カセット.LD.ビデオ…

 住職室の本棚の整理の次いでに、「いつかは聞くだろう」「そのうち観るだろう」とこの25年録音録画していた、あるいは買ってあった媒体を整理した。膨大な量になった。
 カセットテープも、もやはきれいに聞こえる機材は無いくもっぱらデジタル録音になったし、、レーザーディスクの再生装置も何年も使っていないし、ビデオテープはDVDに取って代わられた……

 すでに3年以上聞いても、見てもいないものはすべて処分した。どう考えても、昔聞いたり見たりしたものよりも、これから新しく聞いたり見たりするものの方が圧倒的に多い筈で……
 だとすれば、タンスの肥やしにしかならない。
 誇大な資料室でもあれば、保存しておくのもいいだろうが、密蔵院ではそうはいかぬ……。

「断・捨・離」という言葉があるが、徐々に趣味の領域の保存しておくものは、すくなくしていこうと思う。
 坊さんは執着に通じるので、もともと物は持たないというのが基本。物を溜めるようになったのも、お寺に住むようになってからだろう。でなければ、引っ越しの時に大変なことになる(明治までは坊さんは次々にお寺を代っていった)。

 引っ越し上手の方は、たぶん物を増やさないというのがコツなのだと思う。

 この世からあの世への引っ越しも然(しか)りである。
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我が家はターミナル

 月曜から娘が福島の白川へ。英語しか喋れない村(?)があるのだそうで、そこへ行って語学研修。
 火曜日に長男が本山から一時帰宅。西新井大師での勉強会出席のため。
 水曜日に次男が大学のクラブの卒業旅行で福島の巨大温泉施設へ。東京駅から無料送迎バスが出ているのだそうです。
 そして今日、今朝出かけた長男は西新井大師の勉強会のあと直接本山へ。
 長男が夕方東京駅を出発するころ、次男と娘が相次いで福島から東京駅に到着の予定。

出たり、入ったり…まあ、忙しいことです。

さて、ゆっくり過ごすはずの4日間のうちの三日目の今日でしたが、午前中に研究紀要用の原稿の後半部分が過激なため削除したほうがいいのではとお電話。もとよりそのツモリで書いたものなので、前半部分で綺麗にまとめ直し。加えて宗派の雑誌の夏号原稿締め切りが近いので、エイ!とばかりに執筆。「善人」というタイトルになりそうです。これを仕上げればどうにか「追われる」ようにやっていることから脱出できそうです。
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同時多発はいつものことか

 高校時代の家具職人に住職室の本棚を注文してから約二週間。昨日取り付けてもらいました。
 本棚の整理は、まるで小さな引っ越し。膨大な量の本を一度出して、それを整理しながら処分したり、収納したり……。鼻水に苦戦しながらの時間。

 整理していて、
「ギャッ!この原稿はまだ赤を入れただけで、整理していないわい」というのが2つも出てきた。両方ともパソコンで打ち直すのに、丸一日以上かかるシロモノ。

 やるべきことの優先順位をつけてやっているうちに、忘却の彼方へ……なんてことがよくあるものですが、本棚の整理とか、タンスの整理なんかをしていると、ヒョッコリ現れます。まあ、やっていないから困ったということもないのですから、どうでもいいと言えばいいのですが、とりあえずの出来上がりまではかなり本腰を入れただけに、それも、多くの方のいい資料になるものなので、机の上に置いておこうと思います。

 長男が講習会で、四日間奈良の本山から帰宅。私も大変お世話になっているお坊さんの急逝の知らせを一緒に持ってきました。茫然自失の今日。
 そして、
 たくさんのことが一度に起こった昨日でした。
 
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うつ伏せでどのくらい寝られるだろう。

 浪曲の庭が終了して、気がゆるんだのだろう。風邪をぶり返した。
 本来今日は宗派のテレホン相談員なのだが、とても五時間も電話の部屋にじっとしていられる状態ではない。おそらく他の相談員三名も一緒にいて、咳き込んだり、鼻をかんでいたのでは、気が気ではないだろうと考えて失礼ながら休ませてもらった。

 で、今日、お客さんから私ならどうするだろうという話を聞いた。

 網膜剥離の手術の後は下を向いていないといけないのだそうだ。白内障の準語二日目の網膜剥離だけに、ドーナッツ状の枕に顔を押し当てて約一週間、うつ伏せ状態だったそうだ。

