みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1389「初恋のおもいで」

2023-05-29 17:29:58 | ブログ短編

 僕(ぼく)の初恋(はつこい)の相手(あいて)は、名前(なまえ)も知らない女の子だった。最初(さいしょ)の出会(であ)いは、僕が図書館(としょかん)で勉強(べんきょう)していたとき…。その彼女が僕の前に座(すわ)ったんだ。他(ほか)にも空(あ)いてる席(せき)はあるのに。その時は、別に彼女のこと意識(いしき)とかしてなくて、何の会話(かいわ)もしなかった。
 その翌日(よくじつ)も、僕は図書館にいた。すると、同じ彼女がまたやって来て、僕の前に座った。昨日(きのう)、彼女は本を読(よ)んでいた。でも、今日は彼女はうつむいているだけ。どうしたんだろう? 僕は、ちょっと気になった。こうなると勉強どころではなくなって、彼女の方をちらちら見てしまう。彼女は…泣(な)いているのか…、涙(なみだ)が見えた。
 こ、これは…どうすればいいんだ。僕はポケットからしわくちゃのハンカチを出してはみたが、さすがにこれは渡(わた)せないだろう…と、ためらった。その時だ。いきなり彼女が僕のハンカチを奪(うば)い取った。そして、それで目を押(お)さえた。僕は、あまりのことに声も出なかった。彼女は、落(お)ち着くと消(き)え入りそうな声で僕に言った。
「明日(あした)も、ここにいますか? これ、洗(あら)って返(かえ)したいの…」
 それが、僕たちの始(はじ)まりだった。でも、半月後、彼女は図書館に来なくなった。僕は、こんなにあっけなく終(お)わってしまうなんて思ってもいなかった。僕は、彼女の名前も、どこに住(す)んでいるのかさえ訊(き)けなかった。毎日(まいにち)のように彼女と会っていたのに…。
 僕は彼女のことを思い出すたび、今も後悔(こうかい)で胸(むね)が苦(くる)しくなってしまう。
<つぶやき>彼女はずっと前から彼のこと見てたのかも…。どうして急にいなくなったの?
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1388「不細工男」

2023-05-25 17:27:54 | ブログ短編

 仲(なか)の良い女友達(ともだち)と女子会(じょしかい)を楽(たの)しんでいると、男性がその中に入ってきた。すると、友だちの一人が立ち上がって、「あたし、この人と婚約(こんやく)しました!」
 みんなは、突然(とつぜん)の発表(はっぴょう)に目を丸(まる)くした。どうしてこんな人と? そこにいた誰(だれ)もがそう思った。だって、この娘(こ)、今までイケメンしか目に入らないって感じで…。そんな娘(こ)が、こんな不細工(ぶさいく)な男とどうして婚約なんてしちゃうのよ?
 それから数日後。わたしはとんでもないものを目撃(もくげき)した。女子会に参加(さんか)していた別(べつ)の友だちが、例(れい)の不細工な男と一緒(いっしょ)に歩いていた。しかも、腕(うで)を組(く)んで!
 わたしはその友だちに言った。「あなた、何であの人と…。友だちの婚約者(こんやくしゃ)じゃない」
 すると、その友だちは、「だって、好(す)きになっちゃたんだもん。まだいいでしょ。結婚(けっこん)したわけじゃないんだし…。それに、彼ったら、あたしに一目惚(ひとめぼ)れしたんだって…」
 わたしは何が何だか分からなくなった。もう、みんなおかしくなっちゃってるよ。わたしが悶々(もんもん)としていると、知らない番号(ばんごう)から電話(でんわ)がかかって来た。出てみると、それは例の不細工な男からだ。どうして、わたしの番号を知ってるのよ? 男は言った。
「実(じつ)は、彼女から教(おし)えてもらって…。君(きみ)に、披露宴(ひろうえん)のことで頼(たの)みたいことがあって。明日、会ってくれないかな? 突然で申(もう)しわけないんだけど…」
 わたしは断(ことわ)るつもりだった。だって、他(ほか)の娘(こ)とも付き合ってるのに…。でも、わたしの口から出た言葉(ことば)は、「ええ、いいですよ。会えるの楽しみにしてます」
 電話を切ったあと、何であんなことを言ってしまったのか、自分が分からなくなった。
<つぶやき>これは操(あやつ)られちゃってるのかも…。この不細工男、やばい人かもしれません。
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1387「これはきっかけ」

2023-05-21 17:21:41 | ブログ短編

 親友(しんゆう)から呼(よ)び出された彼女。その親友の家に行ってみると、どうやら深刻(しんこく)な相談(そうだん)らしい。話しを聞いてみると、夫(おっと)が浮気(うわき)をしているかも…と。いろいろと疑(うたが)わしいことばかりあるという。それで、彼女に夫の監視(かんし)を頼(たの)みたいと…。
 親友は、「あたしは、こんな身体(からだ)でしょ。もう、思うように動けなのよ」
 親友はぽっこりしたお腹(なか)をさすりながら言った。どうやら妊娠(にんしん)しているようだ。
 彼女は、「そ、そんなのムリだよ。わたし一人で、そんなこと…」
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。頼(たよ)りになる助(すけ)っ人(と)を付けるから…。木下(きのした)くんには、もう頼んであるんだ」
 彼女は驚(おどろ)いて、「き、木下…? ま、まさか、あの…、木下…藤吉郎(とうきちろう)……さん?」
「そうよ。あいつなら、こういうの得意(とくい)だと思って。快諾(かいだく)してくれたわ」
 彼女は明らかに動揺(どうよう)していた。「何で…。あなただって知ってるよね。わたしが…」
 木下とは、彼女がずっと、思いっ切り片思(かたおも)いをしている相手(あいて)だ。親友は楽(たの)しそうに、
「あなたの好(す)きな人でしょ。これをきっかけに、付き合っちゃえばいいじゃない」
「や、やめてよ。そ、そ、そ、そんなのムリ。だって、まともに話しもできないのに…」
「そんなの、何度(なんど)も顔(かお)を合わせてたら、どうってことなくなっちゃうわよ」
「そんな…。無理(むり)、ムリ、むり、絶対(ぜったい)ムリだよ。わたしには、そんなこと…」
<つぶやき>彼女はきっと引き受(う)けますね。これはチャンスです。親友のためにも頑張(がんば)れ。
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1386「歴史のIf/プロローグ」

