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極楽飯店.31

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極楽飯店からの迎えが来るまで、残り一時間数十分。

白井が予約の電話を切ってから、中途半端な空白が生まれた。出会って間もない男同士だと、会話もさほど盛り上がらない。

最初のうちは「何が食えるか」などといった話題で場が和んでいたが、話が尽きると同時に沈黙ができ、何をするということもなく、ただ時間だけが流れていた。


人は、何をするということもなく過ぎる時間の中にいると、色々と考えてしまう癖があるようだ。

ボーッとしているように見えても、頭の中では絶えず独り言が巡っている。

その状態は、あまりにも当たり前に慣れ親しんだものになっていて、自分がそうして考え事をしている事すら、普段の生活の中では見落とされてしまう。自分が頭の中で独り言を呟いていることにさえ気づけてはいない。

まさに、今もこうしてアレコレと考えているのだが、これまでとは明確に違う何かがある。

そう、自分の思考を、他人事の様に観察している別な自分がいる、というこの奇妙な感覚こそが、その何かだ。

これまで無自覚に流されてきた思考を、流すことなく客観的に把握できているというこの状態が不思議でならない。

そして、その感覚は、奇妙さと共にある気づきをもたらしてくれていた。


何かに集中し、状況に適した意識的な思考と、無意識に流されている独り言。

暇さえあれば無意識な独り言が続いているのだから、その配分を切り分けたとしたら、意識的な思考よりも、無意識に流されている独り言に費やされている時間の方が、圧倒的に多い。

だとすれば、だ。

自分の思考が現実を創るのであれば、俺の目の前にある現実のほとんどは、無意識に流されてきた独り言によって創り上げられたと言っても過言ではない。

なんと馬鹿馬鹿しいことだろう。俺は今まで、自分の「無自覚な思考」によって、無自覚に現実を創り上げてきたのだ。

そして、もう一つの問題は、「無自覚な独り言」のその内容にある。

振り返ってみると、俺の独り言のほとんどは、不平不満や何かへの恐れ、保身や怒りなどといった、ろくでもないものばかりだった。

暇さえあればそんな事を考えていたのだから、それ相応の現実に身を置いていても当然ではないか。

これまでの人生の中で、思い通りにならない出来事に遭遇するたび、心のどこかで「やっぱりダメか」などといった落胆があった。

が、よくよく考えてみれば、「やっぱり」と感じられるということ自体が、「その可能性を知っていた」ということに他ならない……。


沈黙が流れる部屋でそんな事を考えていたら、しばらくして藪内が口を開いた。

「マジで、大丈夫なんですかね。自分で食わずに、人に食べさせるってことだけで……」

つい先ほどまで目を爛々と輝かせていたのだが、その表情には、ものの数分で陰りができていた。多分、この沈黙の間に、藪内の頭の中でも独り言が巡っていたのだろうと思えた。

「あ、いや、すんません……。別に、否定してるつもりはないんですけど、なんて言うか、それだけじゃないんじゃないかって……」

「どういうことですか?」と、しおりに目を通していた白井が訊く。

「おばあさんのメッセージ。まだ、意味のわからないとこ、あるじゃないっスか。坂本さんの話からすると、《貴方には、自分の願いを叶える力はない》と《与え合えば、奪い合う必要がない》ってのは、そういうことなのかなって思うんですけど、他のは、どうなんですか? 例えばこれ、《天国にあって地獄にないもの。地獄にあって天国にないもの》って、一体なんです?」

藪内がそう言うと、坂本が眉間に皺を寄せながら「そりゃお前、天国に行ってみなきゃわかんねぇじゃねぇか……」と答えていたが、多分、婆さんが伝えたかったのはそういうことではない。

「そうじゃない。俺が説明する」

そう口にしている自分がまた、不思議だった。



←押してくれるなら、無自覚でも構いません。
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トークライブのお知らせ

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えー…

既にご存じの方も多いかとは思いますが、実はこの度、生まれ育った北海道を離れ、東京へ移住することになりました。

なんで移住することになったのか、正直なところ、僕もまだわかっていません。

2ヶ月ほど前から不思議な事が色々と続きまして、あれよあれよという間に「ありゃ、ホントに行くことになっちゃった」という感じなのです。

そりゃ勿論、理由も経緯も色々とあるのですが、そのどれもが「後付」になってしまうような、不思議な流れでしてね。

動き出したら、「そりゃ普通ありえんべ?」ってな具合のトントン拍子で事が進み、先日いよいよ転居先が決まってしまいました。年が明けたら、早々にお引っ越しです。

あまりの展開の早さと自分自身の決断に、当の本人が困惑気味。

_| ̄|○ トントン拍子も、あまり度が過ぎると狼狽えてしまいます…


でもって、「活動拠点が東京になったら、色々なところへお伺いするのも動きやすくなるなぁ」なんてことを思っておりましたら、これまた怒濤の勢いで沢山の方から同時にお誘いを頂き、瞬く間にトークライブの予定が入ってしまいました。