 聞いたら、やはり夜は一時間おきくらいに起きてしまうのだそうだ。さぞや、胸の圧迫感があるだろうと心配したら、じつは腰痛のほうが辛いのだそうだ。経験してみないと分からないものである。

 件(くだん)の方は、ラジオをクラッシック音楽をイヤホーンで聞いていたらしい、私ならきっと志ん生の落語と、浪曲を全部聴き直すだろう。
 件の方には「次回は落語と浪曲のCD九十枚お貸ししますよ」と冗談で言った。わははは。

 仏さまなら、さような不自由な状態を、どうやって時間を過ごすだろうと思った。
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浪曲の庭、メニュー

 三筋の糸にのせて……
密蔵院 浪曲の庭   平成21年2月

浪花亭友歌…『男の花道』
 昔の話、中村歌右衛門と眼科医の人情……

富士路子…『権太栗毛』
 一ノ谷の戦いでの名馬権太栗毛の一席……

玉川福助…『阿武松緑之助-六代横綱-』
 六代横綱(おうのまつ)誕生の物語を楽しく……師匠の今は亡き福太郎さんとおなじくらいの声量に、女性なのに、皆ビックリでした。


東家三楽…『情けの関守り』
 日本の三代騒動のうち、加賀騒動にまつわる、忠臣石川寅次郎の箱根越えの人情話……三楽師匠、まったくお見事でございました。

 今や客殿PAの片づけもどうにか終わりまして、ホッと一息であります。

次回は…4月13日(月曜日)、お楽しみに!
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平成21年2月22日…来年の今日だな。

 ご法事の中で、本尊さまにその法要の趣旨を申し上げる文章があります。
 その中で今日の日を入れるところがある。
 本日の二件の法事でも『平成21年2月22日、云々』と読み上げました。

 住職室へ戻って家内が、
「今日何日だっけ?」と言うから即座に
「22日だよ」
「そっか」
「ああ、来年の今日はすごいぞ。平成22年2月22日だ」

……こんなに数がそろうのは、平成11年1月1日と1月11日、それに11月1日と11日以来だろうか。中でも平成11年11月11日は1が6つである。これに時間まで加われば、11時11分11秒で1が12だ。わはははは。
 来年は時間を除いても2が5つ揃う。
 来年の次は、平成33年3月3日だから3が4つ。
 本来毎日が一回しかないわけだが、数字が揃うと何か不思議な感じがする。

 明日は今年初の「浪曲の会」13時~15時30分。
 演歌出身の若手女流浪曲師も加わって、華やかになることでしょう。
 お誘い合わせの上どうぞ。司会進行は住職がつとめます。 

 写真は浪曲会の重鎮、東家三楽さん。明日もトリをつとめてくれます。 
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いよいよ早太郎、完結でごごいさます。

弁尊さんは、
「この犬は、信州信濃の光前寺の和尚さんが、可愛がっていた犬だ。この早太郎をここで死なせてしまっては和尚さんに申し訳がない。」
 急いで、村の人に手伝ってもらって、傷ついた早太郎を戸板にのせて、夜も休まずよいしょ、よいしょと天竜川を上って、信州信濃の光前寺の庭へと早太郎を運び込みました。
出迎えた和尚さんは話を聞いて、虫の息になっている早太郎の首筋を優しく叩いて、
「早よ、よくやったな。」
その時、早太郎、最後の息でパッチリと目を開けて、
「和尚さん、責任は果たしました。」人間ならばそう言ったところでしょう。そのまま、目を閉じて息を引き取ってしまったのです。
 今でも、信州信濃の光前寺には、早太郎の銅像があり、早太郎のお墓も残っています。
 そして、矢奈比売神社(見付天神)にも銅像と、早太郎の末裔が飼われています。
 今から、七百年前の話、『信州信濃の早太郎』のお話、これまです。おつきあいいただきありがとうございました。┏〇"┓。

 私は小学校に入る前から、この話を父から何度となく聞き、自分でもお話できるようになりました。私が色々な子供たちに、ヴォイスチェンジャーや稲妻照明を使って話していたのはもう20年も前のことですが、私にとって、かけがえのない話の一つなのです(犬好きになったのもこの話のせいかもしれません)。

 平成21年9月11日には、この早太郎(遠州では疾平太郎)の700年祭が矢奈比売神社で行なわれることが、先週の旅で判明。必ず参列しようと決心したのであります。できれば一席やりたいものです。

 写真は矢奈比売神社で手に入る「霊犬の厄除けのお札」。
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早太郎、遂に決闘の時…

