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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0830「しずく81~再会」

2020-03-11 18:19:32 | ブログ連載~しずく

 柊(ひいらぎ)あずみは、とある深夜喫茶(しんやきっさ)にいた。店内(てんない)は薄暗(うすぐら)い照明(しょうめい)で、ロックが大音響(だいおんきょう)で流れていた。客(きゃく)たちは回りのことなどお構(かま)いなしに、それぞれのお楽しみに夢中(むちゅう)になっている。
 あずみのテーブルに男がやって来た。二人は表情(ひょうじょう)を変えることなく言葉(ことば)を交(か)わした。男はあずみの横(よこ)に座(すわ)ると、大きく息(いき)を吐(は)いて言った。
「どこにいたんだ? 突然(とつぜん)いなくなるなんて、俺(おれ)がどれだけ――」
 あずみは男の手に触(ふ)れて、「ごめんなさい。それは、謝(あやま)るわ。あなたにこれ以上(いじょう)…」
「分かってる。君(きみ)のことは、全部(ぜんぶ)、分かってるつもりだった。だけど…」
 男は言葉を詰(つ)まらせた。あずみは男から手を離(はな)すと、
「私たち、やっぱり会うべきじゃなかったわね。ごめんなさい…。私…もう行くわ」
 男は立ち上がろうとするあずみの手をつかんで、「待てよ。まだだ、まだ話しは終わってない。ひとつ、聞かせてくれ。俺たち、短い付き合いだったけど、俺は真剣(しんけん)に君のことを…。君は、どうだったんだ? 俺のこと…」
「私も、真剣だったわよ。あなたのこと、愛してた。今も、忘(わす)れたことなんて…」
「じゃあ、まだ脈(みゃく)はあるってことで、いいんだよな? 俺も、君のことを――」
「ダメよ。それはダメ。私と一緒(いっしょ)にいたら、あなたにまで危険(きけん)が及(およ)ぶわ」
<つぶやき>訳(わけ)ありの二人のようですね。この再会(さいかい)が、運命(うんめい)を変えることになるのか…。
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0829「今どきの」

2020-03-10 18:08:36 | ブログ短編

 彼女はどういうわけか冥府(めいふ)の入口(いりぐち)に迷(まよ)い込んでしまった。周(まわ)りを見渡(みわた)すと、もやが立ち込めて何とも不気味(ぶきみ)な気配(けはい)が漂(ただよ)っている。しかし、彼女はそれほど恐(おそ)れてはいなかった。
 彼女が小さな橋(はし)のたもとまで来ると、橋の向こう側(がわ)から誰(だれ)かの足音(あしおと)が聞こえて来た。その音は彼女の方へ近づいて来て、人影(ひとかげ)がはっきりと見えた。それは、彼女の父親(ちちおや)だった。
 父親は驚(おどろ)いた顔(かお)をして呟(つぶや)いた。「どうして、こんなところまで…」
「お父さんこそ、何でこんなところにいるのよ。ここは、どこなの?」
「どうやら、お前も道(みち)を決めるときが来たようだな。実(じつ)は、父さんは何百年も続く陰陽師(おんみょうじ)なんだよ。今まで話したことはなかったが、お前もその血筋(ちすじ)を引いているんだ」
「そ、そうなんだ…。へぇ、そんなの今でもあるなんて…信じられない」
「父さんと同じ陰陽師になるか、他の道へ進んでも構(かま)わない。自分で決めなさい」
「ほんとに決めてもいいの?――じゃあ、陰陽師になる。何か、カッコいいじゃん」
 彼女はすごくあっさりと決めてしまった。父親はちょっと不安(ふあん)になったが、
「なら、今から修業(しゅぎょう)を始(はじ)めよう。当分(とうぶん)は遊(あそ)ぶ時間はないから覚悟(かくご)しておけ」
「えっ、そんな…。修業をしなきゃダメなの?」
「当たり前だ。血筋だけでは陰陽師にはなれないぞ。いくつもの掟(おきて)を守り、学(まな)ばなければならないことがたくさんあるんだ」
「まさか、恋愛禁止(れんあいきんし)の掟とかはないよね? もしあるんだったら――」
<つぶやき>時代(じだい)とともに、いろんなことが変化(へんか)していく。でも、大切(たいせつ)なものは同じです。
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0828「立ち位置」