2023-05-17 17:40:15 | ブログ短編

 藤原真空(ふじわらまそら)は女子高生。彼女は勉強(べんきょう)は苦手(にがて)だけど、それなりに学生生活(がくせいせいかつ)を楽(たの)しんでいた。そんな彼女の前に、見知(みし)らぬ女の子が現れた。その子は、どう見ても真空より年下で…。それなのに、彼女に対して上から目線(めせん)で話しかけてくる。
 女の子は唐突(とうとつ)に歴史(れきし)についていろいろと質問(しつもん)してきた。真空は歴史が一番の苦手科目(にがてかもく)だったので、なにひとつ答(こた)えることができなかった。女の子は呆(あき)れたように言った。
「もう、どういうことよ。あなたは、あの藤原一族(いちぞく)の末裔(まつえい)よ。そんなんじゃダメだよ」
 女の子は真空の手を取ると、彼女の手首(てくび)にブレスレットを付けた。それは、綺麗(きれい)な青いガラス玉のような石が連(つら)なっているものだ。彼女はそれを見て思わず、
「わぁ、綺麗ねぇ。これって、まさか宝石(ほうせき)とか…そういう…。あたしにくれるの?」
「まさか。貸(か)してあげるだけよ。これでちゃんと勉強してきて」
「えっ? どういうことよ。あたし勉強はちょっと…。特(とく)に歴史なんて興味(きょうみ)ないし…」
「もう、そんなんだから失敗(しっぱい)しちゃうんでしょ。歴史から学(まな)ぶことはいっぱいあるんだから。今から、歴史のもしもを体験(たいけん)してきて。これで少しは歴史に興味が持てるはずよ」
「そ、そんな…。これから、あたし、友だちと遊(あそ)びに行くことに…わぁ!!」
 真空は突然(とつぜん)、身体(からだ)が浮(う)き上がったような感覚(かんかく)に襲(おそ)われた。次の瞬間(しゅんかん)、彼女の身体はどこかへ消(き)えてしまった。女の子は、消えた彼女に手を振(ふ)っていた。
<つぶやき>真空はどこへ行ってしまったのかな。それにしても、この女の子は何者なの?
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1385「しずく192~大トカゲ」

2023-05-13 17:35:39 | ブログ連載~しずく

 川相姉妹(かわいしまい)は誰(だれ)にも気づかれないようにトラックから出た。そして、月島(つきしま)しずくが通ったのと同じ扉(とびら)を開(あ)けて中へ入った。しかしそこは、あの大男が現れたときと同じ荒涼(こうりょう)とした枯(か)れ野原(のはら)だった。二人は戻(もど)ろうとしたが、扉はすでに消(き)えていた。
 琴音(ことね)が警戒(けいかい)して言った。「お姉(ねえ)ちゃん、気をつけて。またあいつが現れるかも…」
 初音(はつね)は、琴音と背中合(せなかあ)わせになって、いつでも能力(ちから)が使えるように身構(みがま)えた。どこからか女の声が聞こえた。二人がそちらに目をやると、岩(いわ)の上に身体(からだ)を黒いマントで覆(おお)っているメイサがいた。目だけが異様(いよう)にギラギラ輝(かがや)いている。初音が思わず声を上げた。この目には見覚(みおぼ)えがあった。あの洞窟(どうくつ)にいた女だ。しずくが最強(さいきょう)の敵(てき)になると言ったあの…。
 初音は、「あいつは強敵(きょうてき)よ。気をつけないと、こっちがやられるわ」
 メイサは笑(わら)いながら言った。「そうね。あなたたち、あたしには勝(か)てないわ。でも、心配(しんぱい)しないで。あなたたちの相手(あいて)をするのは、あたしじゃなくてこの子(こ)よ」
 メイサが指差(ゆびさ)すと、そこに巨大(きょだい)なトカゲが現れた。二人は思わず後(あと)ずさる。メイサは、
「あたしのことは気にしないで。ここでゆっくり見物(けんぶつ)させてもらうから」
 琴音は、「冗談(じょうだん)じゃないわよ。こんなのとどう戦(たたか)えばいいのよ」
 初音はそれに答(こた)えた。「やるしかないわ。力を合(あ)わせれば、何とかなるわよ」
 大トカゲはすでに狙(ねら)いをつけていた。ゆっくりと二人に近づいて行く。
<つぶやき>幻覚(げんかく)の世界(せかい)では何でもありなんでしょうか? 二人はこいつを倒(たお)せるのか…。
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