 突然、ピカッ!と鋭い稲妻が走ったかと思うと、ゴロゴロゴロ・・・
 社の右の森からビョコンと飛び出して来たのは、白い毛で覆われた化け物。
 続いて、ピカッ!ゴロゴロゴロ。今度は左の森から、ビョコン。
 人間の背丈の二倍もある二匹の白いヒヒの化け物は、樽の回りを歌いながら踊り始めました。
「ドンドコ,ドンドコ、ドンドコドン、言うまいぞ,言うまぞ,この事ばかりは言うまいぞ,信州信濃の光前寺、早太郎には言うまいぞ,ソレ,スッテンスッテンスッテンテン。」まさか、樽の中に早太郎が隠れているとは思いもしない二匹の化け物は、樽の回りを踊り続けます。
 すると、ピカッ。ゴロゴロゴロ。ひときわ大きな音と共に社の後ろの森から、とび出したのは二匹の三倍もある、あの大化け物でした。大化け物が現れると、とたんに二匹の小化け物は、ひれ臥して、
 「へへーっ。」
 真っ赤な目で辺りをギョロリと見回した大化物
「これ、今夜も早太郎は来ていまいな。」
「はい、今夜も早太郎は来ておりません。どうぞ御安心を。」
「よし、早太郎さえいなければ、天下に怖いものはない。」大化け物はそう言うと、樽の蓋に手をかけてバリバリバリ。
待ってましたとばかりに飛びだしたのは、じっとこの時を待っていた早太郎でした。
ワン、と言うなり、そばにいた小化け物の喉ぶえにガブッ。いくら化け物でも喉をやれれては、ひとたまりもありません。アッという間にドサッと倒れてしまいました。続いて毛一匹の小化け物に飛びかかった早太郎。これも難無く倒してしまいました。しかし、最後に残った大化け物はさすがに、手強い様子で、早太郎も苦戦をしてる様子です。しばらくの間、ワンワン、ギャーギャーと大乱闘が続きましたが、遂に大化け物はフラフラと歩いたかと思うと、膝から崩れるように、倒れました。
弁尊さんは杉の木から下りてきて、
「早太郎、よくやった。」と言って早太郎に駆け寄ろうとすると、それまで立っていた早太郎もドサッと倒れてしまいました。
見れば全身傷だらけ、息も既に虫の息でした。

 さて,次でいよいよ物語最終回です。

 写真は、駒ヶ根の光前寺で手に入る早太郎の土鈴。
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 一気に参ります。早太郎。

 さっそく、飛ぶように光前寺にやって来た弁尊さんは住職さんに事情をコレコレシカジカと話しますと、その住職さんは、
「お話はよく分かりました。しかし、私は良くても早太郎が何と申しますか。聞いてみなければわかりません。これ、早よ。」
 本堂の屋根の下で寝ていた犬が、むっくりと起き上がりました。見れば子牛ほどもある茶色をした大きな犬がのっそのっそと和尚さんのところへやって来て、鼻を和尚さんにこすりつけて甘えています。
「これ、早よ。このお方が化け物退治にお前の力が必要だとおっしゃるが、とうだ、このお方と一緒に見附の国、柳姫神社にいくか。どうだ。」と和尚さんが早太郎の背中をドンと叩くと、早太郎はピョンと後ろへ飛ぶと前足をピンとのばして、ゆっくりと和尚さんの顔を見上げると、
「ワン」と一声。
「早太郎が承知をいたしました。どうぞお連れ下さい。」
と言う訳で、急いで早太郎を連れて弁尊さん、村に帰ったのは何と、お祭り当日の朝でした。
 村では既に前の夜に森から飛んで来た白羽の矢がささった太へいさんの家に村長さんたちが集まって、太へいさんの家のお美代ちゃんを木の樽にいれる準備をしているところでした。
「村長さん、村長さん。私です。弁尊です。やっと早太郎を連れて来ましたよ。」
「あー,弁尊さん。あなた、私達はもうあなたが、早太郎さんを探せなかったんで、申し訳なくて帰って来られないんだろうと,思っていたんですよ。でも、良かった。で、どこにいらっしゃるんですか、早太郎さんは?」
「ほら、この通り。」
見るとそこには、大きな犬がいるだけでした。
「何だ、弁尊さん。こんな犬なんか連れて来て。どこにも早太郎さんはいないじゃないですか?」
「いや、私もずっと早太郎は人間だと思っていたんですが,実は犬の名前だったんですよ。さあ、今日はお美代ちゃんの代わりに、この早太郎に樽に入ってもらいましょう。」
やがて夕暮れになると、早太郎を入れた木の樽を皆で、柳姫神社へと担いで行きました。
 皆が村へ引き上げたあとに残ったのは、弁尊さんと樽の中でじっと息を殺している早太郎だけです。弁尊さんは杉の木にスルスルと登って、高い枝に腰を下ろしました。
 日もとっぷりと西に暮れ、あたりはすっかり暗くなってきました。天には満月がこうこうと輝いています。
夜が次第に更けていくと、遠いお寺の鐘の音が
ゴーン、
すると去年と同じように、突如として黒雲がどこからともなく湧きだして、月をすっぽりと覆ってしまいました。辺りは真っ暗闇になってしまいました。

