生活と人生(その2)

 作家遠藤周作さんが晩年たどり着いたひとつの人生論。私は年に何度も思い出す機会があります。
 昨日につづいて、の抜粋です。 

遠藤周作著『死について考える』(光文社)より

隠居という言葉が死後になりつつあって、定年とか、第二の人生とかいわれていますが、それは退却を転進といったのと似ているように思います。昔は隠居するということは次の世界を信じ、そこに向かう旅支度だったのです。隠居生活は今までの生活重点主義を捨てて人生を直視することだったのです。生活を中心にしていると本当の人生がぼやけてしまいます。隠居することによって、人生を考える。人生を考える上で最も大事なのは死の問題ですから、死を考えるということになるのです。生活の中にまぎれているのは、死を考えることを避けているように思えるのです。(147頁)

 生活の中に紛れているのは「死」だけではないでしょう。生きる意味などもその一つだと思います。そこを放っておくと、いざと言うときに、自暴自棄になったり、しょげかえらなくてはならなくなるような気がするのです。
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