みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1322「最悪の日」

2022-10-29 17:32:34 | ブログ短編

 その日は、彼女にとって最悪(さいあく)の日になった。家を一歩踏(ふ)み出た途端(とたん)、彼女はとんでもない世界(せかい)へ迷(まよ)い込んでしまったようだ。これは、そんな彼女のサバイバルの物語(ものがたり)である。
 ――今日は大事(だいじ)な会議(かいぎ)があるので、彼女はいつもより少し早めに家を出た。駅(えき)に向かって歩いていると、突然(とつぜん)、近くのビルが爆発(ばくはつ)した。爆音(ばくおん)とともに爆風(ばくふう)が彼女を襲(おそ)い、彼女は吹き飛(と)ばされてしまった。彼女が目を開けると、辺(あた)りは煙(けむり)が立ちこめている。彼女は何とか起き上がると、辺りを見回(みまわ)した。そこで彼女は、とんでもない状況(じょうきょう)を目(ま)の当たりにする。
 ビルの上部(じょうぶ)が吹き飛んでいて、その向こうに…巨大(きょだい)な怪獣(かいじゅう)が――。彼女はあまりのことに思わず立ち上がった。どうやら、彼女の怪我(けが)はたいしたことないようだ。彼女は駆(か)け出した。どこかに避難(ひなん)でもするのかと思ったら、どうやら会社へ向かおうとしているようだ。
 何とか駅にたどり着いた彼女。しかし、電車(でんしゃ)は止(と)まっていた。普通(ふつう)なら…いや、普通でなくても、ここで諦(あきら)めるはずだ。でも彼女は、会社へ向かうことを止(や)めなかった。それほど大切(たいせつ)な会議なのか? こんな時でも、会議はあると思い込んでいるようだ。
 幸(さいわ)いなことに、彼女の会社は怪獣が暴(あば)れている場所(ばしょ)からは離(はな)れている。彼女は会社へ向かって歩き出した。会議は午後(ごご)からだから、何とかそれまでにはたどり着(つ)けるだろう。彼女は幹線道路(かんせんどうろ)に出た。そこは避難する人たちで埋(う)め尽(つ)くされている。戦車(せんしゃ)が音を立てて、列をなして通り過ぎて行く。爆音が辺りに響(ひび)き渡(わた)っていた。
<つぶやき>彼女は会社にたどり着けるの? どんな困難(こんなん)が彼女を待ち受(う)けているのか…。
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1321「前倒し」

2022-10-26 17:31:52 | ブログ短編

 彼女は上司(じょうし)から呼(よ)び出された。行ってみると、上司からとんでもないことを――。
「納期(のうき)を早めるんですか? そ、そんなのムリですよ。今だって、ぎりぎりなのに…。どうして、そんなことに…」
 上司は彼女を見るでもなく、「だってね。これはクライアントからの指示(しじ)なのよ。もう少し、早められないかって…。ほら、これが上手(うま)くいったら、次(つぎ)からもっと良い条件(じょうけん)で仕事(しごと)まわしてもらえるかもしれないのよ。ここは、頑張(がんば)らないとね」
「そんな……。とてもできませんよ。みんな、無理(むり)して働(はたら)いてるんです。これ以上(いじょう)――」
 上司は彼女の話など聞く気がないのか、「そうそう、残業(ざんぎょう)はダメだからね。ほら、人事(じんじ)の方がうるさいのよ。そこんとこ分かるでしょ。お願(ねが)いね。僕(ぼく)の評判(ひょうばん)を落(お)とさないように」
「そ、それは、サービス残業(ざんぎょう)をしろってことですか?」
「えっ? 僕は、そんなこと言ってないでしょ。ただ、納期に遅(おく)れないようにって言ってるだけじゃない。もう、僕の言おうとしてること、分かるでしょ。大人(おとな)なんだから」
 彼女は、上司を睨(にら)みつけるように言った。「お願いです。納期を戻(もど)してもらうように、クライアントと交渉(こうしょう)してもらえませんか? 今の納期に間に合うように全力(ぜんりょく)で――」
「あのさぁ、そんなのムリよ。だって、こっちから納期を早めましょうかって提案(ていあん)したのに、そんなこと言えないでしょ。ここは、君(きみ)の頑張りに期待(きたい)してるから。よろしくね」
<つぶやき>ここはブラック企業(きぎょう)なのかな? こんな上司は平社員(ひらしゃいん)に戻ってもらいましょ。
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1320「しずく179~役割」