<(_ _;)> 沢山のお誘い、ありがとうございます。

沢山のご協力を賜り、年末から来年にかけまして、宇都宮・埼玉・福岡・鹿児島・香川・八戸へお邪魔させて頂く運びとなりました。

そんなこんなで、本日は、取り急ぎ宇都宮と埼玉での開催準備が整いましたのでお知らせさせて頂きます。

今回は、先日仙台・福島開催でお世話になった「アルファプランニング」さんと、埼玉の「リメンバープロジェクト」さんのご協力で開催させて頂きます。


あの世に聞いた、この世の仕組み in 宇都宮

【日時】12月18日(土) 18:00開演(17:30開場)

【会場】パルティ とちぎ男女共同参画センター 研修室302
    栃木県宇都宮市野沢町4番地1

【料金】お一人様:3,000円

◎お申し込み・お問い合わせアドレス

alfa-kokusai@tea.ocn.ne.jp

上記メールアドレスへ、お名前、人数、連絡先(携帯番号)を明記の上「アルファプランニング」鈴木さん(tel. 090-7565-0025)までお申し込みください。


あの世に聞いた、この世の仕組み in さいたま

【日時】12月19日(日) 13:00開演(12:30開場)

【会場】ラフレさいたま4F 欅の間
    埼玉県さいたま市中央区新都心3-2(さいたま新都心駅 徒歩7分)

【料金】お一人様:3,000円

◎お申し込み・お問い合わせはコチラ「リメンバープロジェクト」さんから。


その他の会場も受付の準備が整い次第、順次お知らせさせていただきますので、近隣の皆様、どうぞよろしくお願い致します。(トークライブの情報は、詳細が決まり次第、画面左側「カテゴリ欄」下の「トークライブ」の欄にリンク致します)


物語の続きも含めまして、今後とも、どうぞよろしくお願い致します。

<(_ _ )><(_ _ )>



←コチラも、どうかひとつ<(_ _;)>
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極楽飯店.30

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今この場、この状況で聞いていなかったら、坂本の語った話もただの道徳的なおとぎ話だと、苦笑すらせずに聞き流していたことだろう。

芥川龍之介の「蜘蛛の糸」に、太宰治の「走れメロス」。このような説教めいた物語は、幼い頃から幾度も耳にしていた。

それらを聞かされたり、音読させられるたびに、げんなりとなったものだ。

が、今は違う。

自分の中にある記憶の全てが、一瞬にしてその意味を変えてしまった。

もしこの場に蜘蛛の糸が垂れようものなら、自ら進んで交通整理でもしそうな勢いだ。

白井の婆さんが示した五つの言葉と、ここ数日気になっていた「宇宙の基本原理」「最低限の法則」、そして、これまでの人生の全てが、胡散臭い坊主が口臭混じりで語った物語によって一つに繋がった。

時間にすれば、カウントすら出来ないないほど一瞬のことだったが、そこで、ありとあらゆるものがハッキリと理解できた。何が疑問だったのかもわからなくなるほど明確に。


《貴方には、自分の願いを叶える力はない》

《記憶と思いが、現実を創る》

《与え合えば、奪い合う必要がない》

《願いは、願いを捨てた時に叶う。祈りは、祈りを捨てた時に届く》

《天国にあって地獄にないもの。地獄にあって天国にないもの》


確かに、全てがその通りだった。スケッチブックに綴られたその言葉は、意地悪な謎かけでも、何かのヒントでもない。まさに「気づくべき真実」、明確な答えそのものだ。

なるほど、まさに「宇宙の基本原理」。振り返れば、確かにたった一つの「その法則」によって、俺の人生は創られていた。俺は、自らの手によって地獄を創り出し、苦悩を選択し続けてきたのだ。

同時に、今天国にいる者も、まったく同じ「その法則」において天国にいる。自らの手で天国を創り、幸福を選択し続けている。

肉体の有無など関係ない。生きていようが死んでいようが、あの世だろうがこの世だろうが、あらゆる世界は、まったく同じ法則で動いている。これは、疑いようのない事実だ。

そして、なんてことだ。その難解で単純なジグソーパズルの最後のワンピースが、こともあろうに「自分の舎弟に殺される」という経験で成り立っていようとは。

なぜ今の今まで、これほど単純なことに気づけなかったのだろう。あまりの馬鹿馬鹿しさに、思わず吹き出しそうになったが、意に反して、笑いよりも先に涙が出てきた。


もはや、なんの疑問も疑いもない。

坂本の言うように、極楽飯店に行けば景洛町を出られることは間違いないだろう。

あの日、地獄のゲテモノレストランで出会ったオヤジに聞いた「謎の失踪」を遂げた者たちは、極楽飯店からここを出たに違いない。だからこそ、「班の全員が同時に」この町から姿を消したのだ。


そうとわかれば、やることは一つしかない。

「行こう」

涙を拭ってそう言おうとしたら、すでに白井がしおりを手に電話をしていた。

「はい、そうです。予約をお願いします。……えーと、あけぼの台公団住宅建設チーム四十八班です。……はい、五名です」

白井が話している間、メンバーは皆息を殺してその様子を見守っている。あれほど嫌がっていた田嶋も、もう、止めようとはしていない。

「……え、昼食ですか?……い、いえ、食べていませんが。……そうですか。じゃあ、それで。……はい、お願いします。……え?本当ですか?……はい、宿舎の入り口。……はい、……はい。では、よろしくお願いします」

