『悟浄出世』-蒲衣子の弟子の巻-
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ただあまりにも美しく、あまりにかぼそくて、まるで何か貴い気体ででもできているようで、それがみんなに不安なものを感じさせていた。少年は、暇さえあれば、白い石の上に淡飴色の蜂蜜を垂らして、それでヒルガオの花を画いていた。
悟浄がこの庵室を去る4、5日前のこと、少年は朝、庵(いおり)を出たっきりもどって来なかった。彼と一緒に出て行った一人の弟子は不思議な報告をした。
――自分が油断をしているひまに、少年はひょいと水に溶けてしまったのだ、自分は確かにそれを見た、と。
他の弟子たちはそんなばかなことがと笑ったが、師の蒲衣子(ほいし)はまじめそうにそれをうなべった。(※うなづくの意か?名取注)
――そうかもしれぬ。あの児(こ)ならそんなことも起こるかもしれぬ、しまりに純粋だったから、と。
悟浄は、自分を取って食おうとした鯰の妖怪のたくましさと、水に溶け去った少年の美しさを、並べてかんがえながら、蒲衣子のもとを辞した。
※「白い石の上に、淡い飴色の蜂蜜で春顔の絵を描く」少年……。この表現こそ、まるで絵みたいですねぇ。こういう情景描写を普段の生活の中でも、せめて一週間に一度くらいはしてみたいと思いました。
さて、次に悟浄が訪れるのは、すでに五百余才の妖艶淫靡(ようえんいんび)な斑衣厥婆(はんいけつば)という女怪。かなり淫靡な話の展開になります。品行方正な方々からひんしゅくを買いそうですが、これもまた生き物の一側面としてご了承ください。
今日は今週七回目のご詠歌(かなり異常です)。会場は千葉県幕張。それを終えて、6月に『お布施で困ったことありませんか、その2』という一般向けのセミナーの会場下見でお茶の水の明治大学へ。明日の法事の準備は長男がやってくれるので、こんなことができるのだなと、つくづく思います。合掌・合掌。
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