2022-10-23 17:35:35 | ブログ連載~しずく

 少し時間を戻(もど)して、みんなが襲(おそ)われた日の朝のこと――。
 しずくが目を覚(さ)まして起(お)き上がると、涙(なみだ)がひとしずく頬(ほお)をつたってこぼれ落(お)ちた。しずくは夢(ゆめ)をみたのだ。母親の夢…。夢の中で、母親は誰(だれ)かに話しかけていた。何かを選(えら)ばなければいけないと…。何のことなのか、しずくには分からなかった。
 突然(とつぜん)、別のイメージが頭に浮(う)かんだ。どこかの山を上空(じょうくう)から俯瞰(ふかん)していた。しずくは、この景色(けしき)をどこかで見たことがある。誰かの声が聞こえた。しずくを呼(よ)んでいるようだ。しずくがそのイメージに集中(しゅうちゅう)すると、あまりの姿(すがた)が浮かび上がった。その顔は、とても苦(くる)しそうだ。助(たす)けを求(もと)めていると、しずくは感じだ。
 しずくは手早(てばや)く着替(きが)えをすませると、つくねのところへ向かった。つくねは朝食を食べていた。しずくは普段(ふだん)と変わりなく振(ふ)る舞(ま)った。つくねはそんなしずくを見て、
「昨夜(ゆうべ)、遅(おそ)かったんだから、もう少し寝(ね)ててもいいのよ。今日は、あたしが研究所(けんきゅうしょ)を見張(みは)りに行くから。でも、いつまでこんなことしてるつもり? もう、限界(げんかい)なんだけど…」
 しずくは、つくねに向き合うと、「今日は、何か起こるかもしれない。気をつけてて…。先生と協力(きょうりょく)して、みんなを守(まも)ってね。お願(ねが)いよ」
 つくねは、真剣(しんけん)な顔つきのしずくを見て思わず、「うん…、分かった」
 これが、しずくの最後(さいご)の姿になると、誰が予想(よそう)できただろうか――。
<つぶやき>これから何が起ころうとしているのか…。運命(うんめい)が動き始めようとしています。
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1319「憑かれる」

2022-10-20 17:31:19 | ブログ短編

 彼は、心霊(しんれい)スポットと言われているところへやって来た。もともと怖(こわ)がりの彼が、なぜこんなところへやって来たのか…。それには、理由(わけ)があった。
 それは、数日前のことだった。取引先(とりひきさき)を訪問(ほうもん)した帰り道、たまたま墓地(ぼち)の横(よこ)を通りかかった。その時、何だか身体(からだ)のだるさを感じた。疲(つか)れがたまっているのかと彼は思った。夜になると、どうにも身体が重(おも)くなって…。その日は、早く寝(ね)ることにした。
 夜中頃(よなかごろ)だろうか、ふと目を覚(さ)ますと、足元(あしもと)の方に何かの気配(けはい)を感じた。頭を上げて目をこらすと、だんだんそれがはっきりしてきた。そこにいたのは、十代ぐらいの若(わか)い娘(むすめ)だ。彼は起き上がろうとしたが、どうしたことか身体が動かない。
 その娘はどんどん近づいてきて、彼の上に乗(の)ってきた。そして、目の前に娘の顔が…。彼は思わず目を閉(と)じた。しばらくして、目を開けると…。まだそこに顔があった。彼は思わず声を上げた。娘は彼の口を押(お)さえると言った。「大きな声、出さないでよね」
 娘の顔には怖(こわ)さはなく、どちらかというと可愛(かわい)く見えた。娘は言った。
「あたし、人を捜(さが)してるの。幽子(ゆうこ)って言うんだけど、知らない?」
 彼は、首(くび)を振(ふ)った。すると、娘は寂(さび)しそうな顔をして、
「あたしのママなんだけど、戻(もど)って来なくて…。また、どっかに引っかかってると思うんだけど、なかなか見つからなくて。ねぇ、一緒(いっしょ)に捜してくれない? ねぇ、いいでしょ」
<つぶやき>ママもこの世のものじゃないのね。でも、幽子ってどこかで出てきたんじゃ。
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1318「転機」

2022-10-17 17:33:59 | ブログ短編

 彼女は愛(あい)していた男性に捨(す)てられた。その傷心(しょうしん)を癒(いや)やすために、彼女は旅(たび)に出た。あてのない旅の途中(とちゅう)で、彼女はとあるひなびた村(むら)にやって来た。そこで彼女は、村の婦人(ふじん)から声をかけられた。話をしているうちに、彼女はその婦人に家に泊(と)まらないかと誘(さそ)われた。
 村を通るバスはもうないようだ。彼女はその婦人の好意(こうい)に甘(あま)えることにした。婦人やその家族(かぞく)は、彼女を歓待(かんたい)した。だんだん打ち解(と)け合って、彼女は自分の身(み)の上をぽつりと話した。婦人は彼女に言った。「もしよかったら、いつまでもいてくれていいんだよ」と…。彼女は少しほっとしたようで、「それも、いいかも…」と、返事(へんじ)を返(かえ)した。
 翌朝(よくあさ)。彼女は久(ひさ)しぶりにぐっすり眠(ねむ)れた。彼女が起きてくると、お客(きゃく)がいた。婦人は彼女にその人を紹介(しょうかい)した。村の役場(やくば)の人だという。彼女に空(あ)き家を紹介したいと…。彼女は驚(おどろ)いた。役場の人は、村に移住(いじゅう)する人を募集(ぼしゅう)しているという。
 彼女は半(なか)ば強引(ごういん)に、役場の人と一緒(いっしょ)にその空き家を見に行くことになった。その家に着いてみると、リフォームの工事(こうじ)が始まっていた。すぐに住(す)むことができるように急(いそ)がせていると、役場の人は説明(せつめい)した。彼女は迷(まよ)っていた。急(きゅう)にそんなこと決(き)められない。
 役場の人は、最後(さいご)の一押(ひとお)しのように彼女に言った。「費用(ひよう)のことは心配(しんぱい)いりません。リフォーム工事や、引っ越しにかかるお金はすべて村で負担(ふたん)しますから。それに、仕事(しごと)についても、こちらで紹介することは可能(かのう)です。ぜひ、移住の決断(けつだん)をしてください」
<つぶやき>これは、とんでもないことに…。彼女の人生(じんせい)を変える転機(てんき)になるのかもね。
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