akikoの「活動」徒然記

活動弁士佐々木亜希子の身の周りの出来事やふと感じたこと

生誕百年特集斎藤寅二郎「モダン怪談100,000,000円」

2005-11-18 | 活弁
フィルムセンターで、今日まで生誕百年特集上映が組まれていた映画監督斎藤寅二郎&野村浩将。
私の活弁ではおなじみになっている斎藤寅二郎(1905-1982)は”喜劇の神様”と呼ばれ、無声映画時代から抜群のナンセンスコメディをくり出してきました。1922年松竹蒲田に入社して助監督となり(一年後輩に小津)、1926年21歳で監督デビュー。松竹、東宝などで生涯に207本の喜劇映画を撮っておりますが、彼の真骨頂は無声映画時代のスラップスティック・コメディだと言われております。私もそのとおりだと数少ない無声映画を観ながら、演りながら、確信している一人。
そう、無声映画時代は、寅二郎ではなく寅次郎でした(本名は寅二郎)。私などは寅次郎としてのほうが馴染みがあるのですが、残念ながら、斎藤寅次郎絶頂期の無声映画作品はほとんど残っておりません。私のお気に入り、どこで活弁上演しても大人からこどもまで絶対にウケる「子宝騒動」(1935)の他、「明け行く空」(1929)「石川五右エ門の法事」(1930)、そして、今回発掘され初公開となった「モダン怪談100,000,000円」(1929)!

現存フィルムは封切当時の2割、15分の短縮版ですが、かなり興味深いものでした。
小津作品でもおなじみの大好きな名役者たちー斎藤達雄や坂本武、吉川満子などが出演。
なかなか観られる作品じゃないし、せっかくなので、観ていない方のためにストーリーを。

金のないことを理由に父親(坂本武)に結婚を反対され駆け落ちした若い男女(貧乏青年松田ー斎藤達雄、娘の令嬢ー松井潤子)が、赤城山でゴールドラッシュ?に遭遇。聞けばなんでも国定忠次の埋蔵金がどこかにあるという。一獲千金血眼になる人々に交じり、埋蔵金探しを始める二人。腹が減り、寒くなり、夜を明かそうと荒寺に入ると死人の棺とお供え餅!餅を拝借…と思ったら、棺の中から手がのびて。餅をさらわれ、骸骨に頬をなでられ、こんな幽霊寺にはいられないと野宿を決め込むが、そこでなぜか穴を掘る子連れの国定忠次(小倉繁。「子宝騒動」の福田さんです)に出会う。
忠次「寄らば切るぞ!」
一瞬おじけづき彼女の後ろに隠れるが、それではあまりに情けない、青年松田
および腰ながら、「御用だ!御用だ!」
御用と言われりゃ反射的にひるむ忠次。
「よし…。御用だ!御用だ!」
「むむむ…」
なぜか松田の懐からは強い味方の十手が出てくる。「御用だ!御用だ!御用だ!」
ついに忠次の幽霊は、塩をかけられたなめくじのように、一人穴の中へ消え…。
いいのか それで。
「ちゃん!置いてかないで~」
「…忘れていた」
再び坊やとともに姿を消した忠次。後には、穴だけが残されて。
「もしや!」
掘ればそこには噂の埋蔵金!100,000,000円!?
娘はもう死んだものとお経をあげるお屋敷へ、大金抱えた二人のご帰還。
「父さん、松田さんは、大富豪になったのよ!」
金さえあれば文句ナシ。二人は結婚、めでたしめでたし♪

というような(印象によるセリフも入れておりますが)ばかばかしい話。
しかし。この作品観たさか、その日(13日)の会場はいっぱい。弁士も楽士も付かず、サイレントのまま観ているのですが、時々会場から他のトーキー作品以上に笑いが起こっておりました。あっぱれ。

ちなみにこの作品、ある旧家に眠っていたフィルムを映画保存協会が発掘し、斎藤寅二郎監督の三人の御子息が<映画の里親>として復元に協力して下さって公開にこぎ着けました。
今日の「エノケンの法界坊」や先日の「のど自慢狂時代」などももちろん悪くはありませんが、サイレントのものの方が監督のナンセンスさが光ります。短期間で制作し、かなり量産していた時期ですが、だからこそ、か、ドタバタのスピード感とキレがあります。
もっと当時のフィルムが残っていたら!と思うと同時に、今回こんなふうに、多くの方々の熱意とたいへんな努力で、新たに復元、公開された無声映画作品があったことに、心から拍手を送りたいと思います。
私的には弁士が付いたら絶対にもっと笑える!と思えた作品。いつか語ってみたいものです。
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2 コメント

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もう一人の寅さんともう一本のキング・コング (石コロ)
2005-11-19 17:44:36
私が初めて斎藤寅次郎監督(私も現役時代のこの名前の方が良いです)を知ったのは、子供の時見た怪獣図鑑です。「和製キング・コング」と言う作品で、それまで「ゴジラ」が日本初の怪獣映画と思っていた私はビックリしたものです。もっとも未見なのではっきりとは言えませんが、この映画は怪獣映画とは言えないと思いますけどね。監督名は「男はつらいよ」の寅さんと同じ名の監督が居ると言うので知り「無声映画鑑賞会」で、もう一つの“寅次郎世界”を楽しむ事になります。新作「キング・コング」も良いけど「和製キング・コング」も見たいですネ!
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「キング・コング」はさておき (akiko)
2005-11-20 11:59:19
「和製キング・コング」、見たい…
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