2020-03-09 18:18:04 | ブログ短編

「えっ、別(わか)れたの? だって、この間、告白(こくはく)されたばかりじゃない。何で?」
「昨日(きのう)、初めてデートしたんだけど…。何か、ちょっと違(ちが)うかなって…」
「違うかなって…。あんな、熱烈(ねつれつ)な告白されて、OKしたんでしょ? それなのに…」
 もう一人の娘(こ)が口を挟(はさ)んだ。「ちょっと、あたし、聞いてないんですけど。どういうこと?」
「あなた、風邪(かぜ)で休んでたじゃない。だから――」
「休んでたって、メールとか連絡(れんらく)できるでしょ? あたし、ずっと寝(ね)てたんじゃないのよ」
「はい、はい。後で教えてあげるわよ。それより、これからどうすんのよ?」
「別に…、今まで通りよ。彼とは友だちとして…」
「ほんとに大丈夫(だいじょうぶ)なの? あなた、彼のプライドをズタズタにしたのよ」
「そんなこと言ったって…、あたしのタイプじゃなかったんだもん」
「だったら、断(ことわ)ればよかったじゃない。告白されたとき、きっぱりと言うべきよ」
「言えないわよ。回りにいた人が、すっごい期待(きたい)の目であたしのこと見てるのよ。もし、ごめんなさいって言ったら、あたし、めちゃくちゃイヤな女になっちゃうわ」
「だからってね、もう少し彼のことも考えてあげないと」
「もう、我慢(がまん)できない! あたし、全然(ぜんぜん)、話しについていけないんですけど。彼って誰(だれ)なの? どんな告白されたのか、今すぐ教えなさいよ。あたしが、面白(おもしろ)い話が大好きだって知ってるでしょ。あたしだけ知らないなんて、もう耐(た)えられない!」
<つぶやき>人との縁(えん)は不思議(ふしぎ)なもの。どこでどう繋(つな)がるかは誰にも分かんないかもね。
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0827「惹きつける」

2020-03-08 18:21:37 | ブログ短編

「ねえ、やよいの彼を奪(うば)ったってほんとなの?」
「あたし、そんなことしてないわ。ただ、ちょっと声をかけただけよ」
「もう、そんなこと止(や)めてよ。あなたがそういうことするたびに、私の方に苦情(くじょう)がくるんだから。このままじゃ、私、友だちいなくなっちゃうわ」
「どうして? あなた、何もしてないのに…。あたしだって、別に恨(うら)まれることなんか…」
「してるじゃない。それも、何回も…。もっと、私の知らないところで――」
「変ね…。あたしは、お茶(ちゃ)にお誘(さそ)いしただけよ。それが、いけないことなの?」
「だから…。あなたが、変に気を持(も)たすことするから、別れ話になるんじゃない」
「それはおかしいわ。あたしは、その方に恋愛感情(れんあいかんじょう)なんか…」
「でも、男の方にはあるの。確(たし)かに、あなたには悪気(わるぎ)はないでしょうけど、あなたを見た男どもは、あなたと付き合いたくてうずうずしちゃうわけ。声をかけられただけで舞(ま)い上がっちゃって、理性(りせい)がぶっ飛んで、あなたのことしか見えなくなっちゃうの」
「そんなこと、あたしはないと思うけど…。だって、あなたの彼とも、何回もお目(め)にかかってるのよ。でも、そんなことになってないでしょ?」
「えっ、ちょっと待って…。私、そんなこと聞いてないわよ。何で、そんなことに…」
「あなたの彼、会うたびにあなたのお話ばかりするのよ。うらやましいわ」
<つぶやき>こんな希有(けう)な男性もいるんですね。しかし、彼女の女子力(じょしりょく)は半端(はんぱ)ないです。
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0826「ダメ夫」

2020-03-06 18:16:08 | ブログ短編

「へぇ、あのイケメンの旦那(だんな)が…。何か、人は見かけによらないわね」
 友だちは、何だか嬉(うれ)しそうだ。こっちは真剣(しんけん)に相談(そうだん)してるのに。私は、
「ほら、私たち新婚(しんこん)だし…。そういうの、私もちょっと楽しんでたけど…。さすがに、これだけ続くと、もう、うっとうしいっていうか――」
「なに贅沢(ぜいたく)なこと言ってるのよ」別の友だちがチクリと言った。「格好(かっこ)良くて仕事(しごと)もできる旦那なんでしょ。甘(あま)えさせてあげなさいよ。うらやまし過(す)ぎるわ」
「でも、度(ど)が過ぎるっていうか…、ほんと小さな子供なのよ。家のことは何もしてくれないし。これで、もし赤ちゃんとかできたら…。それを考えると…」
「だったら、ガツンと言ってやんなよ。仕事ができる男なんでしょ。もう知能犯(ちのうはん)としか思えないわ。わざと、何もできない男を演(えん)じて楽しんでるだけなのよ。そんなダメ夫(お)を変えるには、あんたがちゃんと躾(しつ)けないとね」
 確かにそうなのかもしれない。そうなのかもしれないけど…。また別の友だちが言った。
「それって、彼の愛情表現(あいじょうひょうげん)なんじゃないの。あなたに甘えることで、二人の愛を確(たし)かめてるのかもしれないわ。下手(へた)にやめさせると、離婚(りこん)ってことになるかもね」
「もう…、やめてよ。変なこと言わないで。私たち、まだ新婚なのよ」
 私は、もうどうしたらいいのか分からなくなった。しばらくは我慢(がまん)するしか――。
<つぶやき>いったいどんな旦那なのでしょうか? ちょっと見てみたい気もしますが…。
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