 この続きは次のブログで。今日は一気に3本アップで物語りは完結します。

 写真はヤナヒメ神社本殿の前にある現在の木立。巨木です。

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早太郎「そうだ、思い出したぞ、あの歌を」

 さて、信州信濃に着いた弁尊さん、あちらの村へ行っては
「あのー、すみません。この辺りに早太郎さんってぇ人はいませんでしょうか?」
「いや、遅太郎ってぇいうぐずぐずしているいる人はいますが、早太郎ってぇ人はいませんねぇ。」
 こちらの村へ行っては、
「この村に早太郎ってぇいう人はいませんか?」
「あー、早太郎ならうちのじいさまだけど、もう二十年も前に亡くなったよ。」
「そうですか、二十年も前ですか。それじゃ、ダメだ。」
信州といってもずんぶんと広い国です。毎日村から村へと尋ねあるく内に、既に半年以上が過ぎてしまいました。
「あのー、この辺に早太郎さんってぇいう人はいませんか?」
「あー、早太郎。いるよ。」
「えっ!いますか。早太郎さん。良かった!どこにいらっしゃいますか。」
「そこの、路地を入って、二軒目のうちだよ。」
「あー、良かった、もうダメかと思っていたのに・・・御免下さい。こちらに早太郎さんがいるって聞いてきたんですけども、」
「えー,いますよ。ほら見て下さい。昨日生まれたんですよ。可愛いでしょう。」
見れば、まだ目も開かないオギャー、オギャーと泣いているちっちゃな赤ん坊でした。弁尊さんはがっかりしてしまいました。
「いくら早太郎でも、昨日うまれた赤ん坊ではとてもあの化け物に適うわけがない。おまけに、去年の秋のお祭に化け物が、早太郎と言っていたんだから、昨日や今日生まれた早太郎じゃないんだ。」
探し、探し、探し歩いている内にいよいよ夏も終わり、いつしかまた柳姫神社のお祭の日が近づいてきました。もう半分あきらめかけて、がっくりしながら取り敢えず神社に戻ろうと足を見附の国にむけました。
    いよいよお祭りまで、あと一週間。心身ともに疲れ果てた弁尊さんは、ある重い体を引きずってある峠へとやってきました。その峠の茶屋で一休みをした弁尊さん、お店のおばをさんに、これが最後と思って聞きました。
「おばあさん、いないとは思うんですけどね。この辺に早太郎さんってぇ人はいませんか?」
「さぁ、早太郎さんってぇ人ですか?そういう人は聞いたことがありませんね。」
「やっぱり。そうでしょうね。」
「でも、早太郎ってぇ、人はいませんけどね。早太郎ってぇ犬ならいますよ。」
「はぁ、犬ですか。犬じゃしょうがないんですよ。だって化け物は『早太郎』ってぇ・・・あっ!やつら、早太郎が人間だなんて,言ってなかったな。そうか、私が勝手に早太郎が人間だと勘違いしていただけなのかもしれない。・・・おばあさん、その早太郎ってぇいう犬はどこにいるんですか?」
「ほら、あそこ。あそこにお寺の屋根が見えるでしょう。あの光前寺さんに早太郎っていう犬がいるんですけどね・・。」
「・・・光前寺?」そのお寺の名前を聞いて,弁尊さんはあの晩化け物が歌っていた歌をはっきりと思い出しました。
「そうだ!『言うまいぞ、言うまいぞ、この事ばかりは、言うまいぞ、信州信濃の光前寺、早太郎には言うまいぞ』『信州信濃の光前寺』ここだ!」

 写真はヤナヒメ神社にいる、三代目の早太郎。小屋には二代目と書いてありますが……。
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