青い目の見た元禄より~ドイツ人ケンペルの日本見聞録~ 岡山大学長 大藤真
「岡山の自然と文化」 岡山県郷土文化財団 昭和62年発行
私は内科の医師ですが、今日は医学の話はしません。日本に最初に来たドイツ人ドクターのケンペルさんの話です。
ケンペルさんはドクターのくせに『日本誌』に、医学の話はでてこないのです。
今から296年前オランダ船に乗ってきました。
タイから日本の長崎まで約3ヶ月かかっておりますね。
元禄3年9月26日に、あこがれの日本に着いております。
2年後の元禄5年10月31日に離日し、インドネシアを経由し、ドイツに帰り、
1716年65才で亡くなっております。
ですから、39才から40才という壮年のときに日本に2年おられた。
もともとのすごい博学の上に、その一番充実した壮年の時に日本にいて、
沢山の日本のことを勉強し、かつ見聞を広めたわけでございます。
イチジク
日本のイチジクには3種類ある。
一つの種類を柿という、と書いてあるんです。これは柿がヨーロッパになく、ほんとの柿です。
あと2種類はまさにイチジクなんです。
一つは日本のイチジク、
一つはヨーロッパ人が持ってきて植えたイチジク。
大根
日本は大根が非常に多い。
肥やしをまくでしょう。大根に肥えがしみ込む、だからとても食べられないというんですね。
日本人は平気で食べる。
生のまま食べたり、煮て食べたり、
ぬかずけにしたり、
干したり、とにかく非常によく食べる。
牛
日本人は農耕に使うけども、ミルク、バターを採ることは全然知らんと書いてある。
猫
三毛猫が多い。どうも日本の猫はネズミをとらない。
女に抱かれてかわいがられるばかりである。
セミ
昆虫の中で大変珍しいものが日本にいる。
日本中どこに行っても、夏になったらものすごいセミの声で、これは好きだ。
フグ
日本人がこれをよく食べるけれど、よく死ぬと書いてある。
死んでも死んでも食べると。
それで、とうとうお上の方で、
「侍はフグ食うべからず」と禁止令を出した。
もしこっそり食べた死んだら、後継ぎは許さんとゆうのですから厳しいです。
農家
わらぶき、かやぶきが多い。
家の奥の方に行くとかまどがある。
清潔な畳がある。
戸がない、道具はほとんどない、目につくのはニワトリだけ。
生活は自給自足で農民は結構生活を楽しんでいる。
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