
【180ページ】「解説」津島佑子(2)
他にも、この作品集で扱われている要素はある。例えば、死。しかし一貫して言えるのは、私も含めて、人の生の不思議な、それでいて誰よりも本人がうろたえずにはいられないほど単調なものである有り様が、きわめて現実的に描かれている、ということなのだろう。
父親の生に作中で、息子が圧倒されずにいられないように、この作品を読む私たちは、作中の息子の生に圧倒されずにはいられない。そしてこれは、結局のところ、読むものがそれぞれ自分自身の人としての生に圧倒される、ということにもなるのに違いない。少なくとも、私にとってこの作品は、そのような力を持っている。
[ken] 津島佑子さんの色川武大さんに向けた言葉が、とても優しく伝わってきます。私は、阿佐田哲也シリーズを含め、色川武大さんの本を今後とも読み続けていきたいと思います。(終わり)