みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0834「嗅ぎ分ける」

2020-03-15 18:15:26 | ブログ短編

 縛(しば)られた娘(むすめ)の前に、マントをひるがえし正義(せいぎ)の味方(みかた)が現れた。周(まわ)りにいた悪人(あくにん)どもをばったばったと、あっという間になぎ倒(たお)してしまった。正義の味方は娘に言った。
「もう大丈夫(だいじょうぶ)です。あなたを助(たす)けに来ました。怪我(けが)とか、してませんか?」
 娘は不機嫌(ふきげん)そうに答えた。「あのさ。あなた、本当(ほんとう)に正義の味方なの? だったら、何でもっと早く来てくれないのよ。あたしが、こんなことになる前に」
「そ、それは、ちょっと難(むずか)しいですね。事件(じけん)が起(お)きてからでないと…」
「なに言ってるのよ。あなたの能力(のうりょく)で、悪事(あくじ)を嗅(か)ぎ分けなさいよ。事件を未然(みぜん)に防(ふせ)ぐのが、本当(ほんとう)の正義の味方じゃないの?」
「うん…、それは…、確(たし)かにそうなんだけどね…。僕(ぼく)は…、犬(いぬ)じゃないんで、事件を嗅ぎ分けることは…、ちょっと無理(むり)かなぁ…」
「あ~ぁ、使えねぇ。ほんと、使えないわね。そんなんで、正義の味方だって、よく胸張(むねは)って言えるわね」
「いや、別に…、僕は胸張ってるつもりはないんだけど…」
 娘は足(あし)をばたつかせて、「早く、この縄(なわ)をほどきなさいよ。もう、痛(いた)くて死(し)にそうよ」
「ああ、そうでした。つい長話(ながばなし)をしてしまって…」
「ほんと、使えないわね。ぐずぐずしないでよ。――痛いってば、もっと優(やさ)しくほどきなさいよ。ほんとに、あなたって無器用(ぶきよう)すぎるわ。もう、最低(さいてい)よ」
<つぶやき>せっかく助けてもらったんですから、そんなに噛(か)みついちゃいけませんよ。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする