時間を超えた(時間のない)次元で行われているため、彼らにしてみれば、ほんの一瞬の中で行われているものにすぎないのだ。
(いや、ですから…。心を開けなんて簡単に言いますが、臆病な私たちにとって、防御壁(カルマ)を消すということは至難の業なんです。私自身も、なぜ今この状態にあることができているのかも理解できていないんです。自分の意志とは関係なく、何かこう、ハプニング的に起きたような……)
白井が源(ソース)を通じて無言のまま閻魔にそう問い掛けると、彼もまた(その疑問の中に、すでに答えがあるじゃないか)と、無言のまま返答する。
(まず第一に、「自分でカルマを消そう」という、その態度自体が間違っているんだよ。だって、考えてもみてごらん。そのカルマを消そうとしている「自分」は、カルマあってこそ存在できる「自分」なんだよ。壁があるからこそ生まれる自分だ。だからこそ、「自分がカルマを消そう」とすれば、そこに確固たる「自分」が在り続けてしまうでしょ。ムネっちが指摘したとおり、まさに「自分を守るために」カルマを抱えているんだから)
(あっ……。そうか、確かに)
(だからね、「自分でカルマをなくそう」という試みは空回りするだけだよ)
(いや、……だとしたら、余計にどうすればいいかわからないじゃないですか)
(難しく考えすぎだよ。「自分で」しようとせずに「繋がり」を信頼して、それに身を委ねるんだ。源(ソース)は燦々と降り注ぐ太陽のように、いつだって僕たちに熱を与えてくれている。君たちが冷却装置を切ってくれさえすれば、その熱は氷を溶かしてくれるんだ。繰り返し話している通り、「思考」と「恐れ」がなければ、その状態は自然に訪れるんだよ。君たちだって何度もその状態を経験しているじゃないか)
(何度も、経験してる? でもそれは、さっき言っていた自覚も一緒に失っている、寝ている時の話しですよね)
(いや、それ以外でだって日常的に経験してるさ。ただ、その状態を意識的に維持できていたかといえば「ノー」だけどね。思い出してみて。「思考」と「恐れ」が消え、源(ソース)の優しさと暖かさに触れることができる状態、それがどんな時かを)
なるほど…。そういうことか。
あのドアを通り、プリズムの向こうへと入った時に感じた「ここに来るのは初めてじゃない」という感覚は正しかった。
閻魔の示す通り、そこへは何度も、日常的に足を踏み入れていた。
ただ、それがあまりにも瞬発的なため、記憶に定着していないだけ。それでもやはり、その感覚は誰もが経験済みだ。
それに気づいたとたん、俺は、つい声を上げて笑ってしまった。
「あははははははは! ……なるほど確かに、この時ばかりは思考も恐れも停止するな」
そして、俺と閻魔は目配せすると、二人同時に白井を見つめ、さらに大げさに笑ってみせた。
「ほら白井、キョトンとしてないで早くおまえも笑ってみろよ」
「え?なに?どういうことですか?………あっ!そうか!!あはははは! なるほど!確かに!あはははは……」
……つづく。
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