白井は予約の電話を終えると、ゆっくりと目を閉じながら受話器を置いた。電話に触れる指先が、かすかに震えている。

「今日は雨が激しいので、ここまで送迎の車を出してくれるそうです」

「いつ?」坂本が目をぎょろつかせて訊いた。

「十二時半に、この宿舎の車寄せまで迎えにくると…」

「じゅ、十二時半!?もうすぐじゃねぇか!」

「夜はすでに予約が入っているのでランチコースなら、と言われたもので……。まずかったでしょうか……」

「いや、まずいって言うか、なんかこう、こ、心の準備ってもんが……」

トントン拍子の展開に坂本が身体をうねらせて狼狽えていると、「ついさっきまで胸を張って力説してたのは坂本さんじゃないですか。いまさら心の準備って……」と、田嶋がすかさずツッコミを入れる。

「いや、だからと言って、すぐ予約しろとは……」

行きたい者と戸惑う者。すっかり立場があべこべだ。

「とにかく、数時間後には、俺らは景洛町を出られているってことでいいんスよね?」

藪内がそう訊くと、白井が「少なくとも、久しぶりにまともな食事ができそうですね。ま、ダメならダメで、その時は坂本さんの責任で」と、金歯を見せて引きつり笑いを浮かべる坂本を見て笑っていた。



←心の準備はいりません。
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大阪のホテルから

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おはようございます。

思春期の頃、「もし、輪廻転生があるのなら、来世はブラジャーに生まれ変わりたい」と思っていた男です。


東京、大阪でのコラボライブにお越しいただきました皆様、ありがとうございました。

ホントに楽しかった~♪

コラボでも、ソロでも、こうして回を重ねる度に、どんどん楽しくなっています。

ああいった場でお話することへの躊躇が、徐々に薄れ、お話することの嬉しさをダイレクトに感じられるようになって来ました。

僕自身がライブに慣れてきたということもあるのでしょうが、もっと違う理由があることを、今回のコラボライブでひしひしと感じました。

今回のライブでお話させて頂いた「受け取る」という最終プロセスの大切さにやっと気付けたこともあり、会場に足を運んでくれた皆様から、沢山のエネルギーを頂戴しているということを、ありありと実感することができるようになったんです。

もちろん、ライブだけではなく、こうしていつもこのブログに遊びに来てくれる皆様も同様に。

本当に、ありがとうございます。

まだまだいたらぬ点をも多数抱えている僕ではありますが、これからも色々な形でお付き合いさせて頂きたいと思っております。

今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。



←皆様からの応援に、本当に支えられています。いつもありがとう!
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チューニング調整中

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ヾ(≧▽≦)ノ どもー!こんつわー!

本日も「あの世に聞いた、この世の仕組み」にお越し頂きありがとうございます。

物語も佳境に入ってきたタイミングではありますが少しお休みを頂いて、今日は僕の独り言にお付き合いいただければと思います。

と、言いますのもね、

これから先の物語は、いよいよ「引き寄せの法則」についての僕なりの解釈を解説していく流れになるのですが、ここに来て雲さんから『ちょっと待った!』の合図が入ったんですね。

(  ̄Д ̄) 『物語の先は、もう少しお前自身がこの法則を体験し、理解を深めてからにしよう。それに、週末には同じテーマのライブが待っているしね』

と言った感じで、ただいまOJT(オン・ジョブ・トレーニング)の真っ最中。「引き寄せの法則」を、実体験を通じて探求しているところなのです。

いくらその仕組みを語っても、僕自身がそれを体現できないのであれば説得力もないですしね。

そんなこんなで、ここ何週間かは、雲さんとのチューニング調整に没頭している毎日です。


お陰様で、色々と不思議な事が起こっていましてね。週末のトークライブでは、そこら辺のこともお話できるかと思います。

で、そんな流れの中の一つとして、先日、新しい出会いがありました。

すでにご存じの方もおられるかとは思いますが、「体外離脱するサラリーマン(ハート出版)」の著者、とみなが夢駆さんです。

とても不思議なご縁がある方のようで……

この夢駆さん、どうやら僕と同じガイド(つまりは雲さん)がついているようなんです。

なんだそりゃ?って感じなんですけど、探れば探るほどマジっぽい。

(-公-;) う~ん

ブログではなかなかお話しづらいこと山盛りな、怪しい出会いです(笑)


先ほど阿部さんのブログを拝見したところ、「ボブさんと出会ってから、色々な認識が変わり始めた」的なことが書かれていたのですが、僕も夢駆さんとの出会いを通じて、様々な変化を感じています。

とにかく、今週末のコラボライブと物語の続きは、雲さんも相当気合いが入っているようなので、まずは週末に向けて、しばしチューニングに専念したいと思います。


そんなこんなで、次の更新まで少々お待ちくださいませ<(_ _;)>



←どんな内容の時でも押してくれる、そんなあなたが大好きです
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